幾星霜の空を往け

　地球暦854年、世界は人の手により一度滅んだ。
　荒廃した地球と発展した技術によって地球は大気圏にコロニーを構える空人と地上での生活を続ける地上人に別れていた。
　ある日、少女リタは薄暗い路地裏で目を覚ます。目が覚めてすぐに自分の体が急に成長していること、街並みに見覚えがないことに気がついた。
　あての無い放浪の先で一つの店に辿り着く。
　そこでリタは記憶屋という店を営む青年・エンと出会った。エンが言うにはリタは記憶がなくなってしまっているのだという。
　寿命の延びた世界で記憶を抱え続けるのは人によっては苦行になる。刺激の少ない世界で見ず知らずの誰かに起こった大事件は娯楽になる。そんな需要から記憶の削除や売買が行われていた。
　その中で時折、事件に巻き込まれて、あるいは自分の意思に関係なく…続きを読む