第20話 「裏切り」「わがまま」「この世界には、必要ないのかなって、思っちゃいました」本物のアイドルが考える、友達とは?本当の、ファンとは?

 モモカさんは、歌ったり踊るのが、楽しくなくなってきちゃったんだという。

 「…」

 「私は、弱い商品でした」

 「…モモカさん」

 「いつ、目の痛みとかで倒れちゃうか、わからないって、おびえるばかりで…」

 「私と、同じ…」

 「私はもう、この世界には、必要ないんだと思います」

 「…」

 「もしも、私が、失敗しちゃったら…」

 「…」

 「まわりに、迷惑をかけてしまうことになっちゃう。私のせいで、皆のステージをよごすわけにはいきません」

 真面目、なんだな…。

 モモカさんって。

 「やめれば、すっきりすると思います」

 「…モモカさん」

 「ラストステージ…。絶対に、失敗しないから!」

 「…でも」

 「何ですか、レイカさん?」

 「モモカさんのファンは、どうするんですか?」

 「そこは、レイカさん?」

 「はい?」

 「たまたま、私の姿が見えなくなってうろたえるファンは、ファンではないと思いますよ?」

 「え…」

 「応援する人が、目の前からいなくなっちゃっても応援していられるのが、本当の、ファンです」

 「…でも、それでも」

 「何です?」

 「モモカさんがいなくなってしまったことも知らないで、何度も、見に、聴きにやってきてくれる人たちがいるでしょう」

 「…」

 「その人たちのことは、どうなっちゃうんですか?」

 「…」

 「モモカさんが、ステージを、降りてしまえば…」

 「はい」

 「裏切られたって、ショックで傷付く人が出てしまうんじゃないんですか?」

 「裏切り、ですか…」

 「…」

 「私には…。レイカさん?」

 「はい」

 「応援する人が、たとえ、ステージに上らなくなってしまったとしても…」

 「はい」

 「裏切られたと思うことなく、どうしたんですかと、気遣ってくれる人がいれば良いんですよ。私には、その人たちさえいてくれれば…」

 「…」

 「わがままでしょうか?」

 「…」

 「本当のファン、本当の友達がいてくれさえすれば…良いんです」

 「本当の、友達…」

 「本当の、友達っていうのは…。いいねの交換ができたり、位置情報をつかめたりする人のことじゃないんですよね」

 「…」

 耳が、痛かったな。

 アイドルって、こんなにも、考えさせられちゃうのか。





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