第23話 「私、アイドルを、卒業します!」あなたは、この言い方、どう思いますか?この言い方を、嫌う人もいます。それはなぜか、わかりますか?

 「モモカさん?」

 「はい」

 「アイドルを卒業っていうことじゃあ、ないんですか?」

 「いえ。私から、卒業するわけには、いきません」

 「?」

 「レイカさん?」

 「はい」

 「私、卒業します!…って言う子、いますよね?」

 「はい。フツーに、自分自身から、卒業を宣言しますよね?」

 「でも、そこ」

 「…え?」

 「そこ、ちょっと、疑問だと思いませんか、レイカさん?」

 「…え?」

 卒業っていうのは、本来は、何かの学習や訓練を終えたような人が、学校長や先生、師匠から、かけてもらえる言葉。

 「あなたが卒業することを、私が、認めます」

 誰かに、認めてもらうときに、使ってほしい言葉なんだね。

 それなのに…。

 「私、卒業します!」

 あんたが、自分で言うな!

 社会は、変わっていく。

 「私、卒業します!」

 その言い方を、どう、思うのか?もう、おかしくも何ともないんじゃないのって、思われちゃっているだろうか?

 意外に(?)しっかり者のモモカさんも、この言葉を、嫌っていましたが。

 そうだろうなあ…。

 真面目な子は、きらうでしょ。

 「私、卒業します!」

 ふうん。

 「モモカさん?」

 「はい」

 「本当に、もらってしまって、良いのですか?」

 「ええ」

 「ラストステージの、前列チケット…。プレミア、じゃん…」

 手が震えた。

 「レイカさん?」

 「は、はい!」

 「チケットは、2枚、用意してありますからね?」

 「はい!」

 「彼氏さんとでも、きてくださいね?」

 「…ありがとう…ございます」

 彼氏さん、か…。

 ムナカタ君は…。

 無理、だろうな…。

 「レイカさん?」

 「はい…」

 「私、準備のために、一旦、帰ります」

 「帰る?」

 「明日、東京に、戻ります」

 「そうですか…」

 「ネギとコンニャク、群馬の名産を、持ってね」

 「ネギとか、収穫したんですか?」

 「しませんよ」

 「…ぷ」

 「…ふふふ」

 アイドルって、大変なんだな。

 「アイドルの中には、白血病と闘った子もいた!」

 事業所に戻ってから、ネットで、知った。

 白血病…。

 それって、命と関わる病気じゃないか…。

 白血病を診断されたアイドルの子は、長期の入院。

 抗がん剤の影響で、髪の毛が、全部抜け落ちたという。

 私のような女の子に、それが、耐えられるだろうか?





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る