第26話 食堂で毒を巻く女
「君がここの食堂に姿を現すなんて珍しいじゃないか」
食券を買い、受け取り口に並んでると、背後から声がかかった。振り向いてみれば、すぐ後ろで食券を手に持ちながら並んでいる
先日の
「俺がそんなに珍しいか?」
「いつもであれば別の食堂で食べているじゃないか。ハブられたのかい?かわいそうに…」
「別にハブられてないって。ただ単に皆に用事があってだけだよ」
「なるほどなるほど、君と食事を食べることより他の人との用事を優先されたと…」
「…そんな悲しい言い換えしなくてもよくない?」
「きっと今頃、皆は彼女と仲睦まじくお昼ご飯を食べているだろうね~」
「あ゜っ。脳が…脳がぁ焼け切れるぅ!!!」
人の脳みそを破壊してケラケラと笑う
「そうだ、ならボクと一緒に食べないかい?ちょうどそこに席を取っているからさ」
「碧唯……!!」
焼け切れた脳が回復していく。
碧唯が指さした場所を見れば、確かに見知った人が座っているのが分かる。
確か…クラスの連中だった気がするが…
「結構大御所だね。誰がいるの?」
一応参加者を尋ねてみる。
俺の予想通りであれば、あそこのグループに入っても、いたたまれないだけだと思うの。
「別に男子のグループに混ざらなくても、ボクの隣でいいじゃないか」
俺のチキンな思考を読みとったのか、優しい提案をしてくれる。
コイツは…なんて優しいのだろうか……!
(※主人公は碧唯の腹黒さに関して過小評価をしています)
「いいのか? それは本当にうれしいけど…」
なんだろう…俺の心中を見透かされてしまったという恥ずかしい。
それと同時に垢ぬけて明るくなった女子、そして
NTRというものは日常の至るところに潜んでいるのだ。Gぶりかな?
「はぁ…君は本当に変わらないね。ほら!ごちゃごちゃと変なこと考えてないで行くよ!」
「お。おい!ちょっと待って、強く引っ張るな!零れる。俺のラーメンが!ほんと!ガチで!」
そうやって、引っ張られて、強引に碧唯の隣の席に着席させられる。
そんな俺に侮蔑の視線を向けてくる
「
「…そんな目で俺を見るな!!」
「あれ?成田君?」
レアヒューマンこと俺が居ることに驚いたのだろう、
止めてくれ、これ以上俺の
そんな俺の願いが通じたのか、俺が碧唯に連行されているという構図には触れてこなかった。
「成田君はいつも
「ああ、そのつもりだったんだけど、あいつ全員用事があるらしくてな。折角だからこっちの食堂で食べようと思ってたら、碧唯に誘われた」
「そうなんだね。成田君と食べるのは初めてだし、うん!全然歓迎するよ」
流石、正統派の爽やか美少女。どんな人間でも寛容に包み込んでくれる。
「にしても、ここの食堂。人が多くね?」
「それに関しては同感です。まるで餌に
「全然同感じゃない件について。俺はそこまで言ってないからな」
隣りの人間嫌いの
「この食堂は食堂は量が多くてね、値段もそこそこだから安パイな食堂として人気なんだ」
「確かに、量は他の食堂よりも段違いで多いな…でも―」
チラリと夏帆と碧唯のトレイを交互に見る。
「ボクの昼ご飯が何か変かい?」
「別に?夏帆と碧唯のご飯の量の差に驚いていただけ」
碧唯のトレイに乗っているのは、ご飯に焼き肉、ハンバーグに
ここにきて大食い属性ですか。かわいいね。
「今日は体を動かす授業が多かったから、特段お腹が空いているのさ…うん」
「いや別に、食いしん坊であることになんとも思ってないから…つうか反対に、夏帆はそれだけの量で大丈夫なのか?」
「はい、私は巫女でそんなに授業でも動かないので、あまりお腹が空かないのです」
「そうなの?」
「はい、
自身の
「それこそあなたも、分類的には
「あ~俺の場合、
「そう…ですか」
少し、気になる点があるようだが、詮索は止めてくれたらしい。
でもその沈黙は気まずいよ。なぜ美人の沈黙というのはこんなにも怖いのだろうか。
碧唯はさっきから
ただ黙々と食べているだけでは、少し寂しく食堂の前にあるでっかいモニターに目を向けたところちょうど昼の放送が流れていた。
『さて~今月の気になる選手の紹介です~!』
放送部か…ラジオじゃなくてテレビとは何ともまあ金持ちなこと。
時たま司会者とゲストの笑い声が聞こえてくる。
『このコーナーは私達放送部が気になる退魔師を独断と偏見で決めて解説するコーナーとなっておりまぁす!!!』
この世界で言う退魔師とは前世で言うところに高校球児の扱いに近しい。特に年一で開かれる七つの学園による試合は大々的にテレビで放送される。
食べる手を休めて、モニターを見て見れば、「今月の気になる退魔師」というポップな文字と共に、見知った顔が映し出される。
「おおぉ…」
『まず一人目は――みんなご存じ水野碧唯さん!水野さんは、
「あれ? これだけ?」
歴史史上とか、快挙を成し遂げたという割には結構サクッとした説明だな。もっとこういろいろな説明があってもいいと思うのだが…
「フフッ。碧唯ちゃんの説明が簡単に終わったのが不思議そうですね」
「あ?…あぁ」
隣りの夏帆がおもむろに口を開く。
どした?コイツ、そんなキャラじゃないだろ。
それで、急にしゃべりだしたヤツが言うにはこうだ。
先月、つまり碧唯が記念すべき序列代63位の座を奪い取ったとき、碧唯は何回も取り上げられ放送されたのだと。
それはもう毎日のように取り上げられた。それを四六時中聞かなければいけない身である夏帆は耳が本当に腐り落ちてしまうのではないかと思ったほどであると。
右を向けば碧唯、前を向けばでっかい碧唯、夏帆は激怒した。彼の
「だから放送部にクレームを大量にいれたんです。ですが私の力及ばず放送中止に追い込むことが出来なくて…腹いせにこの女がいかに乙女チックな奴であるかを腹いせにバラしてやりました」
うん。
「……」
「……ごちそうさま」
「……………」
得意げに語る彼女を横目に、俺は食器を持ち上げて返却口へと向かう。
とてつもないオーラを漂わせている碧唯から目を背けながら…
「夏帆…?詳しく話を聞こうじゃないか」
黒幕は、アホの肩に優しく手を置いた。
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