第13話 散歩

さてと、今日のご飯は、卵焼きにカリカリのベーコンとパンにサラダとスープ。


こんな物で良いだろう。


しかし、料理を作るのがこんなに楽しいなんて思わなかった。


「イクミ~ご飯が出来たよ!」


「う~ん、聖夜様、おはようございます…」


寝起き姿も凄く可愛い。


前は料理を作る事が凄く苦痛だったが今は凄く楽しい。


朝が弱いらしくイクミはぬぼ~っとしているがこれも凄く良い。


「はい、おはよう! それじゃ早速食べようか?」


「はい」


「「いただきます!」」


これは僕の前の世界で食事をする前の挨拶だ。


イクミに教えたら、普通に言ってくれる。


ガイア達は…


「なんだ、それは必要ない」


「私もそうおもうぞ」


「そうね」


「要らない」


こんな風に言ってくれなかった。


たかが挨拶、だけどただ言ってくれるだけで凄く気持ちが良い。


あれから数日、イクミは普通のフォークやナイフでたどたどしいが食事が出来ている。


「ほお~ら、口にソースがついているよ?」


「ありがとう…聖夜様」


う~ん本当に可愛いな。


あれからイクミに頼んでご主人様から名前で呼んで貰うように頼んだ。


聖夜で良い。


そう言ったんだけど、なかなか様は外して貰えない。


「そう言えば、昨日もオークマンの妻たちが来てくれたんだろう? 何していたんだ」


「はい、料理を少し教えて貰って、その後はカードゲームで遊んで貰いました」


「良かったな。今日も来てくれるから、遊んで貰うと良いよ」


「あの…今日は聖夜様はお暇じゃないんですか?」


「お昼までは暇だけど、昼過ぎからはちょっとオークマンと出掛けてくる」


「そうですか…残念です」


ちょっと悲し気な顔も凄く可愛い。


この顔をされると少し後ろ髪をひかれるが、今日は約束があるから仕方が無い。


「お昼まで時間があるから少し散歩でもするか?」


「はい」


イクミは前みたいに自分を卑下する事は随分無くなった。


だけど、その分感情の起伏が無くなってしまった気がする。


話を聞くとかなり過酷な生き方をしてきたようだから仕方ないのかも知れない。


いつか普通に笑えるようになってくれると良いな。


二人で散歩して色々見る。


お金にはかなり余裕があるから高級な店でも構わないが、イクミは市場の様な庶民的な店が好きなようだ。


露店で売っている、袋詰めのクッキーの様なお菓子を買って、色々見て回った。


「イクミ、ただ見て回るだけで良いのか? 欲しい物があるなら買ってあげるよ」


「聖夜様、私見て回れるだけで嬉しいんです。小さい頃に街に来た時には、重い荷物を持たされていて、自由に見る事も出来ませんでしたから…」


イクミは本当に見ているだけで嬉しそうだ。


偶に、物を欲しがる時もあるが、串焼きとか安い物ばかり。


買ってあげると。


「まさか、たべれる日が来るなんて思いませんでした」


と喜んで食べている。


色々と見て歩くと露店のアクセサリーショップでイクミの目が留まった。


目線の先には赤いガラス玉の嵌め込んだネックレスがあった。


「もしかしてイクミ、それ欲しいのか?」


「いえ、こんな贅沢な物、私には似合いません」


銅貨6枚。


ちゃんとした宝石商の商品じゃない。


「欲しいなら買ってあげるよ、うんイクミに似合ってそうだから」


「あの、聖夜様、本当に良いんですか?」


「ああっ、おばちゃん、そのネックレス下さい」


「あいよ、はい、銅貨5枚にサービスだ」


「はい銅貨5枚」


「まいど」


ネックレスをイクミに渡すと大切そうにしながら身に着けた。


こんなに喜ばれると買ってあげて良かったと本当に思う。


どこぞの幼馴染みたいに金貨2枚もするアクセサリーを誕生日にあげても感謝しない奴らとは大違いだ。


「聖夜様ありがとうございます。これ一生大切にしますね」


珍しく会心の笑顔だ。


こんな笑顔が見られるなら、金貨を払っても惜しくもないな。

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