第9話 指文字や、蝕手話について。「群馬の女性は、成人になったら、1年で1人ずつ、男を殺害しなくっちゃいけない」(←私、だまされてた)

 「ああ…お母さん」

 腰の曲がった母親は、強かった。

 「どうして、日本は、お母さんたち、シューショクヒョーガキ世代の人を、採用してあげなかったんだろう?」

 努力のできた、美しく強い人たちを、雇ってあげられなかった国。

 おかしな国、日本。

 ぬくぬくと育てられた新卒を雇おうとするから、オンライン面接ゲームの事件が、起きちゃったんじゃないか。

 新卒一括採用は、やっちゃダメっていうのに。

 レベチな、空気で。

 バブルのじゃまおばさんたちに占領され、働かないおじさんたちを辞めさせられないって…何?

 「お母さん?」

 「何です?」

 「明日から、群馬生活が続くね」

 「違うわよ、レイカ?」

 「え?」

 「あなたの生活は、あなたを身ごもったときから、ずっと、続いています」

 「…うん」

 無事に、群馬に移った。

 「はじめまして。リュウザキレイカと、申します」

 「はい、テニスが好きなレイカさん、でしたよね?」

 「よろしく、お願いいたします」

 「目で、お困りでしたよね?」

 「はい」

 「意思疎通で、苦労されるでしょう?」

 「…」

 「意思疎通には、こういう手段があるんですよ?」

 親切な職員が、多かった。

 「目の疲れた人が、社会生活で必要になる気持ちの伝え方は、これですね」

 いくつか、教えてもらえた。

 「指文字」

 「蝕手話」

 ここで必要になるのが、触れ合うということ。

 「あの…」

 「何でしょう、レイカさん?」

 「触れ合いが難しい、今の、変なウイルスの社会では、どうするんですか?」

 「はい?」

 「相手の手の動きが細かく確認できなくても、気持ちは、伝わるんですか…?」

 聞くと、職員専用の部屋にまで、入れてくれた。

 かかあ天下と呼ばれるだけあって、群馬の女性は怖いんだろうと、ビクビクしていたのに。

 友達の、奴らめ。

 「レイカ?群馬にいくの?」

 「うん」

 「群馬は、かかあ天下の土地だよ?」

 「うん」

 「群馬の女性は、成人になったら、1年で1人ずつ、男を殺害しなくっちゃいけないんだよ?」

 「マジ?」

 …私、だまされてた。

 職員専用の部屋の中で、パソコンをいじる機会が増えた。

 この作業で、誰かを助けられたら良いな!





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