第11話 閑話 勇者達? 壊れてしまった幼馴染
「あの聖夜さんの事はもう放って置いてあげてくれませんか」
ギルドに聖夜の近況を聞こうとしたら、いきなり受付嬢に言われた。
しかも、受付嬢だけでなく、冒険者たちも同じような事を周りで言い出した。
「あんたは勇者だ、俺達からしても憧れの存在だ。だが、これだけは言わして貰う。頼むから、聖夜さんに構わないでやってくれ」
「「「「「そうだ、そうだ」」」」」
「何でそうなるんだ、説明してくれないか?」
意味が解らねー
「解りました、説明致します。 まず、聖夜さんは貴方達からしたら未熟なのかも知れませんが世界有数のSランク冒険者です。今はこの街のこのギルドに所属してくれて、困っていたワイバーンを1人で狩ってくれています。冒険者ギルドもこの街の領主であるワルド伯爵も感謝している、この街には本当に必要な人間なんです」
「待ってくれ! 聖夜は1人でワイバーンを狩っているのか?」
「はい、それが何か?」
ランゼが驚いている理由は俺にも解る。
普通はワイバーンを1羽狩るのに騎士団が必要とされる。
当然我々4人なら簡単に狩れる。
だが、それは複数でという条件付きだ
ランゼがもし1人で狩るとしたら、スピードで翻弄して狩るしか無い、運が悪く攻撃を外せば反撃にあい、大怪我もしくは死ぬかも知れない。
マリ―は回復や防御専門だから1人じゃ狩れない。
ミルダの場合は魔法一発で狩れるが、詠唱中に襲われたらひとたまりもない。
俺だってランゼと同じだ。
つまり、2人いれば片方が防御して片方が攻撃すれば良いから楽勝だが、1人で狩るなら俺達でも難しい相手だ。
だが、受付嬢は『1人で狩っている』そう言っていた。
「本当の事なの?」
「ええっ、調子の悪い時で1羽、調子の良い時には5羽狩って来た事もあります。まさに聖夜様様です…しかも狩ってくる度に、聖夜様はギルドの酒場をその日1日全額奢りにしていますから、この街の冒険者は全員、聖夜様の味方です。貴族にギルドに冒険者を敵に回す覚悟はありますか?」
パーティにもう一度誘うなんて言えない雰囲気だ。
三人も明らかな敵意を感じたのか話しに加わらない。
だが…惜しい。
このまま手放したら、俺のパーティはどうなるか解らない。
「そちらの事情は解かった、俺はパーティを離れた後の彼奴の近況を取り敢えず知りたいんだ」
「あそこ迄人を追い詰めた貴方達が言いますか?」
追い詰めた?
俺達が聖夜を追い詰めた…
「そこからは、俺が話そうか? ギルドとしては話しずらいだろうからな!」
「あんたは?」
「オークマンって呼ばれている、このギルド所属の冒険者だ。ただあくまで予想も入っている。そう思ってくれ、その代わり情報料金は要らねーよ」
「「「「解かった」」」」
◆◆◆
「あんたらが、彼奴を追放したから、聖夜はもう壊れちまったんだよ」
「「「「壊れた」」」」
信じられない位大変な話だった。
聖夜をこの街で見かけた時、誰が見てもボロボロの状態だったという。
それこそ何時死んでも可笑しくない位に、涙こそ出ていないが泣いて見える程何時も落ち込んでいたそうだ。
「そんな事があったのか」
「まぁな…」
どうやら俺が思ったよりも彼奴の中では追放されたのがショックだったようだ。
だが、そこからは俺達が思っていた以上に驚かされた。
「それでよう、聖夜の奴、奴隷を買ったんだよ。多分一人が嫌だったんじゃねーかな! それで、2人で仲良く暮らしてようやく落ち着いてきたんだ…放って置いてやれよ。なぁ」
ふざけんじゃねーぞ。
そうか、そういう事か…俺達が辛い旅を続ける中彼奴は、美人の奴隷を買っていちゃついていたのか? そうかよ!
そりゃぁ…もう幼馴染なんか関係ねーわ。
金さえ積めばエルフでも何でも買えるんだからな。
チクショウーーっ。
彼奴だけ良い思い、何てさせねーよ。
心配した俺が馬鹿みたいじゃ無いか。
「聖夜…最低だな奴隷を買うなんて」
「ふんっ!幼馴染を捨てて、美人の奴隷を買った訳ね…何が恋よ馬鹿じゃないの」
「私より奴隷…多分美少女、本当に頭に来た」
「何だそれ…なぁ今の話の何処が彼奴が壊れた話なんだ! 美少女の奴隷を買って幸せに暮らしている!そういう話だろうが!そんな事なら魔王討伐優先だ。無理にでも連れていく!」
「あのよう…お前凄く勘違いしているぞ! 聖夜が買った奴隷は凄く不細工だ。最早化け物にしか見えねー位にな。このオークマンが見た奴隷の中じゃあれより醜い女を見たことがねー。奴隷商に入り浸っている俺が言うんだから間違いねーよ」
「「「「えっ」」」」
嘘だろう。
彼奴はそこそこ顔も良い。
実力だってある。
そんな奴隷を買う位なら何処かのパーティに入る筈だ。
「嘘だろう、大袈裟に言っているだけだ」
「真面目な話だぜ…だってその奴隷はたったの銀貨3枚で売られていたんだ。女なのに鉱山奴隷より安いんだ。その酷さが解かるだろう」
俺は信じられなかった。
他の三人も同じだ。
「嘘だろう」
「だったら、見て見れば良いじゃねーか? 流石に聖夜は会いたくないだろうから、そこら辺に隠れたら良いぜ…ほら二人が入って来た」
俺はオークマンという男の言う通り、置いてあった観葉植物の後ろに隠れた。
遠目で見た聖夜の連れている奴隷の姿は…まさに化け物だった。
しかも仲良さそうに笑いながら手を繋いで、それこそ宝物でも扱うかの様にに寄り添っている。
『嘘だろう』
『嘘よ』
『嘘だーーーっ』
俺は…なんて事をしてしまったんだ…
壊れている…本当に壊れている。
こんな事になるなんて…
「これで解かったろう! 聖夜は言っていたよ。何時もイクミは感謝してくれる。傍に居て喜んでくれるってな。完全に壊れているよな…あれ程のイケメンの相手があの化け物なんて…だがよう…凄く幸せそうだろう? だからもう構わないでやってくれ、頼むこの通りだ」
『あっああああーーーっ、聖夜..ごめんよーーーっ』
俺は本当に幼馴染を壊してしまった。
他の三人もその場でへたりこみ立てない。
「「「「ごめんなさい」」」」
幾ら謝っても…もう遅い。
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