第13話 絶鎌の呪咒
ピ~ポ~♪ ピ~ポ~♪
大きな交差点の真ん中で、目を閉じ、耳を澄ます。
聞こえるのは遠くで木霊する救急車のサイレン。鮮明に聞こえるサイレンは、周りが一段と静かであるという事実を突き付ける。不自然なほどの静寂で虫の声もカラスの鳴く声も聞こえない。
――――――ジリ――――――
目を開けて空を見上げてみれば、天高く
普段の満月よりも一回り大きく、黄色い。それがまた不気味さを増す。
現在時刻は0:03
日付が変わってからそんなに時間が経っていない。再び空に視線を向ければ、大きなビルで
真っ暗な夜空に浮かぶのはのっぺりとした満月だけ。
通行人が見ればきっと夜中と言えど道路の中央に突っ立っている人影に眉を顰めるだろう。なんて危ない真似をしているのだろうと…
しかし、この道路を通る車どころか、人っ子一人見当たらない。ここには、人も、動物さえも寄りつかない。
現に俺が6車線道路の十字路交差点の真ん中で左右に視線を動かすも、見えるのは四方を囲む歩道橋。
街頭に群がる昆虫さえも今は確認することが出来ない
特に不気味さを醸し出しているモノは見当たらないのにもかかわらず、その空間が、その場所に居たくないという生理的嫌悪感を刺激するのだ。
歩道橋の上にある街灯が無機質に上から少年を見つめている。
――――――ジリ――――――
先ほどから、断続的に空間にノイズが走る。視界に四角いモザイクが入ったり、救急車のサイレンが不自然にスローになったりと先ほどから交差点の空間に起きる不可解なこと。
「うわぁ…」
今回の異変に俺が駆り出されたわけだが、想像以上に深刻だ。これはため息が出ても仕方ないのではないだろうか。
「これは結構。いやかなり不味いだろ…」
その様子をみて俺がそう言葉を溢すとポケットの端末バイブレーションが鳴った。本部からの連絡であるようだ。
「はい~
『了解。では現場の状況を教えてください』
「現場周辺の民間人は見当たらない…けど
『ッ!!!それはホントですか!?』
現場の状況を在りのまま報告すると、それを聞いたオペレーターが驚きの声をあげる。
ハハ!めっちゃ驚くやん。
普段は無機質に淡々と仕事をこなしている人が感情を乗せた声を発したことに少しばかり笑ってしまう。
既に端末の向こう側が騒がしい。時々、マイクが拾う声を聴いてみると怒号が行きかっている。
「―へ連絡しろ!」や「―の準備はどうなっているんだ!」だの本部はてんわやんわであることが端末越しにでも容易に想像できた。
何故こんなにも荒れているのか。きっと事前に知らされていた
まあそれは当たり前で、
すると数十秒も経たずして戻ってきたオペレーターがこちらに向かって焦ったような声色で指示を飛ばしてくる。
『それが事実であれば
それが今回で言えば、呪度2と見積もっていた
だからこんなにも、本部は焦っているのだ。これでは何もかも違う。これからどのように対処するのか彼らは焦っているのだろう。
このまま放置していれば
『あなたも直ちに避難を―』
「え?…もしもし?ごめん、全然聞こえないんだけど?もしもし?しもしも~?」
そこでプツリと通信が切れる。何度かこちらから通信を試みるもつながらない。どうやら、空間が歪みはじめ本当にシャレにならないレベルまで来ているらしい。
こんな時に、通信が切れるとかマジで役に立たたなすぎだろこの端末…
再び交差点へと視線を戻せばノイズが走る間隔がだんだんと狭くなってくる。これを放置していると、まずいことになるのは素人から見ても一目瞭然。
――――――ジリ――――――
―――ジリ――――
―ジリ―
ノイズがどんどん酷くなり、一刻の猶予もなくなっていることが肌に感じられる。助けに行くのか行かないのか即決しなければいけない。
どっすかな~。多分この先にいるのはあいつだよな…
地面を足でトントンしながら考える。
下手に原作に干渉してもいいことないしなぁ~…いやでも今更な気もしなくもないし…
「まあ、ちょっとだけ冷やかしに行くだけだし……大丈夫、なはず…うん。大丈夫。うん、大丈夫って今俺が決めた。」
「位転」
少年がそう唱えると次の瞬間には大きな交差点は本当の意味で無人になった。
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