第32話 取り敢えず宜しく頼むのじゃ」

お前良かったのか?」


「何の事でしょうか?」


「老い先短いわらわをあんな大金で買いおって、話を聞く限りどう考えても、お前に落ち度はないだろう?」


話は聞いていたが酷い話だな。


「まぁ、良いんじゃないか? それより、もう老い先短いとか寿命とか暗い話しは止めよう。残り時間が短いと言うなら、幸せに最後まで過ごせるように僕が頑張るからさぁ…齢とって動けなくなったら僕が介護位してやるよ」


「なぬ…お前それで良いのか?」


「転生者って知っている?」


「生まれ変わりって話のあれか?」


「前世はお婆ちゃんっこだったし、此の世界では早くに親を亡くしたから、まぁ家族気分で頼むよ…えーとターニャさん」


「他人事じゃが…お前本当にお人好しか?」


「そうかな…そんな事無いと思うけど…まぁ良いや、それじゃ行こうか?」


「何処に行くというんだ」


「いや、買い物をして、その後は僕の家だけど…」


「成程」


◆◆◆


「また、増えた」


「お兄ちゃん、また買ってきたの?」


「新しい方ですの?」


「新しい仲間ですね、宜しくお願い致しますね」


ここ迄増やしてしまったせいか、動揺してないな。


「ターニャと言うんだ、宜しく頼むね。あと見た目は凄く若いけどアヤノさんよりかなり、年上だから、少し気を使って欲しい…それじゃ行こうか?」


「何処に行くというんじゃ…」


「お風呂だよ」


「なぬ?いきなり何をするんじゃ…この変態」


「はいはい、良いから脱いでね、ほら…」


僕は手際よく服を脱がした…


「やめろ…なぁやめて..幾らなんでも、こんな人前で嫌じゃ~嫌じゃ~」


「良いから大人しくして」


「わらわは嫌じゃ~、お前は最低だーーーっ」


「いい加減、諦めて…」


なんでそんな腐った魚みたいな目になるのかな。


「仕方ない…奴隷だから仕方ない…ヒクッ…仕方ない…また..解かった…抵抗しないから余り酷い事はしないで…くれ」


◆◆◆


「ふぅい~気持ち良いのぉ~」


帰って来たのは夕方だから、お風呂を沸かしてあった。


まぁ家族の事を考えて風呂付の部屋にして置いて良かったな。


「どうかな、ハーブ入りのお風呂は…エルフは香草が好きだって聞いたからな」


「確かに、わらわ達は香草は好きじゃな…だが暖かい湯に浸かるのがこんな気持ちが良いとは思わなかったぞ」


自然で暮らすエルフは水浴びしかしない。


此の世界の人間もシャワーで済ます人間が多く湯船には浸からないみたいだからな。


高級な宿屋でも無い限り湯船なんて無い。


しかし、結構垢が溜まっているんだな。


湯船には垢が浮いて、お湯は直ぐに黒くなった。


「さぁ、湯船から出て」


「解かった…今度は何をするのじゃ」


「髪を洗ってあげるから」


「髪をか…そうか任せる」


髪も酷いもんだな…一見綺麗だけど。所々絡まっているな。


あらかじめ汲んで置いたお湯とシャボンで何回も流した。


此の世界にはシャンプーが無いから仕方無いか。


「綺麗な髪をしているんだな」


「まぁわらわの自慢の髪じゃな…しかしお前は..まぁ良い」


何回も洗っていたら本当に綺麗な髪になった。


エルフの魅力はこの髪にある。


その理由が解った。


「さぁ綺麗になったな、後はそこに横になってくれ」


「仕方が無いのう、わらわはもう老人じゃ…お前等でいうババアじゃよ」


「そんな事は無いよ、まだまだ若いよ」


「人族から見たら、そうなのじゃな…まぁ良いわ、聖夜、お前は誠意を尽くしてくれた、奴隷だしこれからも死ぬまで一緒に暮らすのじゃし、受け入れてやろう…ほれ、だがエルフのそれは淡泊じゃからな、自由にして良いぞ…わらわはこう言うのが苦手じゃ」


「そう..それじゃ、そうさせて貰うよ」


なんで目を瞑るんだろう…まぁ良いや。


「痛っ..痛い..ってなんじゃそれは?」


「垢すりだけど…ターニャさん、奴隷生活が長いから、結構汚れているからこれで綺麗にするんだよ」


「なに?」


「まぁ、かなり痛いけど、その分綺麗になるから、我慢して」


イクミ達、他の奴隷は雑に扱われていたから、かなり汚かったな。


皆、こうやって綺麗にしてあげてた。


だけど…ハイエルフは高級品なのに、なんでこんな扱いだったんだろう。


まぁ良いや…


「痛いっ…痛いのじゃ…」


「我慢して欲しい、ほら…」


「痛いのじゃ…別の意味で…」


「まぁ、終わったら、ちゃんとローション塗るから、少し我慢してくれ」


「解かった、だけど、そこは良い、そんな所は自分でするのじゃ」


「駄目だよ…ほら垢がこびり付いているんだから…」


「ほら、終わったよ、湯を張り替えておいたから、もう一度浸かって、その後はローションを体に塗ったら終わりだから」


しかし、ハイエルフって凄いな。


これで…老婆だなんて…見た目で言うならイクミやシシリアと変わらないな。


やはり凄いなハイエルフ。


多分、イクミ達と出会わなければ、凄い美少女だ。


まぁ、イクミ達は僕の妄想がまるで実現した様な存在だから比べちゃ駄目だけど。


ターニャはアイドルみたいで別の可愛らしさと綺麗さがある。


「今度はそれをわらわに塗るのか?」


「そうだよ、このままじゃヒリヒリして痛いだろう?」


「まぁな、解った塗ってくれ」


「はいよ」


「そんな所まで塗る必要はないのじゃ…恥ずかしいのじゃ」


「まぁ良いから気にしないで、そのままじっとしてくれ」


「仕方ない、解ったのじゃ」


「はい、これで終わりっと…どうかな」


「綺麗にして貰ったのは良く解ったのじゃ、お前の性格もな、わらわ個人からしたら、もう齢だから、そういう行為は好まぬが、ここ迄大切にしてくれるなら、わらわもしっかりと..」


「そう言うのは良いよ…そういう事は本当に好きな者同士がする事でしょう? 僕が買ったのは時間」


「なぬ? 時間とな」


「そう、男だからそういう事に興味がないとは言わない…だけど自分を好きでもない女の子を無理やり抱こうとは思わない。そういう事は好きになってからで良いと思う」


「聖夜か…お前は他の男と違う様な気がするのう。取り敢えず宜しく頼むのじゃ」


「宜しくな、ターニャ」


気がついたら5人目か。


何だか気がついたらオークマンみたいになってきたな。


もうこれ以上増やさない様に気をつけよう。



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