第3話 バラ色生活の始まり

イクミが傍に居る事で、全てがバラ色の様に感じる。


こんな美少女が傍に居てくれる。


こんな幸せは感じたことが無い。


幼馴染の3人も確かに美少女だがレベルが違う。


ランゼ達が、前世で言うクラスの中で可愛いレベルだとしたら、イクミは芸能人を遙かに超える。


だってコスプレじゃなくて『本物のアニメキャラクター』がそこに居る。


そうとしか思えない。


『だれかに攫われたら怖いな』


「イクミ、手を繋いで良いか」


「あの…ご主人差が穢れちゃいますよ…」


「僕の事は気にしないで良いから…僕が手を繋ぎたいんだ」


「それなら..良いです..」


そう言えば、この世界で女の子の手を握ったのは…子供の時以来だ。


凄く柔らかいな。


ハニカミながら下を向くその仕草も、本当に可愛い。


「それじゃ行こうか?」


「あの…ご主人様どちらへ行くのでしょうか?」


「洋服屋さんだよ…そのままじゃね」


この世界の洋服屋は古着屋だ。


新しい物はオーダーで何日も掛かるから、取り敢えずは古着屋に行くしかない。


「そんな、勿体ないですよ…私なんてボロキレで充分です…」


イクミの着ている服は、奴隷の中でも更に酷い物だった。


イクミ程可愛いのなら、ちゃんとした服を着せたら直ぐに売れるだろうに…


しかも、お風呂や行水もさせて貰えてなかったのか..髪にはフケが浮かび、少し臭い。


それでも、僕が『手を繋ぎたい』そう思える程可愛い。


「いや…それじゃ不味いでしょう? イクミは綺麗なんだから服も綺麗にしないと」


「あの…そんな訳無いですよ。私は醜いです。私なんか…生きている価値もないんです…


イクミは何故か自分に本当に自信がないみたいだ。


「まぁ、何処に行くのにも、それじゃ困るだろう? それに目のやり場に困るから、取り敢えず服を買おう」


「そうですよね…私の肌なんて見たくも無いですよね…」


いや、見たいけど..それは言えないな。


「まぁ良いや、取り敢えず服は買う事は決定」


「そんな、本当に勿体ないですよ..私なんか…私なんかに」


話していても仕方が無いので…僕はイクミの手を引きながら古着屋に向った。



◆◆◆


「いらっしゃい…」


「どうかしましたか?」


「いえ、何でもありません。それで今日はどう言った物をお求めですか?」


何故か一瞬顔が曇ったのは何故だ。


まぁ良いや。


「彼女に似合いそうな服を3着位、欲しい。あと下着とか靴下も3組位欲しいんだ」


「そんなご主人様..本当に、本当に勿体ないですよ…綺麗な服が汚れちゃう」


「あの…どうしますか?」


「必要な物ですから下さい」


僕はイクミの声を遮って服を頼んだ。


下着や靴下は勿論新品だ。


「こんな感じでどうだい?」


「もう少し可愛らしい感じの方が良いんだけど」


「それは、今時の子が着る様なデザインの物が欲しいって事かい?」


「そうだよ」


なんでこんな変な服を出すんだ。


どう見ても地味で年寄りが着そうな服を選んだんだろう。


「これでどうだい?」


「ありがとう」


「あの、ご主人様、本当に、私にそんな服に合いませんよ…一番安い服か奴隷用で良いんです…それでも勿体ないです…」


「これは…違うよ。僕が可愛らしい服を着た、イクミの姿を見たいんだ」


「…そうですか…なら良いですが…似合わないと思います…し、私に綺麗な服着せても…勿体ないですよ..私醜いですから」


「そんな事無いよ..それじゃおばさん、それを貰うよ」


「ありがとう」


古着屋を後にした僕は今度は宿屋に向った。


イクミは恐らくかなり前から風呂や水浴びをしていないのか結構汚い。


だから、体を洗った方が良い。


ちょっと奮発して高級宿屋に向った。


「いらっしゃい…聖夜様」


また一瞬変な顔をしたな。


そうか、確かにイクミは汚れているから、確かにこういう扱いされても仕方ないな。


さっきの古着屋も同じだ。


これでも元勇者パーティだ…文句は言って来ないだろう。気がつかない振りして押し通そう。


そうしよう。




「すみません、今日はお風呂付の部屋でお願い致します」


風呂付の部屋はこの世界では高級な部屋で、高級宿屋でも数は少なく高価だ。


「畏まりました。所で横の方は…ああっ奴隷ですね。畏まりましたご用意させて頂きます」


「ついでに食事のルームサービスを二つお願い致します」


「一つは奴隷用ですね」


「いいえ、二つとも普通の物でお願い致します」


「…畏まりました」


案内された部屋はかなり豪華な部屋だった。


「ご主人様…あの私を抱きたいのですか? 気持ち悪いから止めた方が良いですよ…化け物みたいな私何かにそんな事したら、ご主人様が汚れて穢れてしまいます。 そんな事してもらえる資格なんてない女なんです」


