第21話 偽りの血、傷と痛みが、ステージを犯していくとき…。 正しい血を通わせたアイドルの気持ちは、完全に、否定されていくんじゃないか。

 「レイカさん?」

 「はい」

 「本当の友達とは、何なのか?ステージの上から見ていると、特に、今どき世代は、悲しく映ります」

 「…」

 「今の日本人は、アイドルに踊らされている幻に、見えてきます」

 「…」

 「それも、幼稚な幻のように」

 「…」

 「幻の国、日本」

 国の話にまで、いっちゃったか…。

 「日本人は、バブルの時代の踊りから、何を、反省できたのでしょう?」

 ああ、バブルさんたち…。

 「…あれ?」

 何だろう、この、気持ち良さ。

 私の目が、すっきりとしてきた。私は今、モモカさんから、何かを、もらっているのかな…?

 「私はね、レイカさん?」

 「はい」

 「もう、歌ったりしちゃダメだって、言われちゃったんですよ?」

 「そんなこと、誰に…!」

 「医者です」

 「…」

 「初期の、白内障だって…」

 「…」

 モモカさんは、ポロポロと、涙を流しはじめた。

 「事務所のベッドで寝ながら、友達について、考えていましたよ…」

 「…」

 友達依存の話まで、出て…。

 「友達だと信じてきた人たちが、本当に友達なのかどうかの保証なんて、どこにもないんです」

 「…」

 「1人になれて、考えてみると、私に欠けていたものとか…、わかってきました。ようやく、心に、血が流れてきました」

 友達依存の世代の、怖さ…。

 「友達に、会えないよう!」

 学校にいけなくなって、誰かに会えなくなっただけで、ひどく、落ち込んでしまう。それが、友達関係ですか?

 友達依存の血って、どう?

 それは、社会、会社、ステージの心を犯していく、汚らしい血なのかも。

 まわりからどう思われているのかを、必要以上に気にさせていき…。消えない、血。

 救いようのない過ちに、思い出してはならない痛みさえ、思い出させない血もある。

 つまりは、反省もさせない血。

 「そういう血が、友達依存の血の正体なんじゃないかなって…。思います」

 「モモカさん…」

 偽りの血でしかない傷と痛みが、止めどなく、ステージを犯していく…。

 正しい意味での血を通わせたアイドルの気持ちは、完全に、否定されていく。

 このときにはもう、モモカさんは恋のライバルなんだとか、全然、思っていなくて…。



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