第15話 レア?

「無事に二人目を迎え入れて良かったな、取り敢えずはあと1人迎え入れて後は聖夜しだいだぜ」


今一人迎え入れたばかりなのに、何故もう一人必要なんだ。


これでイクミも寂しい思いをしないで済むし必要ない様に思える。


「なんで三人目が必要なんだ…普通に考えて二人いれば寂しくないだろう?」


「まぁ、普通はそう考えるよな? 一般人は。だが奴隷の扱いの上手い人間『3人以上がベスト』そう考えるんだ」


「理由はあるのかな?」


「ああっ、2人だと喧嘩や揉めた時に結構後を引くし、最悪仲違いしたままになる事もある。だが3人以上だとそれが緩和されて揉め事が少なくなるんだ。更に言うなら奴隷が2人だと2人が大きく揉めた時は主人が仲裁に入るしかないから、片側は不満が積もる。だから3人以上が良いんだ。これは俺だけじゃなくて奴隷を扱っている者なら皆思っている事だ」


確かにガイアのパーティもそうだった。


ランゼとミルダ、マリーの仲はさほど良くなかったが3人のせいか、案外揉めなかったな。


僕とガイアの関係ももう一人誰か男が加わっていたら…追放されなかった可能性が高い。


「確かに考えてみればその通りだ、確かにそうだね」


「だろう? まぁこれは急ぐ話じゃないしゆっくりと決めれば良いと思うぜ」


「そうだな」


「それじゃ、今日はこの辺りで一旦お開きとするか? 俺はようを済ませたら妻を後で迎えに行く」


「ああっ待っているよ」


世話になりっぱなしじゃ悪いから、今度ドーナッツでも作って渡してやるか。


まぁ輪では無いけどな。


◆◆◆


しかし、3人目か…


これは凄く困ったな。


こんな奇跡は滅多に起こらないようだ。


奴隷商で聞いた話だと…


「聴きにくいのですが、こう言った感じの女の子、偶には入ったりするんですか?」


「まず無いですね…金額がつかないから値段がつかないし、それに…」


何か奴隷商の顔が暗くなった気がした。


「言いにくい話ですが、生まれた子に問題があれば基本的に産後に間引かれる筈です。普通の親ならその子の人生がどうなるか考えてそうします。 そして運よく間引かれなくても虐待で死ぬかも知れないし、村とかで自分の扱いに悲観して死ぬかもしれない。今回のケースはレアなんです」


「レア?」


「はい、産んだのが村長の娘で、産んだこの子を見て頭が狂ってしまったそうです。無理やり引き離そうとすると『マトイをかえせー』と暴れたそうで、5歳位まで蔵で親子ともども牢屋に閉じ込められていたみたいです」


「そんな事が」


「まぁ、その母親も5歳の時病で死んで、その後は隠すようにして、家畜小屋で家畜の世話をさせていたみたいですね…最も、それを他の村人に見つかったから、あわてて私を呼んだみたいです、だからこういう子はまず生きている事が奇跡なんですよ。更に言うなら、こんな商品を買ってくれる方は居ませんから、奴隷として引き取りません。今回は他の奴隷を引き取る際に、村長から無理矢理引き取りをさせられた、そんな感じです。まぁ5人の奴隷を引き取る話があった中で引き取らないなら他の奴隷も売らないと言われたので仕方なくですね」


「そうですか…」


あんなに可愛いのに…


「ええっ、だけど買って頂いて実はホッとしています」


「なぜ」


「幾ら化け物みたいだからって、パンと水だけ与えて檻に死ぬまでいれて置くなんて、少しは良心が痛むのです。お金は払いませんが感謝はしていますよ」


参ったな…これじゃ3人目なんてまず無理だ。


それに、恐らくは全部がイクミや今回の子みたいに可愛い訳じゃない。


お願いして置いて連れて来たら買えないとは言えないから…頼んでおくのも無理だ。


此処までは凄く運が良かった。


そう思った方が良いだろう。


◆◆◆


「それじゃマトイちゃん行こうか?」


先にオークマンが行ってしまったので僕はマトイの準備が整うまで待っていた。


奴隷紋を入れて貰い、手続きをした。


「お兄ちゃん、マトイはまだお兄ちゃんの名前も聞いて無いよ?」


よく考えたら、奴隷商から話を聞いたから、此方は名前を知っているけど、自己紹介もしていなかったな。


「僕の名前は聖夜、冒険者をしているよ」


「そうなんだ、お兄ちゃん、なんでそんなに急いでいるの?」


「時間が無いからね…行くよ」


「うん、解った、優しくしてね」


そうか、等身に問題があるから歩くのが苦手なのかな。


なら、仕方が無いな。


僕はマトイをお姫様抱っこした。


「おお!お兄ちゃん、そんなに待ちきれないの」


「ああっ待ちきれないよ」


「まぁ、お兄ちゃんなら良いや」


顔を真っ赤にしていた。


確かにお姫様抱っこは恥ずかしいよな。


だけど、急がないと古着屋と雑貨屋が閉まっちゃうから仕方が無い。


此の世界に24時間スーパーは存在しないし、前の感覚で18時にはしまっちゃうからな。


「そう言ってくれると助かるよ」


そのまま僕は走り出した。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る