第6話 「努力のできる女性は、美しい」アイドルの、日本語注意報が続く。「あいつは、ひきょう。姑息だ」みたいに言う男子って、幼稚ですか?

 「レイカ?」

 「うん」

 「お母さん、応援してあげるから」

 「…うん」

 「あの子たちも、呼ぶんでしょう?」

 「…うん」

 「目は、今も、痛いの?」

 「…うん」

 「レイカ?泣くんじゃ、ありません!このチャンスを、生かしなさい」

 「私、生き方が、わからなくなってきちゃった」

 「ええ?」

 「こんな社会で、私たちは、どうやって生活させてもらえるの?」

 「レイカ?しっかり、しなさい」

 「…」

「どうやったら生活をさせてもらうのかじゃなくって、どうやったら生活ができるのかを、考えられるようになりなさい」

 「…うん」

 「あなたには、努力が足りません」

 「…」

 「だから、すぐに、弱音を吐く」

 「…」

 「社会は、そういう人を嫌います」

 「…」

 「良い、レイカ?」

 「何?」

 「努力のできる女性は、美しいんです」

 「…」

 「努力のできない人になっちゃったら、どうするの?」

 「…」

 「バブルのじゃまおばさんたちに、なっちゃうでしょ?」

 「…」

 「努力ができる女性。そういう人が、本物のアイドルになれるんです!」

 「…」

 「できない子は、新卒の学校の先生レベルになっちゃうんじゃないの?」

 「それは、いやだ」

 「それか、オンライン就活ゲーム世代」

 「果てしなく、いやだ」

 「不思議、不思議…。帽子をかぶった、不思議さん」

 「何、それ?」

 「あとで、教えてあげます」

 「お母さん?」

 「何?」

 「アイドルになったら、大学にいくの?」

 「…さあ、どうでしょう?」

 「お母さん?大学も、不思議だよね?」

 「…」

 「大学って、何なんだろう?」

 「就職予備校」

 母子の会話は、面白いようで、疲れる。

 「お母さん?」

 「何ですか?」

 「日本の空気って、さ」

 「はい、はい」

 「いろんな意味で、姑息。ひきょうだよ」

 「…」

 「…あれ?」

 「レイカ?言っておくけれど…」

 「何?」

 「姑息って、ひきょうとかっていう意味じゃないからね?」

 「そうだっけ?」

 「…信じられない。こういう子が、就職氷河期世代を、追い越しちゃったのか」

 「男子とか、言ってたよ?あいつは、ひきょうだ、姑息な奴だ。みたいな」

 「その男子、まともじゃないから」

 母親から、日本語注意報が続きます!



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