カルボネア王国編

転生しよう! その1

「はい、皆さんが例の転生者さん達ですね! 首をなが~くして待ってました」


 突然のハイテンション。子供っぽい声で何者かに話しかけられた。見ると女の子っぽい。


 えーっと、俺はどうしたんだっけ?


 ああ、そうそう。お釈迦様に願いを叶えようって言われて光に包まれたんだ。


「私の名前はキャラメイク! 分かり易いですね~」(※キャラクターメイキング、略してキャラメイク)


 分かり易いけど何その名前? 十王の部下ならもっと漢字の難しい名前とかじゃないのか?


「あなたは早川颯太さんですね! 何も言わなくても顔を見ればわかります。『何その名前?』って思ってますね?」


「うん」


「俺も思ってるぜぇ」


「誰だって思うよ」


 源三郎と雄峰も続けて言う。良かった、一緒に来てた。


「簡単なことです。このような形の転生を行うのは、今回が初めての試み。そして今後も颯太さんのようなアホ……異世界に転生したいと願う者が増加する可能性も予想されることから十王が力を合わせてこの場を作り、私を作ったのです」


 さり気なくアホとか言われたのは気にしないことにする。


「事情は分かったけど、それで何故その名前なの?」


「良い名前が思いつかなかった!」


 おーい! ちょっとは考えようよ仏様!

 

 十人もいるんでしょ? 三人寄ればどころの騒ぎじゃないでしょ?


「いやいや、違うんですよ。この名前は十王がしっかり考えて相応しいと判断した結果なんですよ。思いつかなかったのは漢字の名前なんですよ」


 ああ、キャラメイクに相当する日本語で考えると、人物作成? 人格作成?


「中二っぽく新たなる人の在り方の創造主とか」


「長い! 分かりづらい! 無暗に偉そう!」


 雄峰の提案が全力で却下された。悪いが俺もそのセンスはどうかと思う。


「そもそも颯太クラスのアホを相手する上で分かり易さと親しみやすさを最大限考慮した上で十王が決めたんです。人間の浅知恵でより良い名前が出る訳がありません。いいですか? 颯太クラスのアホに向けた名前なんですよ!?」


 なぜ念を押した!?


「なるほどぉ」


 おいそこ! 納得すんな!


「では納得したところで話を進めましょう。早川颯太、市山源三郎、大山雄峰の三人はこれから転生先の世界における自分の種族、性別、名前、能力等を決めて貰います」


「じゃあイケメンで」


「見た目は決められませんので悪しからず」


 なん……だと……!?


「種族ってなんだぁ? 人間以外にもなれるのかぁ?」


「モンスターや虫にもなれるんですか?」


 衝撃を受ける俺を無視して質問を始める二人。見た目は大事だろ!?


「転生ですからね、望めば石畳を割って咲く花にだってなれますよ!」


 何そのピンポイントに感動を与えるためだけに存在してそうな生命。


「皆さんの冒険旅行をしたいというお望みから考えると、人間か人間に近い知的種族……エルフとかドワーフとか。あ、源三郎さんはゴブリンとかどうです!?」


「嫌です」


 きっぱりと断る源三郎。ゴブリンを勧めるってどういう神(?)だよ。ちょっと似合うと思っちゃったのは内緒だ。


「なんかカッコイイ種族ないの? ドラゴンの血を引く人間とか悪魔とのハーフとか」


「そういうイレギュラーな存在になるには徳が足りませんねぇ」


 なんだその作成ポイントみたいな扱いは。徳って善行を積むと貯まるやつだろ?


 良いことをして死んだらイケてる種族に転生できる……あっ、意外といいシステムかも。


「全員人間で良いだろ。人間だと損することとかある?」


「特にありませんね。でも面白みに欠けません?」


 面白みで人の人生を左右させるな!


「では性別は? 女の子になりたいおじさんとか最近多いって聞きますけど」


 確かによく聞く。ラノベでもTSものとか見たなー。


「いや、俺は男のままでいい。二人は女になりたいとかある? どちらでもないLGBTとか」


 二人そろって首を振る。正直、変えるって言われたらどうしようかと思った。


「う~ん、つまらない人達ですねぇ」


「ほっとけ!」


「……種族や性別を考える前に、能力等の決め方を知りたいのですが」


 雄峰が説明を催促する。ん? それって能力の決め方次第では種族とか性別とか変えるってこと?


「なるほど、ステ振りの仕組みを理解しておいた方が面白いキャラのイメージが湧きやすいですかね? 今後の参考になります!」


 ステ振りか。完全にRPGのキャラ作成だな。


「まず、筋力・持久力・耐久力・素早さ・反射神経・器用さ・知能・知識・精神力・魔力・カリスマ・話術・剣術・短剣術・棒術・弓術・盾術・黒魔術・白魔術・乗馬術……」


「細かい! 多い!」


 いきなりそんなに並べられて分かるか!


「まあ、口で説明しても覚えられないと思いますので、このキャラシートを参考にして下さい」


 キャラシート……この際ツッコミは置いとくけど最初から出せよ。


「このジョブとかクラスってのはなんだぁ?」


「ジョブは職業ですね。会社員とか自営業とかの生業としての仕事のことではなく、医師とか弁護士とかの資格的なものと考えていただければ。クラスはそのジョブから細分化された分類です。今の源三郎さんを例にとると、ジョブ盗賊シーフでクラスはコソ泥になります。クラスアップして怪盗になることも可能です」


「それだぁ!!」


 大怪盗の夢は諦めていないらしい。よかったなコソ泥。


「うん、こういう情報があるとイメージが固まってくるね。私は怪我や病気を治す魔法を使えるようになりたいんですが」


 妹さんの病気を自分で治せたらって思ってたんだろう。そういう、目指すものが決まってるのはいいな。


「なら司祭プリーストですかね。この世界の信仰について勉強する必要があります。もしくは魔術師ウィザード。あらゆる魔法の探究者ですね、最終的には魔法職の究極系、賢者ワイズマンになれます」


「ワイズマンって雄峰にぴったりじゃん。ウィザードにしなよ」


「そうだね、宗教は正直好きじゃないからね」


 十王の部下の前でそれを言うのか。


「それで、颯太さんはどうします?」

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