第28話 アヤノ

オークマンはまだ競りに参加中だ。


恐らくはあと2時間近くは戻って来ないだろう。


前回と同じ様に市場の外のテントを貸して貰った。


奴隷紋を刻むのでなく、書き換えなので手続きは凄く簡単だった。


どう言う仕組みか解らないが、書き換えは主人が無くなっているか、主人の立ち合いが無いと出来ない。


この辺りはこの世界では奴隷=財産という事も有り徹底している。


「聖夜と申します、宜しくお願い致します」


しかし、見れば見る程、凄いな。


此の世界にカップという考えはないから大きさを例えられないが、前世の記憶にあるGカップより大きいな…ホルスタインという言葉が頭に出る位に…それでお尻も大きいのにお腹はへっこんでいる。


「あの..こんなお若い方に買って貰えるなんて思っても居ませんでしたわ、あのアヤノって申します…自分から言って置いてなんですが、その本当に…宜しかったのでしょうか? 多分、私お母さんの年齢に近いかもしれませんよ」


年齢的には30歳位なのかな。


良く販売されている、エロ漫画の熟女物のヒロインに見える。


黒髪のウェーブに整った顔立ち、切れ長の目で小顔。


それなのに..体はぽっちゃり。


自然の摂理を越えた体型、ボンキュッボンって言うが、その中のボンが桁違いに大きい。


「いくつかは敢えて聴かないけど、年齢は気にしないから大丈夫だよ。今回は年上の女性を探していたから」


「そう、それなら良かったです。私はその…容姿も凄く悪く、化け物みたいですが、本当に宜しいのでしょうか…」


いや、凄い美人というか色っぽいというか…エルフと対極の美女だ。


豊満と妖絶…ピンクのネグリジェとかベビードールを着せたら凄く似合いそうだ。


黒とか紫のスケスケの穴あき下着も似合いそうだし…清楚な恰好してもエロくしか見えない。


「うん、構わないよ、というか僕には美女にしか見えない」


「美女ですか…そんな事はお爺ちゃんでも言ってくれなかったですよ」


「お爺ちゃん?」


「はい、私の前のご主人様です」


「あの、前のご主人様って…年寄りだったんだ」


「あはははっそうですね、もう65過ぎのお爺ちゃんでしたが凄く絶倫でしたね」


当人は笑っているが..なんだか目が悲しそうだ。


これは聞いても良いのだろうか?


「あの聞いても良いかな?」


「別に構いませんよ…結構長くなりますが良いですか?」


「それじゃ、お願いするよ」


「はい」


アヤノはポツリポツリと話し始めた。


◆◆◆アヤノの話◆◆◆


私は前のご主人様に引き取られる前までは、農村で暮らしていました。


ですが、26歳の時に此処とは違う奴隷商に売られてしまったんですよ。売られた理由は簡単で、この顔と子供が出来なかったからですね。


その時はまだ、ここ迄体は酷く無かったです、少し胸が大きなという位ですね…顔は今と同じで不細工でしたけど。


農家にとって子供が作れない嫁は価値が無いそうです。確かに、跡取りがいないと本当に困ってしまう、それは解らなくもないのですが..ですが、多分、原因は私ではなく旦那の方かも知れません。


前のご主人様との間には子供が出来ましたから…すぐに堕胎させられましたけど。


20歳位迄に子供が出来ないからとまるで、馬のようにこき使われ、それでも頑張って尽くしてきた結果が奴隷される。


本当に酷い男でしたよ。


しかも、私はただの農民でスキルも「裁縫」しかないから奴隷として価値がありません。


売る位ならこき使った方が得です。


きっと醜い私に嫌気がさしたのかも知れませんね。


まぁ、泣いている私の横で、クズの旦那と義母は「少しでも高く買って貰えませんか?」と交渉していましたよ。


「人間の26歳じゃ女としてもう価値がないからな..だが性処理可能でNG無しなら銅貨3枚おまけしてやるよ」



「待って下さい! 性処理までは我慢します、だけどNGなしだけは許して下さい」


NGなしなんて本当に怖くて、怖くて仕方ありませんでした。


「煩いわね..最後位少しは役に立ちなさい」


「お前は只でさえ価値がないんだ口出しするな..」



結局、私は26歳という高齢なのに「性処理可能 NG無し」の奴隷として売られてしまいました。


しかも私を売った金額は銀貨1枚+銅貨3枚..本当のはした金です。


売られた後に解ったのですが..私には売られるのを拒む権利があったようです。


それは後で知ったんです。


『夫婦でも納得いかなければ売られる事を拒めるし、それを理由に離婚しても問題が無かった』


あははは..馬鹿ですね、村娘だったから、そんな事も知らなかったんですよ。


それからは、奴隷としての辛い日々が始まりました。


貰えるのは一日 パン1個と水。


だけど、これが前と全然変わらないのは思わず笑えてしまいましたね。


ただ、本当に辛いのは「性処理可能 NG無し」のプレートを首から下げている事です。


普通私位の年齢なら、「家事奴隷」として売られているのに...これのせいで若い子に混じって居なければなりません。


しかも…この顔ですから絶対に購入者は現れないでしょう。


他の奴隷からも蔑まれる毎日でした。


「どうせ、おばさんは不細工だから、売れないから端にいなよ..私を売り込む邪魔になるでしょう?」


「その齢で 性処理奴隷? 売れる訳ないじゃない..しかもNG無しなんて凄い変態で淫乱なんだー」


「ちがっ」


「NG無しなんだから、違う訳ないじゃない? 変態BBA」


そうですよね、確かにこの歳で性処理奴隷でNGなし..変態以外考えられないし..そういう人生送ってきた。


そう見られて当たり前ですよね。


だから、私は奴隷の中でも最底辺なんです..奴隷商人だって、高く売れる若い子には少しは優しいですが..


