第6話 【イクミSIDE】 買って貰えた。
まさか自分が買って貰えるなんて思わなかった。
私は気持ちが悪いらしく…お店でも売れなかったし、ほぼ見世物扱いだった。
そこ結果、奴隷市場のオークションに掛けられる事になった…
だけど、
「チェッ、こいつ等オークションにも掛けられないのかよ」
奴隷商人が私の檻を蹴った。
「此奴がいると他の客が寄り付かねーから、シートでも被せておけ」
「此奴どうしますか?」
「まぁ、生涯倉庫にでも突っ込んで餓死でもして貰うしかねーな。本当に保護法でよ処分も出来ねーしな」
私は本当に誰からも必要とされない。
奴隷にすら成れないのか…
もうきっと…空も見れない。
◆◆◆
何もやる事が無いから、ただ寝ていた。
せめてこのシートが無ければ外を見る事は出来るのになぁ。
今はただ寝ながら音を聞く事しか出来ないな。
「すこし、見せて頂いてよいでしょうか?」
声が聞こえて来た。
どうせ私には関係ない。
私みたいな化け物…買うわけが無いからね。
「あははっ此処は店でないから自由に見て良いよ、青空だからね」
「そうそう、自由に見て良いよ」
「品質は保証はしないけど、気に入ったのが居たらお得だよ…まぁ難しいかも知れないけど」
どうやら見て歩いているみたい。
あれ、すぐ傍まで来ているのかな。
よく見るとシートの下から足が見える。
『何でこの檻にだけシートが被せてあるんだ』
あれっ、シートが外れた…嘘、私を見るの。
見ても無駄だよ…此処に居るのは、確かに女ではあるけど。
化け物だもん。
「嘘だろう…この世界にはこれ程の美少女が居るのか…」
美少女…誰の事だろう。
私の事じゃないよね..だけどこの近くに女は私しか居ない。
まさか…私…間違ってもそんな事は無いよね。
「すみません、この子幾らですか?」
まさか買ってくれるの?
だけど、この人、今迄の人達とは全然違う。
今迄の人は見た瞬間から目をそらしたり、興味なさそうに直ぐに歩いていっちゃったけど…この人私の事をずうっと見ている。
何だかちょっと恥ずかしい。
「此処に居るのは市場におろせないレベルの奴隷だから、欲しいならどれでも銀貨3枚で譲るよ」
無料でも要らない、私が銀貨3枚。
買う訳無いよね。
「このシートの掛かっている子の事だよ」
多分、銀貨3枚なんてしないと思ったんだよね。
そうだよね、だってこの中で一番価値がないのは私なんだから。
「すまないねー、奴隷は銀貨3枚以下にはならないんだよ…だから銀貨3枚だ」
「だったら、この子買います、買いますから直ぐに手続きして下さい!」
嘘、買ってくれるの?
本当に…私買って貰えるの。
信じられない。
「購入されるのですね! はい…それですね…解りました直ぐに手続きします。まぁ女ではあるから..掘り出し者なのかな…あはははっ」
お店の人も嬉しそうだ。
今日から怒鳴られないで済むし、私も嬉しい。
「ちょっと待て女が居たのか」
あれっ、他にも居るの?
「すみません、もう購入の意思を示した後です。」
「うるせーな! ちょっと見せろ…あっ悪い邪魔したな」
普通そうだよね…欲しい訳無い。
化け物なんだから。
「すみません、奴隷の方は銀貨3枚これが奴隷の最低価格です。此処は奴隷市場内でないので生体保証はつきません。あと、この奴隷に限り、買い戻しはありません」
「別に構いません」
「有難うございます、あと奴隷は銀貨3枚ですが、奴隷紋、契約に銀貨3枚掛かります。まぁ今回はこちらでサービスします。こちらを銀貨2枚にしますので、合計銀貨5枚になりますが宜しいですか?」
「宜しくお願い致します」
「畏まりました、それでは手続きさせて頂きますので、テントの方へどうぞ」
どうやら無事買って貰えるみたい…
久々に檻から出られて凄く嬉しい。
本当は直ぐに話したいけど、奴隷だから話しちゃ駄目。
背中側の服がめくられて紋が刻まれた。
何だか恥ずかしくて、血を垂らされたら体の芯から熱くなってきた。
「これで手続きは終わりです…この度は有難うございました」
お金も払われたみたいだし…うん買って貰えたみたい。
だけど、私なんで買って貰えたんだろう。
化け物だから見栄えは最悪だし…何させられるんだろう?
「話ししても良いですか?」
「もう契約も終わりましたし、その奴隷は貴方の者です。ご自由にどうぞ! あと少しで今日は終わりですから、それまでテントを使って頂いて構いません」
もうお話しして良いんだ。
そうだ…そうだお礼言わなきゃ。
「あの…買って頂き有難うございました…」
余り喋らないから上手く話せない。
人と真面に話すのってどのくらいぶりかな。
「こっちこそ…その君みたいな凄く可愛い人にでうわわえて(噛んじゃったじゃないか)幸せだふ。 名前を教えてくれまふか。」
ご主人様も余り話した事がないのかな。
話すの下手…ちょっと私に似ているのかな。
だけど…可愛い、そんな訳無い。
だけど、嘘でもお世辞でも嬉しいな。
「…自分でも解っていますから、気を使わなくても平気ですよ…私気持ち悪いですよね…奴隷としても価値が無いから…真面に扱ってもらっていません…実の母親からも気持ち悪いって…頭すら撫でて貰ったことも無いんですよ…村でも良く石をぶつけられていましたから…別にお金に困って無いのに、私の事を気持ち悪いって..見たくないって…ううっ実の母親に売られたんですよ…正確にはお金払えないという女衒に「無料で良いから」って」
話していて悲しくなる。
だけど、私が可愛いいなんてどう考えても可笑しいし、あり得ないよ。
「あのさぁ、転生者って知っている?」
「転生者ですか…別の世界の記憶があるっていう、あれですか?」
「そう、それ、僕は転生者だ」
『転生者』優れた能力を持っているという人達だよね。
それが何で私なんか買ったのかな。
「そうですか…転生者なんですね…」
どうしたのかな、考えているみたいだけど。
「転生者には前の世界の記憶があるのは知っているよね?」
「はい…」
「その前の世界なら、君は間違いなく美少女、だから僕には、綺麗な女性にしか見えない」
そんな世界があるなんて信じられない。
「私が美少女で可愛い…嘘でもそんな事言ってくれたのはご主人様だけです」
だけど、こんな事言ってくれる人は今迄居なかった。
「何と言おうと僕には君が美少女にしか見えない。僕の名前は聖夜、宜しく」
「嘘でも嬉しいです…私の名前はイクミと申します。宜しくお願い致します..」
私の目を見つめて話してくれる人。
生まれて初めて可愛いって言ってくれた人。
今迄会った中で…こんな優しくしてくれた人なんていない。
少なくとも今迄より幸せに…なれるよね。
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