第10話 思いの伝え方には、いろいろある。点字ディスプレイでも、誰かを、助けられるんじゃないか?もっと、努力のできる女性になってやろう。

 思いを伝える方法は、いろいろ。

 「レイカさん、点字ディスプレイを、やってみませんか?」

 点字ディスプレイっていうのは、パソコン上で使われる文字情報を、点字に変換して浮かび上がらせる方法。

 「なるほど。目で苦労している人の作業には、良いですね」

 「手伝わせてしまって、ごめんなさいね」

 「いいえ。私、努力のできる女性に、なりたいんです!」

 言いかけて、アッと、思った。

 「やば。がんばってもつぶされた世代の人たちを、ディスることにならないかな?シューショクヒョーガ期の、人たち…。私じゃ、まだ、救う力がない」

 つぶやくと…?

 「あら、レイカさん?」

 「はい?」

 「就職氷河期を、知っているのですか?」

 年輩の職員が、驚いていた。

 「レイカさんは…」

 「はい」

 「親に、反発を、していましたか?」

 「はい」

 「就職氷河期世代の力を、秘めていますねえ」

 「…え?」

 「私も、子どものころは、何度も、親に反発したものです」

 「…」

 「群馬の女性は、強いですしね」

 「…」

 「自分セクハラのつもりじゃ、なくて」

 たとえば、家庭。

 就職氷河期世代の子たちは、親に反発するのが、フツーだったという。それが、群馬の女性たちを、強くしたのか?

 「ここに、座りなさい!」

 「はい、はい…」

 「お母さんは、あなたのことを心配して、言っています」

 「あのさ、お母さん?」

 「何ですか!」

 「小遣い、上げて!」

 「どうして?」

 「みんな、1カ月に、私の倍は、もらっているんだよ?」

 「うちは、うちです」

 「何、それ!」

 「付き合い方も、考えなさい」

 「はあ?」

 「あなた、同じ部活の人を、好きになっちゃったでしょう?」

 「だから?」

 「認めない」

 「どうして?」

 「あなたには、その資格がないから」

 「はあ?」

 「どうせ、たいした男じゃ、ないでしょうに」

 「娘の私生活に、口を出さないでくれますか?」

 「…」

 「1人で、生きてやる!」

 「できるわけ、ないクセに」

 そりゃ、できないかもね。いきなり、1人で、生きていくなんてさ。

 けれど、そういう気持ちがあればこそ、強くもなれる。本当の物を見る目が、養われていくはず。

 幼稚な男子とかじゃあ、けちょんけちょんに、無理っぽいな。





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