第2話 葵side

クラス分けの掲示に小学生の頃から片時も忘れもしない、「朱神コウ」の名前を見つけた時、心が弾んだ。

やっと見つけた……私のヒーロー。



話は私が小学生の頃まで遡る。

私はクラスのリーダー格の男子に強引に告白される。私がそれを断るとプライドを傷付けられた彼はクラスメイトを率いて、私をいじめ始めた。それからは毎日が地獄のようで、生きている事すら苦痛な日々が始まった。親に言われるまま惰性で学校に通い、クラス全員から無視は当たり前。持ち物を隠されたり教科書を切り刻まれたり罵声を浴びせられる。

たかだか子供のいじめと言う人もいるかもしれないが、当時の私の心を苛み引き裂くには充分すぎる出来事。

逃げ場などどこにもなかった。そんな私を助けようとしたのがコウ君だった。

クラスの中心的人物でもなく、なんの力も持たない一人の男の子が私の為に立ち上がった、その事実だけで折れかけた私の心は救われ、同時に彼を好きになった。

実際、その時のコウ君は私にとってすごく眩しく輝いて見えた。それまで味方などいないと思っていたのだから。

でもコウ君は私の代わりにいじめのターゲットにされてしまう。

私は、何もできなかった。

その後、親の仕事の都合で転校した私はコウ君がどうなったのか知らない。けどあの時のコウ君の勇敢な姿は私の心に今も焼き付いている。

それから私は少しでもコウ君の恋人にふさわしい自分になろうと努力を重ねた。

そしてようやく出会えた、私のヒーローに。

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