王族とか貴族が押し寄せてくるけど、聖女と仲間と一緒に教会スローライフ!
「勇者よ、魔王も討伐できたことじゃし、娘と婚約を───」
「あ、いえ。僕は好きな人と一緒になるために牧師になるので遠慮します」
五百年も人類を悩ませてきた魔王が勇者によって討伐された。
人々は歓喜し、称え、これから平和な日常が人々を待ち受けていた。
それは勇者パーティーとて例外ではなく、魔王を討伐したあと……皆はそれぞれの人生を歩もうとしていた。
「といっても、特にこれからとか決めていな―――」
「私は自分で教会を建てて、そこで働きますっ!」
「ならば僕も教会で働こうッッッ!!!」
パーティーの仲間である聖女———ミーシャを好いている歴代最強の勇者、ユラン。
想い人が辺境の故郷で働くと聞き、王族や貴族からの誘いを断って牧師になることを決めた。
「そういえば、どうしてアリアも教会で働くの?」
「ふ、深い意味はないわ……本当だからね!? 別に、あなたと一緒にいたいわけじゃないんだから! か、勘違いしないでよね!」
「別に僕は何も言っていない」
パーティーの仲間であるアリアも一緒に働くことになり、勇者パーティーは魔王を討伐したあとも共に過ごしていくことになる。
「また皆さんと一緒にいられるなんて嬉しいですっ! というわけで、お祝いもかねてお料理を作りました!」
「凄い、今日の料理は炭のフルコースだ」
「原型を失くすほどの火力を使う時点で、料理として成立しないと思わなかったのかしら?」
ちょっぴりポンコツで、誰よりも優しくて可愛い聖女と。
冷たいようで、時折女の子らしい一面を見せる仲間。
そんな二人と、ユランは教会という一つ屋根の下で楽しく平和に暮らしていく。
それでも、かつての勇者の下に王女や貴族が押し寄せてきて―――
「まぁ、任せてよ……不幸に突き落とされそうな人を、僕は絶対に見捨てないから」
勇者であり、数少ない魔術師であり、そして誰よりも心優しい少年。
これは、そんな少年が想い人達と過ごす……魔王討伐後の話だ。