第10話 鳥居拝という重要と隆と

「もー!隆。何処に行ってたの?先生から任されたプリントがあってあげようと思ったのに探しても居ないんだから」


「す、すまん」


「期末考査の予定表。全く」


「す、すまない」


色々あっての戻ると。

萌から色々と頬を膨らませて言われていた。

俺はペコペコと頭を下げる。

それから苦笑していた。

するとそんな萌の背後から、優柔不断な匂いがする、と鳥山の声が。


「.....怪しいんだけど何処で何をしていたの」


「い、色々あってな。図書室の片付けとか」


「.....ふーん。そう」


「そ、そうだ」


すると、図書室の片付けしていたの?、とピョンと俺の方に手が座る。

それからニコニコした鳥居が俺を見てくる。

俺はその姿に、まあな、と柔和に対応してみる。

鳥居は、うんうん、と頷く。

子供だな.....本当に。


「あ、そうそう。後ででも期末考査.....教えてくれない?私に勉強」


「.....え?お前って頭良いんじゃなかったっけ?俺頭悪いから」


「アハハ。.....それに2人きりで話したい事があるの」


「.....?」


衝撃を受ける鳥山と萌。

愕然としている。

だがケロッとしている鳥居。


いやちょ。

どうなっているんだ。

何を話すんだ?鳥居と2人きりで。


考えながら鳥居を見るが。

赤くなったりしてないので告白では無さそうだ。

と思っていると鳥居はちょいちょいと手招きをした。


「えっとね。耳を貸して」


「.....?.....こうか」


そして俺は膝を曲げて耳を貸す。

すると.....とんでもない事を鳥居は言った。

佳奈ちゃんの事に関して、と。

俺は、え、と愕然として鳥居を見る。

鳥居は少しだけ悲しげな笑みを浮かべていた。


ちょっと待って。

頭が混乱してきたのだが。

何故.....何故。


鳥居が佳奈の事を知っているのだ!?

俺は思いながら鳥居を見るが。

また後でね、とはぐらかされた。


「もしかして鳥居ちゃん.....好きなの?隆が」


「ん?そんな訳無いじゃん?アハハ。私と隆くんは友達!」


「.....」


眉を顰める。

謎が.....というか。

あまりの衝撃に心臓がバクバクいっている。

何故.....鳥居は佳奈の事を知っている。


一体何処で?

じゃあまさかだが。

幼い頃に俺は鳥居に.....?


「隆?」


「.....な、何だ」


「何?もしかして、え、エッチな事をするとか言われたの」


「んな訳あるか。全く」


とにかく今は.....、と思う。

それから期末考査の対策を整える為に次の時間を受けたが。

休み時間が待ち遠し過ぎて話にならなかった。

つまり頭に入って来ない。



「此処なら人が来ないかな」


「おい。屋上じゃないか。良いのか」


「.....うん。良いの。人が居ない場所で話したい」


俺が呼び出された場所。

それは先程、花苗と一緒に居た屋上だった。

そこで笑みを浮かべている鳥居を見る。

鳥居は髪の毛を抑えながら外の景色を見る。

所謂、女の子らしい仕草で。


「.....話を聞いても良いか」


「.....うん」


「鳥居。お前は何者だ」


「.....私は佳奈ちゃんの親戚。そして.....佳奈ちゃんに君の事を任せられた」


「な.....に.....」


君が1人で.....悲しく無い様にってサポートしてあげてって言われた。

だから私は高校もわざわざ君と同じ高校を選んだの、と言ってくる。

でも最終的にこの世界は良い世界になったけどね、とも。

そんな.....馬鹿な事が。

か、佳奈の親戚.....?


「.....だからお前は佳奈の事を知っているんだな」


「.....そして君の事も幼少期から知ってるよ」


「.....何故それを今まで言わなかったんだ」


「.....言えなかったんじゃない。言う事をするのが今じゃ無いって思ったの。だけど今は君はもう心が安定し始めているから。だから話した。時が来たから」


「鳥居.....」


「私は全てを任せられたよ。佳奈ちゃんに。.....君に渡したいものがあるの」


俺は眉を顰めながら、?、を浮かべる。

そして鳥居は1通の真っ白な.....いや。

褪せて少し黄ばみ始めている.....古い便箋?らしきものを出した。


それから俺に渡してくる。

何だこれは、と思ったのだが。

そこにはこう書かれていた。

裏面に、嵐山佳奈、と。

俺は鳥肌が立つ。


「.....まさか.....これは.....」


「佳奈ちゃんが私の助けを借りて必死に書いたの。.....君へのラブレターだって」


「.....え.....」


「.....知らなかったかもしれないけど.....佳奈ちゃんも君が好きだったんだよ。これも時が来たから渡そうと思って」


「.....」


便箋を持ったまま。

俺は膝から崩れ落ちた。

それから丸まって号泣する。

佳奈.....が遺した手紙.....なんて。

俺は思いながら腕で涙を拭って読む。


(私が大好きなたっくんへ。私は大きな病気になってこれを書いています。未来のたっくんは何をしているかな。大好きだからきっと大好きなりに悩んでいるよね。頭がいいからね。私ね。たっくんが好き。でもこの事ね。私は内緒にする。だってたっくんが恋が出来なくなるかなって思うから。未来のたっくん。悩んでいるかもだけどこころのおくすりの様にこの紙を開けてね。あえて嬉しかった。たっくんが幸せになる様に。あらしやまかな)


「.....」


「.....隆くん。私は佳奈ちゃんとその手紙を一緒に創ったの。でも私は.....君が幸せになる事を佳奈ちゃんと一緒に祈ってるよ。だから顔を上げて前を歩いてね」


「何でお前がこうやって優しいのかやっと分かったよ。俺は.....馬鹿だなぁって思う。やっぱりこういうの」


そんな身体を鳥居は抱き締めてくれた。

小さな.....本当に小さな身体だが。

その時は本当に大きく感じた。

俺は涙を流す。

鳥居も泣いていた。


「.....頭が良すぎるからこう言うのに疎いんだよな。.....ゴメンな。今まで気付かなくて」


「むしろ逆に有難かったよ。私。アハハ」


「.....佳奈らしいな。本当に」


「.....それは私も思うよ。アハハ。でも私ね。君は最初から好きだったから。それは恋愛感情とかじゃなくてね」


鳥居が何故、入学当初から別々の中学校から入って来たのにも関わらずこんな俺と仲良くしてくれたのか。

それがようやっと紐解かれた。

俺は暫く立ち上がる事が出来ず。


涙を流すしかなかった。

嬉しくて。

そして.....何もかもが辛かった。

もう佳奈はこの世に居ない。

その事を改めて実感してしまって、だ。


好きという。

愛しいという.....想いとかそういうのが。

全てが。

俺を襲ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る