第12話 オークマン

「おう、聖夜、こっち、こっち」


僕は今日、久々に1人で夜に家を出た。


久しぶりに男同士飲みに行く為だ。


相手はオークマン『奴隷ハーレム』を持つ男。


見た目はオークの様なデブで親父面。


まさか此奴が15歳だったなんて知らなかった。


だって妻を9人も持っていて子供が4人も居る奴が15歳だなんて誰も思わない。


見た目だって中年にしか見えないしな。


「何時もすまないな。気を使ってくれて」


「良いって事よ。お前のお陰でこのギルドじゃ週に2回も飲み放題、食べ放題の日があるんだからな、ちっとは返させて貰うぞ…がはははははっ」


相変わらず豪快に笑うんだな。


僕はオークマンによって助かっている。


僕にとってイクミは最高の女性だが…色々と問題があった。


その解決の方法を考えてくれたのが彼だ。


『奴隷を大切にするやつは仲間だ』を口癖にしているオークマンが、イクミが困らない様に冒険者やお店の人に話してくれた。


僕にとって美少女のイクミも他の人達からはオドオドした性格のせいか嫌われている。


そんななか、上手く取り持ってくれたのがオークマンだった。


俺が留守の間寂しくないようにオークマンの妻たちがイクミの相手をしてくれている事もある。


だからイクミは寂しい思いをしないですんでいる。


ギルドで行っている、食べ放題、飲み放題を習慣化したのもオークマンがヒントをくれた。


冒険者と仲良くなっていれば、何かあった時に助けて貰える。


その事を教えてくれたのもオークマンだ。


奴隷を買ってハーレムを築く最低野郎という奴もいるが、オークマンが買っている奴隷は人族で元が結構不幸な女性ばかりで、オークマンの妻になって幸せになっている。


僕から見れば…器の大きな男に見える。


まぁ老けて見えるから実際は年下なのに親父に思えてしまう。


「そう言って貰えると気が楽になる」


「そうか、それでどうだ。もう一人奴隷を迎える気にはまだならないのか?」


「僕はイクミが凄く好きだからな、同じ位愛せる相手は多分無理だと思う」


「そうか? まぁ暫くは良いが冒険者の妻として奴隷を扱うなら2人以上がお勧めだ。留守の間寂しい思いもさせないで済むし、防犯って意味でも安全性が高まる。更に聖夜は強いから関係ないかも知れないが、冒険者は死と隣り合わせだ、もしもの場合、1人で取り残されるより複数居た方が彼女達の為でもあるんだぜ」


オークマンにもう一人奴隷を購入する事を勧められている。


最初はどこぞの奴隷商の営業かと思ったが…『何処で』とは一切言わないから親身に思っての意見だと言う事が解かる。


言っている事は解かる。


だが、イクミ程の美少女は絶対に居ないと思う。


もし無理して買って、イクミばかり可愛がっていたらもう一人に申し訳ない。


オークマンの様に沢山の妻を持って全員同じ様に愛するなんて、恋愛初心者の僕には出来ない。


だが、言っている事はその通りだ。


確かにオークマンに頼りきりも良くないと思うようになった。


「確かに、俺が居ない間寂しい思いをさせているかもな」


「まぁ、暫くはうちの奴らに行かせても良いけどな、ただ何時もお土産を貰うのも悪いからよ…頭の片隅で考えた方が良いぞ。直ぐで無くても良いけどよ」


「ああっ考えて置くよ、まぁ僕が仕事をするのは週に二回と考えているから暇はある、そのうち奴隷商でもまた見て見るよ」


「そうか、それなら今度良かったら奴隷商を案内してやるよ…」


「買わないオークマンをつき合わせるのは悪いからいいや」


「…」


「おい、まさかまた買おうって言うのか? もう9人も妻が居るのにか」


「俺は10人の妻を娶るのが目標だからな」


そう言えば、勇者パーティに所属でもしない限り複数婚は許されていない筈だ。


もしかしてオークマンって勇者なのか?


「確か勇者パーティにでも所属して無いと複数婚は出来ないよな…まさか勇者なのか?」


「あのよ…オーガを狩れない奴が勇者の訳無いだろう? 昔勇者の手伝いをした事があり、一時的にパーティに所属した事がある。それだけだ」


「そうか」


「まぁな…流石に遅いし帰るか」


「そうだな」


まだ、時間的には早い。


だが、オークマンは妻を大切にしているから深酒は決してしない。


飲むにしてもこんな風に早目に切り上げる。


多分、僕を気にして誘ってくれたに違いない。


まぁ此処までオークマンが勧めるんだ。


少しは気にかけて見ようかな。




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