第24話 ツンデレヒロインVS光堕ち系以下略

碧唯あおいによって窓の外へと放り出された宝蔵寺ほうぞうじ


でもさすが名家のお嬢様。直ぐに空中で体制を整えて、華麗に着地する。


念のため安否を確認すると下で元気にギャーギャー喚いていた。

お前もお前でしぶといな。俺はそんなことされたらしばらく呆然とすると思う。


「やあやあ、随分と元気そうじゃないか…「廊下は邪魔だ」という君の意見を汲み取ってあげたというのに…およよよ~」


いつの間にか窓に座っている碧唯。

その嘘泣き…とても腹立つね!!!


宝蔵寺もようムカついとる。ヒロインとは思えない顔してる、般若かな?


「…くっ」

「でもそうだね。まあ先に自己紹介をしようか」


互いが互いにが敵意をぶつける中、碧唯がそんな宝蔵寺を見下し、嗤いながら告げた。


「はじめまして、宝蔵寺ほうぞうじの箱入り娘。ボクの名は水野碧唯みずのあおい。いや…水之神みずのかみ碧唯と言ったほうが君には通じるかもしれないね」

「水野……?水之神…っ!?…ふ、ふ~ん、そういうことね」


宝蔵寺は、震えた声でボソボソと碧唯の氏名うじなを繰り返す。


あ~宝蔵寺ほうぞうじの情緒、プライド、その他もろもろが壊れていくのがリアルタイムでよくわかる。


なろうお約束の亜種みたいなのが展開されてるんだけど。

この流れだと完全に碧唯あおいが分からせられる流なんだよなぁ。


周りの生徒からも強いと認められかつ、四大名家である水之神みずのかみ家。


碧唯あおい養子ようしであるとはいえ、序盤に登場する名家出身の嫌な奴という条件は満たされている。


序盤で主人公の力を見せつけ、それでいて読者のカタルシスを得られるというとても練り上げられた陳腐ちんぷな展開。


ナチュラルに悪役ムーブをこなす碧唯さん。マジぱねっす!


さき威勢いせいのよさは何処に行ったのかな。まさか怖気づいたのかい?」

「そんなことないでしょ!!!す、!少し驚いただけよ!」

「あはっ!!それは良かった、よっっと」


碧唯も腰掛けていた窓枠まどわくからすっと身を宙に投げれば、宝蔵寺ほうぞうじ同様華麗に着地する。


「さてと、廊下と違って誰の迷惑にもならないし早速始めようか…」


学園に刻まれている戦闘用の契約術式けいやくじゅつしきが赤く煌めく。


「【定義宣言】『我、水野碧唯は汝宝蔵寺藍ほうぞうじあいの宣言を受理する』」



§




原作ギャルゲーで中心的な舞台となるこの七帝都市。


七帝という名前を冠している通り、七つの学園を中心とした都市構造が広がっている。


アカデミー・オブ・ブレイズ第一学園だいいちがくえん

セレスティア第二女学園だいにじょがくえん

黎明第三学園れいめいだいさんがくえん

聖ナイトロード第四学園だいよんがくえん

桜蓮第五学園おうれんだいごがくえん

ミスティロック修道第六学園しゅうどうだいろくがくえん

アヴァンロール第七学園だいなながくえん


以上の七つの学園を総称しているこの都市。


すべての存在意義は同じ…この世から怨霊体アパリティーを消し去ること。


であるが、全員が怨霊体を消し去りたい、駆逐したいなんていう考えを持っているわけではない。

学術目的で来たものや、腕だめし的な目的できたものなどたくさんの人間が存在する。


となると「怨霊体アパリティーを消し去る」という目的は副次的なものになってしまっているのが現状だ。


怨霊体に対抗するべく立てた都市がそんな人間で溢れたら都市の存在意義が薄れてしまう。

戦力を育てるためにわざわざ多額のコストと労働を費やしたというのにそれではあまりにも見返りがない。


で、だ。それらを解消すべく導入されたシステムが七帝総力抗争戦しちていそうりょくこうそうせん


前世の甲子園に近いそれは夏の風物詩として、生徒の青春ドラマとして頻繁に取り上げられることで生徒の学園間の闘争心を高めることに成功したのだ。


加えて、それにてランキング化された学園に優先されて資産が割り振られるとなれば、学園も生徒の実力向上に大きく力を入れることにもなる。


七帝総力抗争戦で優秀な成績を収めた学生にも夢のような報酬が与えられるため生徒も自分の実力を伸ばそうと躍起になる。


人間の遺伝子にまで刻まれた闘争心を煽るシステムは大方成功したと言える。


だが腕に覚えのある道徳の無いガキが集まれば、揉め事を無限に起こすのは脳みそ空っぽのメロンパンでもわかていることだ。

そんなくだらない、青二才の仲介ちゅうかいを先生達がいちいちやるなど人手がいくらあっても足りないわけで。


そこで多くの学園でルールに則った生徒間の私闘しとうが採用されていることが多い。


それが校内模擬戦こうないもぎせん所謂いわゆる決闘けっとうだ。


そんな中で、中学2年という幼さおさなさで学園序列63位。

学年序列第一席次という天井で自身の天稟てんぴんを振り回しているのが眼の前の女、水野碧唯みずのあおい


噂には聞いていた…それは嫌と言うほどに。

水之神みずのかみ家に養子として引き取られた稀代きだい才女さいじょ


まさか…編入初日にやり合えるなんて何たる幸運不幸


いいわ今ここで白黒はっきりさせようじゃないの!!!

私の努力とあなたの才能。努力が才能を打ち勝つってことを証明してやるんだから。


だから初手から全力でヤル!!


「【炎融咒術えんゆうじゅじゅつ】――――【炎嵐神楽えんらんかぐら】」


力強く両手を広げれば、その両手から蒼白い燐火が立ち上がる。

天女の羽衣のように軽くフワフワと宙を舞いながら宝蔵寺の体へと巻きついていく。


「へぇ、それが噂に名高い宝蔵寺家ほうぞうじけ秘伝ひでんの技か」

「やはり知っているわよね…」


炎嵐神楽えんらんかぐらは500年前の宝蔵寺家ほうぞうじけ当主によって構築され、代々受け継がれてきた一家相伝の技。


一度発動してしまえば、術者の霊力マナがなくなるまで防御を半自動で行えるチート技。


その習得難易度の高さゆえにここ数十年はまともな継承者が居なかったが…それを宝蔵寺藍が復刻させたのだ。

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