第25話 楽しい日常
「おはようございますですわ、聖夜様」
「おはよう、シシリア」
「はい」
「そう言えば、2人は」
「まだ寝ていますわ」
相変わらず二人はまだ寝ている。
朝はかなり弱いみたいだ。
「それじゃ紅茶でも入れるか? シシリアも飲むよな?」
「ええっ頂きますわ」
しかし、見れば見る程綺麗な貴族令嬢にしか見えないな。
髪を綺麗に洗い上げただけで、上流階級の人間にしか見えない。
そんな彼女と二人が起きるまで過ごすお茶の時間は凄く楽しい。
まるで自分が貴族にでもなったみたいだ。
「紅茶と昨日焼いたクッキーで良いかな」
「はい、ですわ」
紅茶を飲む姿もやはり絵になる。
まるで、少女漫画のワンシーンを見ているみたいだ。
「どうかされましたの? そんなじーっと見つめられまして」
「いや、流石貴族、令嬢絵になるな、そう思って」
「そんな嫌ですわ、元貴族と言っても田舎の弱小貴族ですわ、実質裕福な平民となんだ変わりませんわ…それに私は部屋から出たことが余りありませんから、何も知らないと同じですわ」
確かに、シシリアは知らない事が多い。
だが、本を沢山読んでいたせいか、詳しい事も多い。
イクミやマトイに色々教えてくれていて助かる。
「あの…聖夜様、私本当に何もしないで宜しいんですの?」
「イクミやマトイちゃんも同じだけど…ただ一緒に暮らしてくれるだけで凄く毎日が楽しいんだ」
「それなら良いんですが…今迄と違って私は毎日が凄く楽しいのですわ、殿方が凄く怖かったのですが…不思議と聖夜様にはそういう気が起きませんわ。それに奴隷なのに前の生活以上に贅沢させて貰えて、本当に夢のようですわ」
結構、奴隷商の話では酷い環境だと聞いていたから…うん良かった。
「そう言ってくれると助かるよ。それじゃ僕はこれから朝食の準備に入るから」
「あの…手伝わなくて宜しいのですか?」
「大丈夫だから気にしないで…読書でもしててよ」
「はい、有難うございますですわ」
やはり、僕もかなり現金なのかも知れない。
幼馴染の時と違って、お世話するのが凄く楽しい。
多分、料理の腕もかなり上がった気がするし…どんな調味料が美味しいとか工夫もしている。
こんな事は前はしていなかったな。
今日の料理は、鶏肉のソテーに目玉焼きに野菜のスープに白パンだ。
案外、この白パンがこの世界では高かったりする。
まぁワイバーンが狩れる時点で経済は余り気にしなくて良い。
普通の冒険者が狩れない物が狩れる、その時点でお金は幾らでも稼げる。
ガイアが普通では余程の金持ちじゃなくては買えないハイエルフが分割とはいえ狩れるように。
「さぁ、出来た、シシリア、2人を起こしてきてくれ」
「畏まりましたわ」
寝ぼけ眼で二人が起きてきた。
「おはようございます…ご主人様」
「おはよう、お兄ちゃん」
三人と食べる朝ごはん、今日も楽しい一日の始まりだ。
◆◆◆
買われた身分で言う事ではないと思いますが…
私は本当に奴隷なのでしょうか…
可笑しいのですわ。
幾ら世間知らずでも奴隷がどんな者か知っていますわ。
人間としての最底辺。
ボロを着て、これ以上ない位惨めな存在の筈ですわ。
それが…本当に可笑しいのですわ…
買ってくれたご主人様は…凄く綺麗な方で聖夜様です。
少し地味ですが、整ったマスクにすらっとした体形。
誰もが憧れる容姿を持っていますわ。
奴隷なんて買わなくても、絶対に女なんかに不自由しませんわ。
まるで、物語の王子様や騎士にしか見えませんわ。
街で噂を聞いたら…本物でしたわ。
『貴公子 聖夜』
元勇者パーティに所属し…今ではS級冒険者。
そしてその稼いだお金の一部を貧しい者を救う為に使っているそうですわ。
そんな方に…買われただけで、私は凄く幸せなのですが…
どう考えても『恋人』のように扱われている様な気がして仕方ありませんわ。
綺麗な殿方に蕩ける位優しくされてときめかない訳がありませんわ。
本当に現金な者ですわね…ガマガエルや私を馬鹿にするような目で見る男のせいで男性不審になりましたが…聖夜様相手だと全然気になりませんわ…それ所か望むなら何でもしてあげたくなりますわね、それが夜伽であってもですわ。
いや、寧ろ…これは言えませんわね。
「常識を教えてあげて欲しい」
「常識を教えるのですわね」
「そうなんだ、男として嬉しいんだけど、朝起きると、ベッドに裸で寝て居たりと色々あるから教えてあげて欲しい。頼むよ」
「解りましたわ」
えーと…今の何処が可笑しいのでしょうか? 解りませんわ。
私達は奴隷ですし、望まれれば伽をするのも当たり前の事ですわ。
ましてここ迄、好かれているのでしたら、お礼として自分から求めるのもありだと思うのですわ。
ましては相手は、あの綺麗な聖夜様です…嫌々でなく喜んですると思うのですわ。
もしかして、朝が問題なのですわね。
夜伽という位ですから、時間が問題なのですわね。
夜にすれば良いのでしょうか? 多分そうですわね。
間違ってない…そう思いますわ。
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