第2話 視力関係で引っかかっていたJKとか、多かったみたい。これは、そういう子にこそ、知ってもらいたい物語なのかもしれないなあ。

 口が、なめらかになりすぎてきた。人間って、いい加減なもんなんだな。

 「ねえ、ねえ!お母さん?」

 「何?」

 「これから、出かけるでしょ?」

 「ええ、まあ…」

 後で考えれば、この状況では、母親は、そう答えるしかなかったんだと思う。たとえ、出かける予定なんか、なくても。

 「ねえ、お母さん?」

 「はい、はい」

 「美味しい物を、買って帰ってきてよ!」

 「夕食は、鮎の塩焼き?」

 アハハハハ。

 それはもう、良いよ。

 そうしたら…。

 しまった。

 また、目が、やっちゃったのか…。

 いろんな意味での、逆転人生?

 「ねえ、お母さん?」

 「何、レイカ?」

 「困ったよ」

 「何?今度、また、審査してもらえるわけでしょう?」

 「そうだけれどさ…」

 「困ることなんて、ないじゃないの」

 「いや、困っちゃったんだよう!」

 「着ていく服が、ないとか?」

 「…着ていく服くらい、あるよう!」

 「高校の制服?」

 「高校…。中退しちゃったのに…」

 「ごめん。お母さんの、ミス」

 「もう、良いよ…」

 「ごめん」

 「制服、着ていくよ…」

 本格的に、目が痛くなってきていたことまでは、伝えられなかった。

 「待とう」

 約束の土地で、私は、どんな見られ方をされるだろう?

 ああ…。

 約束の土地へ、導いて…。

 「どうして、今になって、目に疲れが出ちゃったんだろう?」

 アイドルの神様がいたとするのなら、その神様は、いじわるすぎだよ…。

 「ねえ、お母さん?」

 「何?」

 「目が、また、痛くなってきた」

 「そっか」

 「オーディションのときは、コンタクトでいって…。そのときは、問題なかったのに」

 「…」

 「コンタクト…、高かったな」

 「良いじゃないの。お年玉、崩せば」

 「子どもの夢って、何?」

 「子どものお年玉は、老後の資金です」

 「ウソだあ」

 「目が、目がー!」

 「お母さん、何、それ?」

 「そっか。ムスカを、知らないのか」

 「…何、それ?」

 眼科までいって、検診を受けた。そうしたら、また、ド近眼とわかった。  

 「スマホの、いじりすぎかな」

 視力関係で引っかかっていたJKとか、多かったみたい。

 「学校の休校期間、スマホ世代の子は、気を付けてください」

 医者は、言うの遅いよ。




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