第24話 勇者とハイエルフ

「行ってきます」


「いってらっしゃい」


「行ってらっしゃい!お兄ちゃん」


「行ってらっしゃいませですわ」


朝からテンションが上がる。


絶対に出会えない筈の幻のように綺麗な彼女達。


ボカロが本当に居てくれたら…


アニメのヒロインが、ライトノベルのヒロインが本当に居てくれたら…


それが叶ってしまった。


しかも、三人も一緒にだテンションが上がらないわけが無い。


「それじゃ、今日は私が見ておきますから安心して下さいね」


「宜しくお願い致します」


今挨拶したのはオークマンの妻の1人のテルミさん。


相変わらず、オークマンはうちを気にしてこうして妻を遊びに来させてくれている。


テルミさんは熟女って感じのなかなかセクシーな女性だ。


オークマンは、恐らく僕に4人目を買わせようとしているのが何となく解かる。


最も、オークマンが親友な時点で『奴隷商通い』や『奴隷市場』に足を運ぶ事になる。


それがオークマンの趣味であり日常だからだ。


まぁ、家に遊びに来る嫁が、敢えてうちに居ないタイプなのは…そういう事だろう。


◆◆◆


折角テンションが上がったのに駄々下がりだよ…


「おい、聖夜顔を貸せ!」


なんでまだ此奴が此処にいるのか、さっぱりわからない。


「僕はこれから仕事なんだよ。何かようか?ガイア」


「ようがあるから声かけたんだろうがっ」


大通りで揉めていても仕方が無い…僕はガイアについて行く事にした。


直ぐに傍の酒場に入った。


「お前、何してくれたんだ…パーティが解散しちまったじゃねーか」


三人は、話を聞いてくれたんだな。


これで一安心だ。


あとは無事に村に帰ってくれれば、皆の親に顔向けできる。


僕は、彼女達の経緯についてガイアに話した。


「まぁ、こんな感じかな」


「ふざけんじゃねーよ。それであいつ等、解散なんて言い出したのか?どうしてくれるんだよ!」


「どうするも何も、解散したなら旅は終わり…それだけじゃないか。その後は自分がやりたい事をすれば良い。それだけだろうが…」


「俺は勇者以外の人生は考えてねー。なんでお前は邪魔すんだよ。追放した嫌がらせか!」


「だったら、なんでお前は僕に構うんだよ、追放したんだから放って置けば良かっただろう。こちらからは話し掛けてもいないんだよ。散々遠回しに『戻らない』そう言っただろう。しつこいからこうなったんだ。僕のせいじゃないだろう」


「確かにそうだ…だがよーっこんなのはあんまりだ! 頼むよ、お前が戻れば三人も戻ってくる、この通りだ」


ガイアが頭を下げた。


「なぁガイア、僕は旅には出ないよ。普通の生活が楽しいんだ。元から僕は魔王討伐の栄光なんて望んでいない。ただ村の皆から頼まれたのと、幼馴染が心配だからついてきただけだ」


「そんな事言うなよ…なぁ、三人ともお前にやるからさぁ、それで良いだろう、なぁもう追放なんてしねーし、副リーダーの地位も保証するかよ。それに魔王を討伐出来たら、お前にもちゃんと貴族籍を貰ってやるからよ」


ガイアってこんな奴だったのか?


三人をやる…ふざけんな!


皆、自分の意思でお前を選んだんだぞ…


貴族? あんな面倒臭い者になんでならなくちゃいけないんだよ。


確かに特権階級だけど…義務も山ほどあるんだよ…


もういいや…ガイアのお母さんやお父さんに頼まれたから…これはしたく無かった。


「ガイア、ちょっと付き合え」


「ああ」



◆◆◆


「聖夜、此処は何処だ?」


「奴隷商だが?」


「これはこれは聖夜様、いらっしゃいませ」


「今日は見学だけど良いでしょうか?」


「オークマン様と仲が良い貴方様なら構いません」


「聖夜…これは一体」


僕は知っている。


幼馴染だし、前に僕を追い出した通り、ガイアの中で一番を占めているのは『女』だ。


「なぁ、ガイアもう魔王討伐なんて止めても良いんじゃないかな? ガイアの名前は既に有名だし…その気になれば女性だって思いのままだ…ほらっ」


「此処が奴隷商…折角来たんだ…おい、これって」


「綺麗でしょう? ハイエルフですよ、古くはエルフの王族の血を引くものですよ」


「こっちは?」


「ダークエルフですね、褐色の肌が綺麗でしょう」


まるで子供のように高級奴隷を見ながらはしゃいでいる。


まぁ、勇者の場合は色々と汚点を残せないから娼館にも行けないし…幼馴染とも妊娠を恐れて最後の一線を越えていない。


そんな童貞に…まぁ僕も言えないが、良い女が金で買えるんだ。


そういう事実を教えてやれば…もしかしたらもう旅を辞めるんじゃないかな。


勇者は沢山いるから辞めてもお金と地位が無くなるだけでジョブが無くなる訳じゃない。


何と言えばよいのかな…辞めたら国の勇者じゃなくて野良勇者になるそんな感じだ。


そう言えばランゼ達はどうしたんだ…あのまま野良になってくれれば、まぁひとまず安心だな…もしかしたら今頃村に帰っているんじゃないかな?


「凄いな~こんな綺麗な女性が居るのか?」


「まぁね(イクミ達程じゃ無いが)凄い美人も多いでしょう?」


「まぁな、だけど高くて買えねーよ」


「いや、勇者辞めたら、ガイアなら余裕だよ…毎日ワイバーンかオーガを狩っていれば2か月位で買えそうだよ」


「マジか…実は、あの子がどうしても欲しいんだ…」


どれだ…やっぱりそうか、ハイエルフだ。


「奴隷商の主人に聞いてみたらどうかな?」


「あの、この子…」


「凄いでしょう? ハイエルフなんて30年いや50年に一度出るかどうかの品でして、まるで生きている美術品見たいでしょう」


「まぁな…それで幾らなんだ」


「金貨2万枚です」


え~と嘘、20億円じゃ無いか。


ワイバーン1羽500万だとして400羽、1日1羽計算だとざっと1年ちょっとで払える。


だけど、これは利子も入って無いし、365日1日の休みも無く働いた計算だ。


前世と違って利子は膨大だし、幾ら勇者とはいえ休みは必要だろう。


そう考えたら、上手く行って倍の2年下手したら4倍の4年は掛かるかも知れない。


だが、前世で考えて見たら20億円を手にする可能性があるだけでも...うんとんでもない話だ。



「聖夜、金貸してくれないか?」


マジか…マジで言っているのか?


「いや、流石に持ってない…」


「そうか…分割とかできないかな…」


なんで奴隷商の方を見ているんだ…まさか本当に買うのか?


それは身の破滅だよ…いやよそう…もしイクミが同じような金額で売られていたらきっと僕だって同じ事を考える。


『止めろ』そう言う資格は僕には無い。


「本来はこんな高額な貸し付けはしないのですが…相手が勇者様ですから『血証紋』つきで仕事以外でこの街から出ないという条件であれば分割で構いませんよ」


血証紋、約束を違えたら血を噴き出して死ぬという商業ギルドの最高の呪術契約。


「それで良い、買わせて貰えないか」


「解りました、お譲り致します」


てっきり僕は金貨100枚~500枚位のエルフとかダークエルフ位かと思ったのに…ガイアが此処まで思い切った事をするとは流石に思わなかった。



※金額を考えたら...かなり矛盾が出ていたので3回ほど訂正しました。







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