第18話 感謝と愛
あれっ、柔らかい。
手を握ったり、開いたりしているとフニフニと何とも言えない柔らかい感触がする。
左手が小さくて、右手が大きい。
「うんっ」
慌てて飛び起きると、左にイクミ、右にマトイが寝ていた。
毛布を慌ててめくると二人も裸だった。
昨日はお酒は飲んでいない。
まさか、やってしまったのか?
嫌、そんな幸せな記憶は無い。
周りをキョロキョロと見回し、ベッドも見る。
多少の汗はあるけど、そういうことした形跡は全くなかった。
『良かった』
いつかはそういう関係になるかも知れないが、それはお互いが好きになった時だ。
今はそういう時じゃない。
人の不幸につけ込むみたいで絶対に良くない。
「お~い、イクミにマトイちゃん、これは一体?」
「う~んおはようございます…ご主人様ぁ~」
「おはよう、お兄ちゃん! 嬉しい?」
相変わらず、イクミは朝が弱いな。
それと『嬉しい?』と言う事はこれはマトイのせいと言う事だ。
「え~とこれはどう言う事なのかな?」
「うん、奴隷商のおじさんが他のお姉さんに言っていたんだよ。捨てられないように気に入られたいなら、そういう方法が一番だって」
「そういう方法?」
「うん…裸になって、男の人に「好きにして良いよ」って言うとか、後は「色々させてあげたら良い」とか…えへへへっ私、毛布を被らされていたから、見て無いから良く解らないんだ、聞いていただけで、それでねお兄ちゃん…よかったら、好きにして良いよ」
なんだ、解らずに言っていたのか…
「聖夜様…私も好きにして良いんですよ」
ハァハァ、これじゃ精神が持たない。
「あの…そう言うのは、本当に好きな人とする事だよ」
「私、お兄ちゃんの事好きだよ」
「私も聖夜様の事好きですよ」
どう説明すれば良いんだ…
「そうだ、そう言うのは一番好きな人とする事なんだよ」
「マトイが一番好きなのはお兄ちゃんだから問題ないよね!」
「私も聖夜様が一番好きだから問題ありません!」
ああっ顔が緩んできちゃうな。
だけど、これは駄目だ。
2人とも意味が解らずに言っている事だ…
「そうだね、2人とも本当に有難う…嬉しいから今日の朝は気合入れて美味しい物作っちゃうから、取り敢えず服を着ようか?」
「「は(~)い」」
取り敢えず、今日は誤魔化せた。
三人目の奴隷を買うなら、こう言う常識を教えてくれる人間が良いのかも知れない。
今日も料理を作りながら、彼女達を見ている。
こんなに楽しい毎日が自分にも訪れるなんて少し前は思っても居なかった。
◆◆◆
「何だぁ~ 二人が裸で寝ていたぁ~、なら喰えば良いだけだろうが?」
「いや、そうは言うが、あれは感謝であっても恋とか愛じゃないだろう?」
どうして良いか解らず、僕はオークマンに相談した。
今現在、親友と言えるのは彼しか居ないからな…負担になるのは解っているけど。
「いや、感謝から次第に愛に変わっていくもんだぜ。なぁ、考えても見ろよ! 奴隷になるような奴は大概が不幸な女が多い。しかも買われた後もそのまま不幸な人生を送る者が殆どだ。そんな奴隷に優しくすれば、感謝されて好きになって貰える。当たり前だろう?」
解らなくはないが、本当にそれで良いのか?
「そういう物か」
「あのよ、俺が不幸な女の奴隷を買うのは愛して欲しいからだ。俺はこの通りオークマンって言われるほど醜い。真面な恋愛なんて普通じゃ絶対出来ねーからな….だからこそ、俺は出会いのきっかけが欲しくて奴隷を買うんだ。尽くして、幸せにして、好きになって貰って笑顔になる。それが好きなんだよ」
これがオークマンのポリシーなんだな。
「言っている事は解かるんだが…まぁ」
「ハァ~、まぁ聖夜がまだ感謝だと思うなら仕方ないが、腹を括った方が良いぜ。一生面倒見る気で買ったんだよな」
「勿論、そうだよ」
「それによ、俺と違って聖夜は二枚目だからな…普通にモテるんだ。別に奴隷じゃなくてもお前はモテるんだから、2人が好きになるのは当たり前だと思うぞ。まぁ自分で納得できたら、ちゃんと向き合ってやるんだな」
「そうだな…感謝が愛に変わった時か? 流石はオークマン良い事言うな…ありがとう」
「まぁ困った事があったら何時でも相談に乗るぜ…」
これで年下だなんて本当に思えないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます