第7話 本物のアイドルたちって、すっごく、努力をしているんだろうな。「あ…!」スマホの動画配信の画面を見ていたら、あの子が、踊っていました。

 「私の知っている男子って、まともな男子じゃない系?」

 「あなた、そういう言い方をする男子が、好きなの?」

 「違うー!」

 「レイカ?」

 「え?」

 「縄で縛られて捕まって、パズーが助けにきたとき、おならを出したんじゃないのかって、ルイとかから疑いの目を向けられた、ドーラみたいな言い方は、しないでよ」

 「お母さん?何、それ?」

 「あとで、教えてあげます」

 私の目を、休ませたい!

 「お休みなさい…」

 朝がくるのが、怖かった。夢の中でなら、私の目は、元気だったから。

 「もう、朝か…」

 スマホのアラームを、手探りで、止めた。

 何度でも触れていると、画面のどのあたりをスワイプ(スライド)させればアラームが止まるのかが、わかってくる。

 何ごとも、経験。

 努力。

 努力で、手探り。

 目が疲れすぎたのは、仕方がなかった。何とか、努力をして、生きていくしかない。

 母親たち、就職氷河期世代は、努力ができた。だから、あの人たちは、美しいのか。

 本物の、大人な意味のアイドルの人たちって、ゆるゆるに生きられた世代じゃあ理解できないくらい、努力をしているんだろうな。

 「ああ、疲れた!」

 「子ども、ねえ…」

 「そりゃ、私は、お母さんの子どもです」

 「…」

「アイドルになりたいっていう、大人扱いされる子が、子どものままであっては、いけないと思いますよ?」

 「…」

 「まるで、ピーターパン・シンドローム」

 「お母さん?」

 「何です?」

 「ピーターパン・シンドロームって?」

 「不勉強…」

 「何だよ、お母さんは?早くアイドルになって、良い人がくるのを待ったほうが、コスパ良さそう!」

 「それは、シンデレラ・コンプレックス」

 「何、それ?」

 「何も、知らないのね…」

 「私、ダメ?」

 「こういうレベルの子たちが、楽に、就職するわけね」

 「でも、お母さん?」

 「何です?」

 「楽じゃあ、ないたいだよ?」

 「耐えられない子たち、なんでしょう」

 「…?」

 「就職氷河期世代の子に比べれば、楽ですよ」

 「…また、その言葉か」

 母親の腰は、さらに、曲がってきていた。

 かがんだ姿勢で、私の目ににごりがないのかたしかめていたから?

 「…」

 気晴らしにと、スマホの動画配信を見ていた。

「あっ、この子…!」





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