第9話 決着はついたんだ...同情は要らない。
「聖夜ちょっと話があるんだ」
ギルドから出た所でガイア達に捕まった。
もう用事は無い筈だ。
「どうしたんだ、何かあったのか? てっきり旅立った後だと思ったんだけど?」
「いや、それが色々問題があってな、この通り頭を下げる。戻ってきてくれないか?」
「私も悪かった。聖夜が居ないと本当に困るのだ」
「本当に謝るわ…ごめんなさい」
「私も…ごめんなさい」
「別に謝る必要は無いよ」
別に悪い事された訳じゃない。
謝られるのは筋違いだろう。
「そうか、それじゃ戻ってくれるんだな、助かったよ」
「そうか戻ってくれるのか? 助かる」
「戻ってくれるのね、ありがとう」
「戻ってくれるんだ、ごめんね」
何を考え違いしているんだ。
僕は『怒って無い』と言っただけだよ。
戻る訳ないじゃないか。
幼馴染のハーレムパーティに何で戻る、と思っているんだろうか?
「いや怒って無いだけで、パーティには戻らない」
「ちょっと待てよ! 怒って無いなら何で戻らないんだ? 可笑しいだろうが…やっぱり怒っているんだろう?」
「そうだろう、戻ってくれるなら幾らでも謝る」
「ごめん、本当に悪かったわ」
「ごめん…本当に反省しているから」
本当に怒って等、いないんだがな。
ただ、そこに僕の居場所がない、それだけだ。
「いや、本当に怒っている訳じゃないよ、ただこのパーティが僕の居場所ではない。それだけだよ」
「お前、それどう言う事だよ」
「そうだ、此処こそが聖夜の居る場所だろうが」
「私達は小さい頃からの幼馴染でしょう? 此処こそが貴方の居場所じゃない」
「そうだよ」
僕は大きく溜息をついた。
余り話たく無かったな。
「あのさぁ、なんで僕がハーレムパーティに居ないといけないのかな? 追放されなくても自分から辞めるつもりだったんだよ」
「やっぱり恨んでいたんだな…改善はするから…」
「違うよ、まったく惨めになるから言いたく無かったんだけどな。 正々堂々どころか僕は結構卑怯な事した。それでも届かなかったからな、諦めがついたんだ」
「一体、何をしたんだ…卑怯って!てめー何かしたのか!」
「「「何をしたのよ!(んだ!)」」」
僕は今迄ため込んだ、自分の気持を吐き出した。
◆◆◆
「僕は小さい頃から努力していたんだ…僕は転生者だからおぼろげながら、前世の記憶がある。いいかい? 村社会では小さい頃から嫁とりは始まるんだ」
「何をいっているんだ」
「良いから黙って聞いてくれるか?全部正直に言うからちゃんと聞いて欲しい」
「「「「解かった(わ)(よ)」」」」
村には同世代の男2人に女3人。
他は歳が離れた人間しか居ない。
僕は悲しい事に小さい頃に親が亡くなってしまったから居ない。
普通に考えたら…女の子の方が1人余る。
だが、僕は親が居ない。
これは村では凄いハンデだ。
努力するしか無かった。
『子供の頃から頑張るしかなかった』
前世の僕は今世の僕と同じで家族に恵まれず、結婚も出来なかった。
独りボッチは嫌だった。
三人なんて言わない、1人で良いんだ。
僕を選んで欲しかった。
だから、親に好かれる事から始めた。
村のお手伝いは率先してやった。
親の残してくれた畑もしっかり耕して、村では評判の働き者として過ごした。
「それの何処が、卑怯なんだ?」
「問題無いじゃ無いか?」
「良い事じゃないか?」
「別に悪い事なんてしてないよね?」
「まだ続きがある…」
13歳になりジョブを貰う儀式の時に、僕の努力は全て意味が無くなった。
幼馴染が『勇者』『剣聖』『聖女』『賢者』になってしまった。
ただでさえイケメンのガイアは勇者になり、他の幼馴染も何故か四職だった。
正直女神を呪ったよ…なんで三人全員が四職なんだろう…1人位農民やお針子のジョブでも良いじゃ無いか。
皆して村を出ていくジョブだ…もう村で頑張って来た僕の努力は無駄だ。
あと2年で成人。15歳になったら全員旅立ってしまう。
『勇者パーティ』だから国から援助金を貰って旅立ってしまう。
なんで僕のジョブはソードマスター(侍)なんだ。と呪った。
