異世界転生を信じてジサツしたら地獄逝きになったので天国まで脱走してやった~三匹のクズ~
寿甘
地獄脱出編
颯太、地獄へ逝く
「マジかよ……」
俺は合格発表の掲示板を見て絶句した。
受験番号は213番、そこに並ぶ番号は、211、212、214、216……そう、不合格だ。
現実が受け入れられなくて、何度も自分の番号と掲示板を見る。
だが、何度見てもそこに俺の番号はなかった。
「終わった……浪人確定だ」
周りにもはっきりと聞こえるぐらい大きなため息をつき、がっくりと肩を落として家路につく。
浪人かぁ、親になんて言おう?
て言うか特にやりたいこともないし、行きたい大学もないけど高卒で就職とかしたくないし勉強もしたくない。とりあえずで受けた三流大学にすら落ちるとかもうどうしようもない。
「あ~、何もせずに金が稼げねーかなぁ? あと黙ってても可愛い女の子にちやほやされたりとか」
とにかく努力とかしたくないし、なんか急に何でも出来るようになって楽にいい思いできる方法はないものか?
ふと顔を上げると、小説の広告看板が目に入った。
「そうだ、この手があった!」
異世界に転生してチート能力を手に入れれば、楽して女の子にモテモテのイージーモードじゃないか!
なんでこんな簡単なことに今まで気づかなかったんだ俺。善は急げだ、さっそく異世界に行くぞ!
「異世界転生と言えばトラックにひかれるのが定番だよな。ええと」
キョロキョロと周りを見回す。丁度いい幹線道路があった。よしよし、あとはトラックを待つだけだな。
いや、待てよ? 単にひかれるだけではダメだ。確実に即死する状況じゃないと転生も出来ずにただ大怪我しただけで終わってしまう。慎重に、最高の条件を整えなくては。
しばらく車の流れを観察していると、トラックは道の真ん中側を走っているので歩道から駆け込むのは困難ということが分かった。素晴らしい分析力だ、やるな俺。
歩道橋からタイミングを見計らって落ちるか?
しかしタイミングを誤ると死因がトラックではなく転落死になってしまう。異世界に行くにはトラックにひかれないとダメだ。異世界転生の半数以上がトラックという統計もあったし。
別の道にするにしても、十分なスピードで走るトラックに出会える細い道なんてすぐには見つからない。こうなったら中央分離帯に進入してトラックを待とう。
横断歩道があれば良かったのだが、見当たらないので車の通らないタイミングを見計らって中央分離帯へ渡った。よしよし、順調だぞ。
そして身を屈めて待つこと数分。丁度いい感じのトラックが遠くから近づいてきた。よし!
「いっけぇー!」
俺はタイミングを見計らってトラックの前に飛び出した。
◇◆◇
「起きなさい、
俺の名を呼ぶ声が聞こえる。可愛らしい女の子の声……ではなく、野太いおっさんの声だ。
うーん、起きたくない。こういう時は美少女が優しく起こしてくれるものじゃないのか?
「早く起きろ、このクズ!」
先程の声とは別の方から聞こえて来た荒々しい声と共に、頭をぶん殴られたような衝撃を受けた。
「いってぇ~~~!」
目を開け、そちらを見ると棒状の武器を持った筋肉質の大男。首から上が牛で、どう見ても人間じゃない。どうやら実際にぶん殴られていたようだけど、よく死ななかったな。
「起きたか、それでは始めよう。裁きを行うのは十王が一人、閻魔王である」
「えんまおう? まさか、閻魔様!?」
「その通りだ、颯太。汝は死してこの冥府に運ばれた。全ての亡者はここで十王の裁きを受ける決まりになっている。生前の罪を分析し、行く先を決めるのだ」
え、ちょっとまって。なんで俺こんなところにいるの? 異世界に転生してチートでウハウハじゃなかったのかよ? ちゃんとトラックにひかれたのに。
「心の声も聞こえるぞ。異世界に転生するのが目的ならば、間違いではない。裁きの結果
野太いおっさんの声だが、優しい口調で説明してくれる。閻魔様は嘘つきの舌を抜く怖い人じゃなかったのか。
「汝は嘘つきではないだろう。この上もなく正直だ、自分の欲望にな」
なるほど。
この後六道の説明もしてくれたけど長いので簡単にまとめると、上から
「では汝の罪を裁こう。……これは、
「殺生って、人殺し!? 俺はそんなことしてないぞ!」
こんなピュアボーイを捕まえて殺人犯扱いとはなんて失礼な。
「汝は自らの意思で己の命を絶ったのだろう? 己の命を奪うことも殺生に当たる。もちろん殺生の罪の中では最も軽いので、償うのにそう時間はかからぬ。
等活地獄とは、八大地獄の中で一番上にある地獄でその中でも一処は一番上だそうだ。
軽いって言うけど、地獄逝きかよ……何のためにトラックにひかれたんだ、くそっ。
とはいえ、罪を償ったらちゃんと転生できるって閻魔様が言ってたからまだ希望はあるな。すぐに終わるみたいだし。
――と、軽い考えで向かった地獄はそう甘い世界では無かったのだ。
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