第10話 閑話 勇者達? もう遅いかも知れない
「それでガイアどうするんだ!」
「ランゼ、どうすると言われても、あの状態じゃもうどうしようもないだろう」
「確かにそうだね…だけど聖夜が居ないとこのパーティはおしまいだよ!」
「うん、私もそう思う。奴隷にしたってパーティメンバーにしたって私達の旅についてこれて荷物を守りながら自分の身も守れる存在なんて他に絶対にいないから」
そんなのは解っている。
実際に経験するまで、口に出されて言われるまで気がつかなかった。
彼奴は卑怯だというが…違うだろう。
小さい頃から、全ての仲間にとって必要な人間になる。
それがどれ程大変な事なのか、聞いただけで解かった。
好きな人間の為に努力する事が卑怯なら、この世の中で卑怯じゃない人間なんて殆ど居ない。
ただ、これで本当に困った事になった。
四人で話あった結果、聖夜に変わる存在は絶対に世の中に居ない。
それがまじまじと解ってしまった。
『子供の頃から性格を知り尽くしていて、まるで尽くす事を前提に自分を磨き上げた人間』
そんな存在は他には居ない。
もし同じような人間が居たとしても聖夜と同じ様になれるには10年は掛かる。
まぁ、その前にそんな報われる可能性が少ない事に10年も使う奴は絶対に居ない。
「この際仕方ない。この中の誰かが聖夜と結婚するしかないんじゃないか? そうでもしないと無理だろう? 実際にその位聖夜は皆に尽くしてくれていたと私は思う」
「ランゼの言う通りね、誰かが聖夜と結婚するしかないんじゃないのかな?」
「漠然とした物じゃ駄目なのかも知れないね、私達は既にガイアを選んで聖夜を半ば追放しちゃったんだからさぁ。今迄聖夜がしてくれていた事を考えたら…うん誰かが結婚するしか無いのかも知れない」
確かにそうだろうな。
彼奴の欲しかったのは『感謝して愛してくれる幼馴染』なんだからな。
「確かにそうだ。だが一体誰が聖夜に行くんだ。俺から離れて彼奴を愛する事が出来るのか?」
「それなら、この際だ、私が行こう」
「ランゼ、お前それで良いのか? 俺じゃ無くて聖夜と付き合い結婚する事になるんだぞ」
「構わない…私だって未練はあるよ。だが、私のジョブは剣聖だ、私生活以外にも剣の手入れ等、聖夜に世話になってばかりだ、聖夜には、これからも世話を掛けるから私が行くのが妥当だ」
「待ちなさいランゼ、それは違うわ。攻撃手段が少なく回復魔法がメインの私こそ聖夜に迷惑を掛けているし、今後の事を考えたら聖夜の元に行くのは私だわ」
「ランゼ、マリーよく考えてよ、私は詠唱が長いから、時間稼ぎの為に聖夜に守って貰っていたわ。そしてこれからもね、だから誰か1人聖夜とと言う事なら私が適任だわ」
どうしたんだ?
何故か全員が聖夜の所に行きたがっている様に聞こえる。
断腸の想いに違いないよな…
だが、問題は他にある。
『新しい恋をして新しい道をあるきはじめた』そう言っていた。
「皆の気持は良く解った…だが、少し調べてみよう…ギルドに頼んで彼奴の今の生活を知ってから考えよう」
他の皆は感情が高ぶっていて、気がついていない。
多分、少し前なら、三人のうち誰かが聖夜と付き合う事で解決できたかも知れない。
だが、もしかしたら…もうそれですら取り返しがつかないのかも知れない。
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