一層の事農民とか猟師なら諦められた。
周りの人も幼馴染と別れて別の人生を勧めて来たかも知れない。
だが…頼まれてしまった。
しっかり者だったのとs、そこそこ強いジョブが災いしたんだ。
『子供達を頼むって』 皆の親からな。
その後、ガイアに誘われた。
此処で断れば良かったんだ…だが未練たらたらだったから『断れなかった』
幼馴染は3人いる。
1対1なら2人余る。
勇者やそのパーティの仲間は多数婚が許されている。
だが、3人全員がガイアを好きになるとは限らない。
ならば、頑張れば良い。
皆に好いて貰える様に頑張れば良い。
旅立ち迄の2年間、家事から野営の仕方まで冒険者の方から習い、その傍ら、それぞれのジョブの手伝いが出来るようにしっかり勉強した。
剣の手入れからハーブティの入れ方、美味しい調理の仕方から解体まで学べることは全部学んだ。
女性の下着まで洗うのは流石に少しためらったが、それすらも頑張った。
全員の好みを把握して、どうしたら困らないか、喜ぶかを死ぬ気で考えた。
強くなる為に村の冒険者に学び刀を振り続けた。
旅に出てからも
レベルが低く、ランゼが困った時には自分が怪我するのも構わず命懸けで助けた。
大怪我したり、病気になった時には徹夜で看病もした事もある。
妖蛾の毒に犯された時には下の世話までした。
マリ―が怪我をして歩けないときは1人で背負って山道を歩いた事もある。
ジャイアントビィーに体中刺されて醜くなったマリーの体の膿を針を抜きながら全部すいだした事もあった。
ミルダにだってそうだ。
レベルが低く体力が無かった時には何回も背負って歩いた。
敵の炎のブレスを浴びて顔に大やけどを負った時、マリーでさえ見放したから、自分の持ち物を売って金を作り、街中探して秘薬を手に入れ治療した。
ガイアにだってそれなりに尽くしてきたはずだ。
「…それの何処が卑怯なんだ?」
「解らないな」
「本当に解らないわ」
「解らないよ」
仕方ないな…
「要は打算なんだよ、打算、誰か1人で良いから僕を好きになって貰いたくて頑張っていただけだよ…」
「なぁ、それの何処が卑怯なんだよ」
「何処にも悪い話は無いな」
「私もそう思う」
「同じく、そう思う」
「そう言ってくれるならそれで良いや。簡単に言えば誰か1人で良いから振り向いて貰いたくて、形振り構わず頑張った末、誰1人振り向いてもらえず…その3人の好きになった相手が自分でも納得行く位の男だった。それだけだよ…もう良いかな? 全部話した。 これ以上惨めになりたくない」
「ちょっと待って私が…私が貴方を好きになれば…それで良いんじゃないか? 同じ剣士だ。私はお前なら背を任せられるんだ」
「待ちなさいよ…私だってちゃんとこれから貴方の事考えるわ」
「私だって感謝の気持ちが沢山ある、ちゃんと考えるから」
「これからも旅は長い、まだ時間はたっぷりあるんだ、もう一度一からやり直そうぜ」
「ガイアが言わせてるのか? もう決着はついたんだ。幼馴染3人はお前を選んで僕は追放された。それで良いじゃ無いか!」
「良くない…背中を預ける、そう言ったじゃないか?」
「ちゃんと考える、私もそう言ったよ」
「感謝しているんだよ…本当に、だからちゃんと聖夜の事考えるよ」
「考えた末ガイアをまた選ぶんだろう…もう良いよ、同情はまっぴらごめんだ!なぁ僕が何が欲しかったか解るか?1人で良い『ありがとう、好きだよ』そう言ってくれる幼馴染だよ。『助かったよ』そう言って笑いあえる親友だ。このパーティじゃ絶対にそれは手に入らない。
追放されて暫くは何も考えられなくて苦しかった、死にたいとさえ思ったよ! もう誰も好きにならないとさえ思った…ようやく新しく恋をして、新しい道を歩きはじめられたんだ…もう構わないでくれ!」
後ろで4人が何か言っているが…聞こえない振りしてその場を去った。
言いたい事は全部言ったが…今の僕はもう悲しくなんてない。
本当に欲しかった。
たった1人の存在はもう傍に居るのだから。
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