安くて、なかなか売れない私に優しくなんてする訳もありません。


私は多分売れない...一生此処で馬鹿にされながら生きていくんだ..


そう思いました。


だって、若い子は次々売れていくのに、私は顔合わせすらほとんどなく..


偶にあっても


「これじゃな..」


「幾ら性処理可能でも..これは無いわ」


「無料でも要らない」


そんな事しか言いません。


まぁ誰だってオバサンで不細工な奴隷を買う訳はありませんよね…


恐らくは客寄せ..性処理奴隷が銀貨3枚で買える..その看板の為に居るような物です。


大体のお客にさらっと私を見せて、他の子に連れて行くんだからまず間違いないと思います。


「奴隷以下の見世物なんだ私..うふふふっ不細工なうえに..おばさんじゃ..誰も買わないよね」



そんなある日の事、お爺さん、前のご主人様が店に入ってきました。


みすぼらしいお爺さんだし、見栄えも良くないから、女の子も静かで商人も余り乗り気じゃ無いように見えました。


「お客様、今日はどの様な奴隷をお探しでしょうか?」


その奴隷商の言葉にまえのご主人様はしっかりと言っていました。


「そうじゃな、性処理奴隷で..」



私以外の奴隷が目を伏せていました..お爺ちゃんの性処理はしたくない...そう言う事だと思います。


「歳がたっている方が良い..なかなか性処理奴隷で年配はいないと思うけど、そういうのが居るかな?」


チャンスです、こんなチャンス二度とはないでしょう。



だから、ルール違反なのは解っていましたが猛アピールしました。


「買って下さい、私で良ければ..誠心誠意尽くさせて貰います」


その結果…前のご主人様に買って貰えたんです。


体は本当に老人とは思えない位鍛えられた体をしていましたね。


奴隷としてはお肉も食べられてお風呂にも入れて、まずまず幸せでした。


ですが、他の奴隷に無くてあの店で私にあった物。


それは、「性処理奴隷 NGなし」なのです、その為、何でも応えなければいけません。


これは、どんな事でも出来るという事です。


多分、ご主人様は凄スケベなのかも知れません。


折角買ってくれたんだから…出来る限りの事はしてあげたい。


ですが…『私、何をして良いか解りません』でした。


行為自体はこの時でも解ります。


ですがもう何年もしてない状態でした。


経験のあるのは凄く淡泊な15分で終わってしまう様な物です..多分「NGなし」だから買ったのだとしたらがっかりさせてしまうそう思いました。



ですが…そんなのは気にする必要はありませんでした。


前のご主人様は、本当に獣でしたから。


夕方位から朝までひたすらやりっぱなし…それが私の毎日でした。


凄く性欲のある方で、それ以外の仕事は本当に簡単な家事しか私はしていません。


聞いた話だと、前に付き合っていた女性が2人いて、前のご主人様以上に絶倫だったそうです。


妻と愛人だったのだそうですが…訳ありの女性で、性的な事を毎日し続けなくてはならなかったそうです。


その理由は最後まで教えて貰えませんでした。


まぁ、そのせいで前のご主人様は歳をとっても絶倫のままで…その結果、私を買ってくれたのだそうです。


◆◆◆


「それじゃ、アヤノさんは前の主人を愛していたんですか」


「それはありませんね…体の関係だけでしたから、少なくとも結婚していた旦那みたいにクズじゃなかったですが…それだけですよ…貪る様な行為の後は淡泊になり、普通の使用人扱いですから…ベッドの中では好きとは言ってくれましたが、日常生活で失敗したら普通の怒られましたし…しいて言えばメイドとして、使用人として扱ってくれていた、そんな感じですね。それでも村に居た時と違って、暖かいスープやパンを貰ってましたから、奴隷としては幸せなのかも知れません」


「少しも無いの?」


「はい…子供も出来ましたがすぐに堕胎させられましたし…何より死んだ後に私には遺産を私には何一つ、残しませんでした…あくまで『性処理奴隷』と主人。それだけの関係ですよ。実際に体は信じられない位重ねましたが、外に一緒に出たこともないし、ベッド以外ではキスも手を繋ぐのも嫌がりましたから…あははっ誤解してキスをしてビンタされた事もありましたよ」


「何か、ごめん」


「良いんですよ..私顔だけじゃなく、今じゃ体も汚いでしょう? 沢山したせいか、胸も大きくなって垂れてきているし、お腹も少し弛んでいる気がします。お尻だって大きいし、太腿だって..こんな豚みたいです」


幾ら言われてもグラマラスな美女にしか見えないし…


だけど…どう接してあげたらよいか…考えないといけないな。


「少なくとも僕はアヤノさんと奴隷ではなく、家族の様になれたらと思っています」


「家族ですか…家族ってなんなのでしょうか?」


そこから始めないとならないんだな。




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