「イクミみたいな美少女、確かに抱きたいとは思うよ…だけどそれはイクミが僕を好きになってからで良い、今はお風呂で綺麗にしてきて」


思わず、想像しちゃったじゃないか。


「お風呂? どうすれば良いのですか?」


イクミに話を聞いたら、そもそも水浴びやお風呂に入った経験が殆ど無いみたいだ。


「本当に無いの?」


「はい、私家族といた時も豚小屋暮らしでしたし…そういった事をした記憶はないです」


仕方が無い。


僕が洗ってあげるしか無さそうだ。


「それじゃ、服を脱いでくれるかな」


「はい」


イクミは凄いな。


お風呂に入った事も無い。


そんな状態なのに色白に見える。


手足はすらっとして長く。


胸は小さいが、スレンダーな綺麗な体をしていた。


「綺麗..あっゴメン」


「目を汚してごめんなさい…気持ち悪い体ですよね。ごめんなさい」


「本当に綺麗だよ」


「本当に…嘘ですよね」


「そんな事無いよ…それじゃお風呂に入って。洗ってあげるから」


「はい」


イクミは凄く汚れていた。


髪の毛なんて10回洗ってようやく綺麗になった。


体も最初は洗った水は泥水の様な色をしていた。


何回も洗って、ようやく綺麗になってきた。


「ご主人様駄目です…そんな汚いですから…そこは特に」


「我慢して..」


体も10回洗ってようやく擦っても垢が出なくなった。


「はい、これで終わり、後は拭いてあげるからほら」


「…有難うございます」


「別に良いって…」


お風呂に入っていた時にルームサービスが届いていたみたいで、配膳迄されていた。


「それじゃ食べようか?」


「あの…私の食事が無いみたいですが…」


「目の前にちゃんとあるじゃ無いか?」


「床に無いです…パンがありません」


「違うよ、ほらそこのテーブルにあるのが君のだよ」


「それはご主人様が食べる分ですよ…」


「違うよ、ちゃんと別に盛り付けられているだろう? そっち側のはイクミの分だから全部食べて良いんだよ」


「…こんな食事初めてです。ここ暫くはカビたパンしか食べていませんでした…本当に良いんですか?」


「それは君の分だよ」


「ありがとう..ございます」


そう言いながらイクミはようやくテーブルの食事に手を伸ばした。


多分、今迄真面な食事を食べた事が無いのか…手掴みで食べている。


まぁ此処には僕とイクミしか居ないから、別に構わないな。


かなり豪快な食べ方であっと言う間に食事は無くなった。


「ごちそうさまでした」


「ごちそう…さまでした」


これからはテーブルマナーについても教えなくちゃな。


◆◆◆


「それじゃ、寝ようか」


「はい…あの私、本当に醜いし、抱いても楽しめません…それで良いなら…どうぞ..」


服を脱ぎ始めた。


手足が長く..スリムな凄く綺麗な…違う。


「違う。違うって…普通に寝るだけ…寝るだけだって」


「そうですか..そうですよね..私なんて、そういう価値もないですよね…なんで勘違い」


「違う、違う…充分魅力的だけど、そういうのは、普通まだ先..」


「そうですか…それじゃ」


イクミはその場に寝ようとし始めた。


確かに言われて見れば…奴隷は床で寝る物だけど…そんな事を僕は考えていない。


「床じゃ無くてベッドが二つあるんだから、そっち使って大丈夫だよ」


「…あの、本当に良いんですか? 私、毛布すら貰えなかった..のに」


「うん、気にしないで、そのまま使って、おやすみなさい」


「おやすみなさい…」


寝ているとイクミの泣き声が聞こえてきた。


布団を握りしめ、泣きながら寝ていた。


今迄、何があったのか解らない。


今日はこのまま様子を見た方が良いだろうな。







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