第14話 絶鎌の呪咒・再会

ゆっくりと瞼を開け、周りをきょろきょろと見渡渡してみる。


風景から察するに多分さっきと同じ場所である。なんで曖昧な表現かって?

それは―


「なんだこれ?なんでこんな世紀末になってるの?」


先ほどとまるっきり景色が異なるからだ。


先ほどまで、天高く立っていたガラス張りのビルはところどころ大きな穴や亀裂が走っており。


そして歩道橋はまるで真夏のチョコレイトのように、ぐにゃりと変形し、アルファルトは大地震の後のように陥没したり、深い溝が出来きている。


…荒廃都市って聞いても納得するぞ……


現実逃避しに空を見上げてみれば、浮かぶのは血液のように赤く染まったグロテスクな月。


現実逃避は出来なかったよ…


ここは現実世界の裏側、裏次元と呼ばれているところだ。現実世界の時間軸とは切り離されている世界であり、ぶっちゃけるとどれだけ破壊活動を行っても現実世界には影響が無い。


怨霊体アパリティーと呼ばれている怪異はこの裏次元からやってくる。


にしても…何度見てもこっちの景色は気持ち悪いな。さっさと片付けてこの場所から早くとんずらしよう。


という訳で、交差点の中央に目線を向ける。そこにいるのはとそれに相対する3人の紺色ブレザーの女子中学生。


とりあえず3人の無事な姿に一安心する。しかし学校帰りに戦闘に巻き込まれたのか、まだ制服のままであった。


やっぱり制服はブレザーしか勝たなぁ。原作者はよくわかってる。


上品で清楚な印象を相手に与えながらも、体にフィットするように作られ女性特有の体のラインを強調している!!


それは、清楚とエロスを同時に顕現した最強の戦闘服と言っても過言ではない!!!!!


後方腕組みPみたいにうんうんと頷く。


性癖を暴露している間にもJC3人組は異形の一挙手一投足を見逃さないとばかりに睨みつけている。


一人は、手に錫杖さくじょうを持つ金髪のロングヘアーの女の子。そしてその隣にポニーテールの赤い髪の女の子が守るように薙刀を構えている。


そして最後に…刀を持つの女の子。


ところどころがほつれたり、傷がついたりしている制服が、いかに過酷な戦闘であったかということを物語っている。


特に消耗が激しい黒髪の女の子は肩で息をしていて、タイツはところどころ敗れて、真っ白な御足おみあしとコントラストをなしている。


3人の女子中学生は俺に背を向ける形で陣取っているためか、俺がいることに気付いていない。


俺は閃いてしまった。


気付いていないことを好都合とばかり俺はソロリソロリと黒髪ロングのJCに近づいていく。するとだんだんと彼女らの会話の内容が耳に入ってくるようになる。


「なによ?いきなり…」

「どうしたんでしょう…全く動かなくなりましたね」


赤髪ポニーテールのJCがいち早く、異形の変化に気付いたようだ。金髪のロングヘアーは冷静に相手の状況を分析している。


彼女らは俺の存在に気付かない。そして俺は黒髪の少女の後ろにぴったりと近づき…


「ハァハァ」


息切れして妖艶な雰囲気をまとう黒髪ロングの耳元で…


「ピィ~ア('◇')ゞ」

「ッ!?」


瞬間振りぬかれる刀、さっきまで俺の首があった位置を刀が抜けていく。

もし腰を落とさなければ、俺の胴体と頭はララバイしていただろう。


刀を振る彼女の金銀妖瞳オッドアイが殺人鬼そのものだった。俺はとても恐怖した。


ちょっと軽い気持ちでドッキリをしたつもりだったのに、殺されかけた。


「ハァハァ………随分と懐かしい顔じゃないか」

「や、やっほー碧唯あおい、久しぶり~」


最初は不審人物に警戒心を抱いていたもの、耳元でいたずらしたのが俺だと気づくや否や、さっきまでまとっていた殺気を霧散させる。


すると今度は、俺が悪戯いたずらをしたことに気付いた赤髪ポニーが焦ったように言葉をかける


「誰?!一般人?!?!早く逃げ―」

「やはりおかしいです」


俺が怒られそうになった時、金髪ロングが俺たちの会話を叫ぶように遮った。


「何がだい?」

「さっきから、全く行動を起こさないんですよ…まるで何かにおびえているように…」


視線を異形に戻せば、確かにさっきから全く動かない人間の異形。ボロボロの服から覗くのはイボだらけの皮膚。大丈夫?お手入れちゃんとしてる?


そして……抱いているのは赤ちゃんか…

さしずめ交差点で事故に遭った親子の怨霊か何かだろう


これが今回の目標対象か…


俺はその怨霊体アパリティーに向かってゆっくりと足を進める。


「ねえ!まっててば!!!危ないから下がって!!」


丸腰で怨霊体アパリティーに向かっていくとは、思いもしなかったのだろう。

赤髪のポニーテール娘が必死に静止を呼びかける。


「大丈夫だって。ほら相手全然動かないし」


手をひらひらと振りながら、宥めるように言う


この親子の異形が虎視眈々とこちらの隙を狙っている。少しでも隙を見せれば足を掬う。そんな気概がひしひしと伝わってくる。


「お~怖い怖い。そんなに殺気を向けるなよ。ぼく悪い退魔師じゃないよ!」


プルプル。


おどけてみる。


………返事がない。ただの屍のようだ。


確かに相手は屍だったわ。


一度死んだ雑魚が!人間様に逆らうなんて、一生いっせい遅いわ!(逆切れ)


この俺がここに来なければ、歴史に名を残すレベルの災害になっていたに違いない。知能があり、こちらの言葉を解するレベルの怨霊体アパリティーは5強以上だろう。


だが関係ない。


「冗談をかいさない怨霊体アパリティーは死ねぇぇ!!!!」


その言葉が開戦やつあたりの合図となった。

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