転生しよう! その2
「颯太さんはどうします?」
キャラメイクの言葉に悩む俺。う~ん、ここは戦士系かな? バランス的に。
「バランスとか考えると面白くないですよ?」
ほっとけ! つーかこいつもやっぱり心読めるんじゃないか?
「心を読まなくても颯太さんの考えそうなことは分かります」
どっかの牛と同じようなこと言いやがって……
「颯太なら
「ダメです、それはイケメンのためのジョブです」
「やかましいわ! だったらイケメンに転生させろよ」
好きなのを選べとか言いながら注文の多い奴だな。
「この
確かにトリックスターってカッコいいし大物感凄いけど、俺はそこまでいかないでただの道化で終わる気しかしない。
「あ、いいねそれ。道化師なら色々と偉い人に会いやすいし」
それ完全に詐欺する気満々だよね!?
「これは多数決で決定ですね~。民主主義という奴です」
「ただの数の暴力だからね!?」
「まあまあ、本当に悪くないよ。最初は大変だけど、最終的に最高の能力補正がつくし魔法も体術も適性が高い。完全な大器晩成型だね」
言われてクラスの補正表を見ると、確かに他のジョブに比べて上位クラスの成長割合がかなり高い。
「でもなー、地獄と違って死んだら終わりなんだろ? 最初が辛いっていきなり死んでおわりじゃねーの?」
「そうならないように堅実にいこう」
堅実なピエロとか、どうなのそれ?
「そういえば、転生と言えばチートスキルだろ。なんかすごいスキルとか貰えないの?」
「え? 颯太さんはチートスキルなんかいらないって願いましたよね?」
え?
記憶を辿ってみる。お釈迦様との問答で……
◇◆◇
「俺は、また旅がしたい。チート能力なんか無くてもいい、そんな物より俺の事を認めてくれて一緒に笑ったり喧嘩したりしながら助け合える仲間が欲しい……出来れば、源三郎と雄峰と一緒に色んな所を見て回りたい」
◇◆◇
言ってた。
命掛かってるのになんて後先考えないアホな願いをしてしまったんだ、アホアホ、俺のアホ!
「……そうだった。まあそれは良いとして、ステ振りとかはどうすんの?」
こうなったら少しでも生存率の高い能力にしておきたいが、なんかやたらと項目が細分化されていて、どう決めたらいいかよく分からない。
「適当でいいですよ~。どうしても決められないなら私が代わりに決めてあげます」
それ絶対面白さ重視で決めるよね?
「とりあえず、元の貴方がたの能力を再現した数値を当てはめますので、いい感じにカスタマイズしてください。転生ボーナスもありますよ!」
「おお、親切設計だなぁ」
俺はもうどうにでもなれって感じの心折設計だけどな。
「私はエルフのウィザードになるよ。ステータスは特に変えなくて良いかな。魔法関係の能力にボーナスを全部使おう」
もうなりたいものが決まっている雄峰はあっさりとキャラ作成を終えた。魔法に専念するなら確かに人間よりエルフがいいのかな?
「おっ、UFOは種族変えるのかぁ。シーフに向いた種族とかあるかぁ?」
「そりゃノームとか? いるのか知らないけど」
「ノームいますよ。シーフ向きかと言うとちょっと疑問ですが」
あれ、そうなんだ?
「まあ、人間でいいやぁ。能力は弓術に振って弓で戦おう」
弓シーフか。なんかどっかで聞いたことある響きだな。
「いやちょっと待て、魔法と弓って二人とも遠距離じゃないか。ピエロに前衛させるのか?」
「頑張れ」
「ふざけんな、源三郎は短剣術全振りな」
キャラシートを奪い取り、勝手に短剣術に数字を入れる。
「ああっ! なにすんだぁ!」
人を勝手にピエロにした挙句盾にしようとした奴に文句を言われる筋合いはない。
「しょうがねぇ、盾も振って筋力と耐久力も上げとこう。お、いい感じに使い切ったぁ」
良かったな。
「さて、ピエロさんのステータスはどうします~?」
なんで名前からピエロに変わってんだよ。
しかし悩む。ピエロに必要な能力って何だ?
「ピエロなら、素早さや反射神経は必要だろうね。あとカリスマ」
「カリスマってよく聞くけどどんな能力?」
なんか魅力的とかそんなイメージしかないけど、これが高いと何があるんだ?
「人間的な魅力ですね。性的な意味でなく人にモテる能力です」
性的な意味でモテる能力はありませんかね?
「あとニコニコ笑いながら計算高いイメージだから知恵は高い方がいいなぁ。でもカリスマも知恵も元から高めだなぁ」
「ピエロはまさに天職ということですね~」
もうピエロは良いから、ステ振りを考えさせてくれ。
「そういえば、運のステータスは無いんだ?」
運が良ければ何をするにも安心じゃないか。
「運というものは固定された数値で表せるものではありません。たまたまいい結果になったことを運が良かったと言っているだけです」
正論だが夢も希望もないな。
「乗馬術取ってみたらどうかな?」
「乗馬ぁ? それより鍛冶技術取ろうぜぇ」
お前らピエロを何だと思ってるんだ。でも乗馬か、ファンタジー世界の乗馬は日本でいうところの運転免許みたいなものと考えると悪くないのかもしれない。ピエロ関係ないけど。
――そして。
「三人の転生キャラが決まりました~! パチパチパチ!」
あれから二時間ぐらい決めるのにかかった。主にキャラメイク含む三人があーだこーだと茶々を入れてきたからだ。最後の方はもう何でもいいよとしか思ってなかった。
「まず、大山雄峰さんはエルフの男性。年齢は人間換算で二十八歳。ジョブはウィザード、クラスは白魔術師。突出した能力は知識・話術・魔力・白魔術ですね」
やりたいことが決まってる奴は無駄が無いな。話術は最初からマックスだった。詐欺師だからな。
「次に市山源三郎さんは人間の男性。四十一歳。ジョブはシーフでクラスはコソ泥。突出した能力は素早さ・器用さ・短剣術ですね」
コソ泥って改めて言われると激しくダメな感じだな。これでいいのか?
「そして最後に! 早川颯太さんは人間の男性。十八歳。ジョブはピエロ、クラスは大道芸人。突出した能力はカリスマですね」
結局色んなステ・スキルにポイントを振ったおかげでカリスマだけが高い役立たずが出来上がった。
「なんでも出来る職は最初は器用貧乏になるもんだよ。突出してなきゃ使えないってわけじゃないさ」
雄峰のフォローも、当分の間は役立たずであることを示している。本当に生き延びられるのか? これ。
「さて、三人とももう年齢が設定されていることから分かる通り、いきなりその年齢で転生します。世界的に辻褄を合わせるために公的な記録には出生からの情報が載っていますが、家族も知り合いも死別によりいないということにします。ご了承ください」
まあ、周りと話が合わないと困るしいいんじゃないかな?
「そして最大の注意点。皆さんはレベル1です。それまでの人生何やってたんだってツッコミが入りそうなぐらい弱い状態から始まります。具体的には三人で力を合わせてもスライムと死闘を繰り広げるぐらい。なので、無理は禁物ですよ」
「だったら普通にナイトにさせろよ!」
「イケメンのためのジョブなので」
こいつ……
「力を合わせて頑張って下さい。それが貴方の望みでしょう?」
キャラメイクの含み笑いに見送られ、意識が遠くなっていった。
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