第23話 ツンデレヒロインVS光堕ち系以下略

「あなたもよ。建物の中での戦闘は禁じられているはず。だというのに、さっきの霊力マナ出力しゅつりょく…校舎でも吹っ飛ばす気だったのかしら?」

「あはっ!面白いね。まるでボクが校舎を破壊する破壊魔のように聞こえる」

「そう言ってるのよ。私たちは普通の学園生である以上、ルールを守らなければならない。他の生徒にも配慮して行動しなさい」


碧唯あおいの幼稚な挑発を、冷静な表情を崩さずにスルーするヒロイン。

こう見るとやっぱり碧唯ってガキだな~て。


「……懐かしーなぁこの感じ。」

「……何?さっきからブツブツと…言いたいことがあれば、はっきり言いなさいよ」

「あははっ、すまない。この感覚が久しぶりでね…居たんだよ昔。ボクもここの新入生だった頃、猿みたいに喚きながら喧嘩を売ってくるバカが」


ニヤニヤと見下すように嗤う碧唯。可愛いね、全力腹パンしちゃいたい。


「へ、へぇ……もしかしてだけれど…あなた反省する気が無いのかしら?」

「正解。ボクは悪くない」


指をパチンと鳴らしながら自分の無罪を主張する、失礼な態度のオンパレードの碧唯にとうとうヒロインが我慢の限界だ。


顔を真っ赤にしながらプルプルと震えている。


「…っ………っ!?」


チュートリアルでフルボッコにされそうなセリフをさんざん吐く碧唯あおいさん。

原作ではあれ程おしとやかで、the大和撫子だったあなたは何処へ行ってしまわれたのかしら。


清楚の「せ」の字も見当たらないのですか…

クソガキの文字に至っては「キ」の字まではっきり見えるというのにね、あれれ~不思議だぞ~


「随分舐めた態度をとってくれるじゃないっ…!」

「あのぉ、お二人とも?もうちょっと穏便にですね…していただけたらですね。

大変うれしいというか。なんというか…聞こえてないですか…そうですか」


残念、ヒートアップして日が付いた二人には僕の声が届かないようだ。

俺はちゃんと止めたからな!ちゃんと言ったかんな!


「面白いじゃないっ…いいわ!その喧嘩買ってあげる!」

「あはっ!」

「あなたに校内試合、決闘を申し込むわ。まさかこんな集まった人の前で断るなんてこと…しないわよね?」


ヒロインが言った通り周りを見渡してみると、騒ぎを聞きつけてきたであろう生徒たちが複数人いる。


それを見越して、碧唯に挑発を仕掛けたらしい。


「おい!あの女子。雷刀姫らいとうひに喧嘩を売ってるぜ!!」

「うわぁ、ほんとだ。ってことは編入組か。災難な奴もいたもんだぜ」

「ついに今年も雷姫かみなりひめの殺戮劇が始まってしまうのね。なぁ~むぅ~」

「勝手に殺してやるなよ!まだあいつが弱いって決まった訳じゃないだろ!?もしかしたら雷刀姫に勝てるかも――」

「ない」

「寝ぼけてるの??」

「かぁーひっどいなお前ら!」

「あれれ~廊下がとぉれないよ~」

「見て、雷姫かみなりひめに何秒耐えれるかの賭けが出てるぜ!!」

「13!」

「いや。21秒だな!」

「う~ごはそごはんイケナイ~」


あれ程平穏だった小春日和こはるびより。非日常が訪れた廊下に春風が流れ込む。


視線を横に向ければ、開いた窓から朗らかであるが少し肌を刺す春の吐息。

その開いた窓から見える桜は満開。視界いっぱいに広がるピンク色。


今年も満開か…


「あら、随分と有名人なのね?」

「なんだい?もう怖気づいたのかな?随分と早いね」

「ふんっまさか。大勢の前で恥をかかなければいけない貴女を憐れんでいただけよ」


おい!碧唯もう煽んな!ソイツひろいんはプライド高いから、というか血気盛んだからヤル気になったら止められないんだから…。


もう遅いかもしれないけど。


「【定義宣言ていぎせんげん】!!!『我、宝蔵寺 藍ほぞうじあいは汝に決闘を申請する』!!」


「おい、宝蔵寺ってまさか…」

「とんだビックだな。名家も名家だぜ!!?」


ヒロイン、もとい宝蔵寺藍ほうぞうじ あいの名を聞くや否や、周囲がざわめきだす。


「それにしても噂が本当だったとは」

「噂?」

「ああ、今年から宝蔵寺家の娘が編入してくるって噂だよ」

「へぇ~。そんなに有名人なの?」

「おまっ、知らないのか!?四名家よんめいかの分家、宝蔵寺家だぞ!!」


はい、説明どうも。

そうだなまあ、もっと詳しく説明すると宝蔵寺家は四名家の一つに慕えている分家的なポジションだ。


四名家はそれぞれ、鏡系列、花系列、水系列、月系列があり、名字にそれぞれその名が刻まれてる。


その中でも、鏡系列の家だけは特殊だが…まあ、ほぼこのルールに則っていると考えていい。


で、それぞれの家の名前を文字って花鏡水月と、皮肉かな?


まあ、そういう訳で、なんとこのヒロイン所謂いわゆるおジョー様というやつなのだ。


「宝蔵寺…宝蔵寺……あぁ、鏡系列の。なるほど」


碧唯は、なるほどといった感じでうなずく。


「何?怖気づいたのかしら?」

「あはっ。まさか!少しだけびっくりしただけさ…とっ!!」


瞬間、碧唯の姿が掻き消えると共に、俺の横を高速で何かが通り過ぎた。


「あ?」

「はぇ?」


二人の間抜けな声がシンクロする。それは俺と、宝蔵寺藍のものと気づいたのは窓の外を振り向いた時だった。


驚いて振り向いた先には、驚いた様子の白いp…じゃなかった。

窓の外から落下していく宝蔵寺。


俺はそれを唖然として見ていることしか出来なかった。

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