第23話 夜海篝/篝火43編 上
篝火43
レッチリ君、そっちから敵3人。ボクもそっちにすぐ向かうから足止めヨロ~
レッドチリチキン
了解です
僕は今ゲームをしている。最近始めたVRMMO(最近開発されたフルダイブ技術を応用したオンラインゲームの総称。もう一つの現実のようなリアルなゲーム体験を味わう事ができるので人気)、「クロムエッジ&バレット」だ。荒廃した世界を探索し銃とSFチックな近接武器(ビームサーベルとか色々)で戦う感じのゲームだ。
対人戦(チーム対抗から一対一など形式は様々)あり、装備の強化や合成あり、レイドバトルあり、ダンジョン探索もありとやりこみ要素の塊。
ちなみにレッドチリチキンが僕のプレイヤーネーム。篝火さんはおそらくこのゲームで最強のプレイヤーであり僕の所属チームのリーダー。
アバターは小柄な美少女キャラだが侮る事なかれ、身の丈を遥かに超えたサイズの大剣を軽々と振り回し数々の強豪プレイヤーを一方的に葬り去ってきた。
さらに戦況を見通す能力に長けていて、自身も戦いながら味方に的確な指示を出す為、篝火さんのチームはほぼ常勝。負けた事は数える程しかない。
とりあえず言われた通り、足止めをしようか。
まだ向こうは僕に気付いていない。アサルトライフルを連射して奇襲。エイムが甘かったからか、ヘッドショットには至らず。防具によりダメージは減衰されて敵3人のうち2人のHPを少し削る程度しかできなかった。
敵がこちらに気付いた。僕はダメ押しでグレネードを投げつける。向こうが怯んだ隙に撤退。
3対1では勝ち目ないからね。
実は僕が今投げたのはスモークグレネード。ひとまず撤退して姿を隠してから再度奇襲。これを繰り返して篝火さんが来るまで持ちこたえるつもり。
篝火さんから教わったこの戦い方のおかげで僕は初心者の割にはそこそこ戦えている。
相手からは絶対ウザがられているだろうけど。
煙が敵の視界を遮る。今のうちだ。逃~げるんだよォ~スモーキー~!!
僕のプレイヤーネーム通りのチキン戦法。チキンはチキンでもレッドチリチキンはピリッと辛いぜ……なんてね。………キメゼリフにしてはあんまりかっこよくはないな。
僕は遮蔽物の多い場所に移動して、身を隠した後に武器をサプレッサー付きスナイパーライフルに持ち変える。スコープを覗き込むと、さっきの3人が僕を見失い右往左往しているのが見えた。3人のうち、高出力のビームライフルを持っているプレイヤーの頭に狙いを定めて発砲。
ヘッドショットに成功し、一撃で倒した。
見えない狙撃手に怯え逃げまどう2人の敵プレイヤー。
篝火43
ナイス!!あとはボクにまかせて
僕の役目はここまでみたいだね。だって、篝火さんが来たから。
大剣を持った小柄な美少女、篝火さんのアバターがサブマシンガンを装備した敵プレイヤーを背後から斬りつける。AGI(アジリティの略。敏捷値)とSTR(ストレングスの略。筋力値)に特化した篝火さんのアバター。その一撃は敵のプレイヤーを容易く仕留めた。
もう1人のショットガンを持った敵は襲撃に気づき散弾を連射して応戦したが抵抗も虚しく一刀のもとに斬り伏せられた。
レッドチリチキン
今日も勝てましたね
篝火43
うんうん。レッチリ君も始めたばかりの頃と比べたらかなり上達してきたね。もう立派な戦力だよ
レッドチリチキン
ありがとうございます。僕はそろそろ落ちます
篝火43
おやすみ。そういえば学生だっけ?
レッドチリチキン
そうですよ。ちなみに篝火さんは?
篝火43
秘密。じゃあね~
そういうやりとりのあと、僕はゲームをログアウトする。ゲーム機の電源を切ると、ログイン時と同じくベッドに寝転がった状態で現実に戻った事を実感する。
「今日も楽しかったな……」
そう呟いてヘルメットとゴーグルが一体化したようなスタイリッシュな被り物、といったデザインのゲーム機本体を頭から外し、ベッド横の机に置く。目を閉じたら疲れていたのかすぐに眠くなってきた。
心地よい眠気に身を委ねてそのまま眠る。
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