第18話 アイドルの事務所も、いろいろ。弱みにつけ込んだようなやり方をして、女の子を引き抜くところもあるってことを、忘れないでいて。

 そこで、モモカさんは、何を決心させられていくことに、なったんだろう?

 「そこで、私たちは…」

 「何でしょう、モモカさん?」

 「私たちの手で、こぢんまりとした町中ステージの上にアイドルを作っていくしかないんだと、知らされましたよ」

 「…」

 「アイドルを作って、自らを納得させて踊るしか、ありませんでした」

 「…モモカさん」

 「そうして、さみしさを、まぎらわせていくしかなかった」

 「…」

 「アイドルの存在意義って、何なのでしょう?」

 「…」

 「メジャーデビューできなければ、スポンサーなんて、ほぼほぼ、つきません」

 「…」

 「誰も、助けてはくれません」

 「…」

 「チケットは、私たちが、私たち自身で売るしかありません」

 「…」

 「ステージにきてくれた人に、チケットを買ってくれた人、サインを求めてきた人たちに、思い切り感謝して、握手をして…。笑って、笑って…。私、泣いちゃいました」

 「…」

 「そりゃ、泣いちゃいますよ…。だって、そうまで笑顔を振る舞った客に、また、ステージまできてもらえる保証なんて、どこにもないんですから」

 「…」

 「がんばってください!また、きます!って言われても、その言葉は本当なのか、わかりません」

 「…」

 「もしかしたら、客の中には、どこかの事務所のスパイが混ざっているんじゃないのかなあとさえ、思っちゃいました」

 「…」

 「疑心暗鬼と、いうものですかね?」

 「…」

 「そんな、ある日」

 「はい」

 「あなたと会った日のオーディションを開催した、あの事務所の人が、ステージを、見にきました」

 「…え」

 「私、その人に、声をかけられました」

 「それって、タキシードを着ていたりは、しませんでしたか?」

 「さあ?私、舞い上がっちゃっていて…。覚えていなくて…」

 「そうですか」

 「その、事務所からきたっていう人に…」

 「はい」

 「この前のオーディションは、残念でしたね?でも、今は、良い感じじゃないか?正規のアイドルとしては雇えないけれど、アルバイトのような形でなら雇ってあげるよって、言われちゃいました」

 「…」

 弱みにつけ込んだような、やり方。





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