第16話 葵side3


私は階段を上がり日陰ちゃんの部屋の前にいる。日陰ちゃんの部屋に来るのも久しぶりだ。

最後に来たのはいつだったか……そんな事を考えながらドアをノックした。


「開いてるっスよ」


日陰ちゃんはそう言って私を迎えてくれた。

父親からソフト数本を添えて譲ってもらったニン○ンドーDS(初期型)で遊んでいて、私の方をほとんど見ようとしない。そもそも今どきの高校生がニン○ンドーDS持ってる事じたいがレアな気がする。勉強机にはロボットのプラモデルが飾ってあったりと、女子力は全く感じられない部屋、昔からだけど。私はバタークッキーが乗った皿と紅茶のカップをテーブルに置く。

「ここはとりあえず背後にまわって……攻撃は……、アカシックバスターでいいっスね」


ゲーム関係と思われる一人ごとを言っているが、私の方を気にする様子はない。嫌われちゃったかな?

心にズキリとした痛みを感じた。


「日陰ちゃん、さっきはごめんなさい……」


私は誠心誠意、日陰ちゃんに頭を下げた。しかし日陰ちゃんの反応はあっさりとした物だった。


「OKOK。問題無イチンゲールっスよ」


え?あっさりしすぎてませんか?さっきまで怒ってるみたいな様子だったのに……


「葵さんの言った事は間違ってないし、学校行かないのもクラスメイトから私と葵さんが友達だって事について色々言われたのが理由ッスけど私のワガママなんスよ。だから葵さんは悪くないっス。ただ、今は暇だからゲームしたいのでとりあえず静かにしてもらえると助かるラスカルっス」


日陰ちゃんの発言に呆れると同時に安堵して、涙まで出てきた。


「チョッ!?何も泣く事ないじゃないっスか!落ち着くっス。素数を数えて落ち着くっス」


日陰ちゃんの馬鹿……もう嫌われたかと思ったじゃない。でも、良かった……嫌われた訳じゃなかった。昔からそうだった。マイペースで、意外と繊細で、人の気持ちに疎くて。昔から変わらない私の大切な友達。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る