第22話 幸せなんだから大丈夫

例えば。

俺の目の前に大きな壁があるとする。

その壁は.....本当に大きく。

乗り越えるのも大変だったとする。

だけど背中を押してくれたらその壁を乗り越えれる。


一言で言えばそんな感じだった。

俺は好きな人は今は作れないと思っていたのだが。

新居島という女の子は言った。

もう待てません、と。

女の子の気持ちを考えているんですか?、と。


俺はその言葉に考え尊重し意を決する事にした。

そして俺は前を真っ直ぐ見てから。

壁を少しでも登れる様にした。


そう。

俺は.....結論は出せないがある一定の考えは出したいと思ったのだ。

だから、と思う。


「それは偉いと思う」


「.....そうか」


俺は耐えられなくなって。

姉ちゃんに相談した。

そんな姉ちゃんは会社帰りだってのに優しく俺を受け止めた。


そして俺の頭を撫でてくれる。

俺はその姿に涙が浮かんだ。

情けないな、って思うが。


「成長したね。隆。本当にアンタは.....頼りになる男だ」


「.....そんな頼りになる事は無いけどな。情けないよ。今までこんなだったのが」


「.....でもね。無理はしないで良いと思うよ」


「そうかな。姉ちゃんもそう思う?」


「うん。だって急がば回れなんて言うかもだけど。.....鉄は熱いうちに打てとか。そんなのもあるけど。.....私はアンタに急いで欲しくない」


俺はその真剣な顔に見開く。

滅多に見ない姉ちゃんの真剣な顔だ。

俺はその言葉に目線だけずらす。

すると姉ちゃんはニコニコしながら、ね。隆。私の初恋の話って知ってるよね、と言ってくる。

ああ。確かオタバレしたから嫌われたってやつかな。


「私ね。オタバレしたんで嫌われたって訳じゃないの」


「.....え?じゃあどういう.....」


「.....時間が掛かって何時までも決めれない感じのもどかしさからすれ違って遠くなったの彼と」


「.....!.....そうなのか」


「.....そう。何が言いたいかって言うとね。.....焦らない事。だけど.....結論はしっかり出して急ぐ事。それが女の子を待たせない得策だから」


「.....姉ちゃん.....」


俺はニコニコしてそう言う姉ちゃんの顔を見ながら。

少しだけ納得して頷く。

それから、分かった、と強く納得して姉ちゃんを見る。

姉ちゃんは、それでヨシ、と言いながら俺の下半身をさ.....きゃー!!!!!

このクソバカ変態!!!!!



姉ちゃんが風呂に入っている間。

俺は通信をとっていた。

それは.....先ずは花苗だ。

花苗は直ぐに出た。


『もしもし?どうしたの?隆っち』


「.....ああ。いや。声が聞きたくなってな」


『そ、そうなんだ。へへへ。何だかめっちゃ嬉しいな』


「.....花苗」


『何?隆っち』


「お前は俺が好きか」


ふえ?いきなり何.....!!!!?、という感じで固まる花苗。

真っ赤に赤面している様だ。

髪の毛でも弄っている感じでもある。

俺は、もしお前が選ばれなかったら。お前はその時どうしたい、と聞く。

すると花苗は、あ、成程ね、と納得してからニコッとした様な感じで言ってくる。


『うん。その時はね。.....萌ちゃんを必ず応援する』


「.....?.....本当にそれで良いのか。お前さん」


『だってこれは決めていた事だから。萌ちゃんと秘密裏に約束していた事だから』


「.....そうなのか」


『言っちゃったけど.....でも隆っち。私達は何方か選ばれても。後悔の無い様に生きているからね。やって来ているからね。だから隆っちは何も心配しないで生きてね』


「.....お前.....」


隆っちの事は大好き。

だけどね隆っち。

選ばれるのは必ず1人なんだ。

だから.....君が本当に考えて。

よく考えて私達に結論が欲しい。

酉子の言葉は気にしないで欲しいから、と。


そう言いながら笑みを浮かべる様な電話をしてくる花苗。

俺はそんな花苗に、有難う、と告げて。

涙を拭った。

本当に直ぐ泣く野郎だな俺は。

情けなさ過ぎるって。


『ねえ。隆っち』


「.....ああ」


『私ね。隆っちに選ばれなくても。.....幸せで幸せで仕方が無いから。.....だからね?.....隆っちは全てを考えて決めてね』


約束、と言う花苗に俺は、ああ!、と強く頷いてから。

そのまま、おやすみ〜、的な感じで電話を切った。

それから俺は前を見据える。

もう大丈夫だ。


俺一人じゃない。

そう思えた.....気がした。

大切な事を決めるのも、だ。


「.....よし。頑張ろう」


思いながら。

そのまま立ち上がる。

そして俺は窓から外を見て。

伸びをした。

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