第26話 あの人のラストステージは、輝きに、輝いていた。どうして、今まで、あんなにもアイドルになりたかったのか、わからなくなっちゃうくらいにね。

 「なるほど。レイカじゃあ、好きな人に支えられるアイドルにはなれません」

 「…」

 「レイカには、誰も、いないクセに」

 「…友達が、いるよ!」

 「友達、ねえ…」

 「疑うの?母親の、くせに!」

 「娘の、くせに!」

 「…大人は、これだからなあ」

 「…子どもは、これだからねえ」

 「友達って、オーディションの応援できてくれた、2人?」

 「そう!」

 「でも、あなたを入れたら、3人になっちゃうでしょう?」

 「…」

 「2人のうち、どちらか選べっていわれても、不公平で、困るんじゃない?」

 「…」

 「まるで、オンライン面接の、今どき世代男子」

 「…」

 「ククク…」

 「笑うな!」 

 「モモカさんっていう子は、偉いよねえ」

 「うん…。私なんかに、気遣ってくれちゃったし」

 「ああいうのが、社会の、あれよ」

 「あれ?…っていうか、お母さん?」

 「何よ」

 「モモカさんは、私が、群馬にきているって、知っていたわけだよね?」

 「あら。エーデルワイスが、きれいね?」

 「ごまかすな!」

 「…」

 「モモカさんに、私の居場所を教えた犯人って、お母さんでしょ?」

 「…聞こえない!聞こえない!」

 「絶対に、そうだ!」

 「…あの事務所も、悪いことをしていたものねえ」

 「話を、変えるな!」

 「…オーディションに受からなくて、良かったじゃないの」

 「え?」

 「レイカは、あんな事務所にいかなくて、良かったのよ…」

 「…お母さん」

 「これで、良かったのよ…」

 「…」

 「あ…、ほら!」

 モモカさんが、ステージに出てきた。

 モモカ、モモカ!

 ファンの、大きな声援。

 「…あの子、努力家ねえ。今日が、最後なんだって?私、今日で卒業しまーすとか、言わないのね」

 「…モモカさんは、大人、だからだよ」

 「…」

 「あれが、本物の、アイドルなんだよ」

 モモカ、モモカ!

 モモカ、モモカ!

 「モモカさんのラストステージ、良い感じだな」

 「そうねえ」

 「…モモカさん」

 「どうしたの、レイカ?」

 「アイドル、良いなあ」

 「…だから、アイドルになりたかったんじゃないの?」

 「…それ、わかんなくなっちゃった」

 「いい加減な子ねえ」

 「いい加減で、結構ですよ」






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