第23話 私は貴方が好き
花火大会。
一応だが俺、花苗、萌、鳥居、鳥山、新居島が行く事になった.....何コレ?ハーレムかな?、と思うが。
実際の所はハーレムじゃない。
各々それぞれの事情を抱えているので、であるが。
「.....」
夕暮れの時間帯だが。
俺は一人.....公園に居た。
明日が丁度、花火大会の当日である。
つまり.....それなりの考えを纏めないといけない。
俺はそう考えてこの場所に居た。
すると.....呼んでないのに萌がやって来た。
やっぱりこの場所だったね、と言いながら。
俺は、?!、と思いながら顔を上げて萌えを見る。
その手には缶が握られていた。
スポドレ、である。
「.....どうしたんだ。萌」
「うん。昨日忙しくて電話取れなかったから。だから隆を探したらこの場所だったって訳だよ」
「.....そうか。.....カンにしては凄いカンだな。お前らしくない。お前何時も当てが外れるから」
「あー!酷い言い方だね!殺すよ!」
「おう。.....もう慣れた。そういうのは。.....だけど有難うな萌。お前が.....そういう感じだから笑顔になれる」
俺は言いながら笑みを浮かべる。
そして萌を見た。
萌は、楽しむ為に言っているんじゃ無いんだけど.....、と困惑しながらも。
笑みを浮かべていた。
可愛らしいはにかんだ様な感じで。
「お前には何時も助けられているよな。萌。有難うな」
「私は恩返しをしているだけだよ。何も.....してない。何時も君を思ってやっているだけだから」
ニコニコしながら俺を見てくる萌。
俺はその萌にも聞いた。
前にもしたかも聞いたりしたかもしれないがこの質問を。
改めて聞いてみる。
「お前は.....例えばの話だけど俺が他の女の子と付き合い始めたらどうする?」
「.....勿論だけど歓迎するよ。だけど私は嫌だって思うかな」
「.....やはりそうなるか」
「そうだね。当たり前だよ。だって君の事は.....本当に愛しているから」
「.....恥ずかしいんだが.....」
私は.....女の子として意見は言うけど。
絶対に他の人には取られたく無いって思う。
だけどそれでも.....それでももし叶わなかったりしても心からずっと好きな人の幸せは願っているよ、と真剣な顔で向いてくる。
俺はその姿に見開く。
そして、そうか、と答える。
それから空を見上げてから、萌。有難う。お前と花苗のお陰で決意が出来たよ、と顎に手を添えて考える。
すると萌が、ねえ。ちょっとだけこっち向いてくれない?、と萌が言ってくる。
俺は?を浮かべて顔を上げたその瞬間。
萌が俺の唇に自らの唇を合わせて.....そしてキスをしてきた。
俺は!!!!?と思いながら萌の顔を見る。
一瞬だったが柔らかすぎる感触だった。
そして桃の味が.....!?
「エヘヘ。恋はやっぱり攻めてこそだよね」
「.....お、おま!?」
「.....このキスだって私は君の為にって思ってる。でも.....私はこれが全て私の為にとは思ってない。佳奈さんを忘れられないと思う。だけど少しだけでも.....私達の事を思い出してくれれば嬉しいな」
「.....!」
俺は予想外の事に赤面しながら萌を見る。
萌は俺の感じを見ながらニコッと笑む。
それから唇に手を当ててウインクをする。
またボッと赤面して俺は汗をかく。
そして俯いてしまう。
マトモに顔が見れなかった。
「これも作戦のうち.....というかきっとこれしか無いかなって思った」
「だからと言えどこんなビックリする様な事を.....」
「.....ねえ。隆」
「.....何だ」
「私はね。.....例え全て選ばれなくても.....良いって思ってる。だけど君を好きなのは知っておいてほしいかなって思う」
「.....」
俺は!と思いながら萌を見る。
萌は俺に対してニコッと笑顔を浮かべながら.....空を見上げた。
その姿を見ながら俺は唇を噛む。
そして真剣な顔で真っ直ぐ目の前を見る。
「.....萌。御免な」
「.....謝らないで。.....君が好きなのは知っているから」
「.....すまない」
「謝るなって言ったでしょ。殺すよ」
「.....無茶苦茶だな」
苦笑する俺。
だけど.....段々と考えが纏まり始めた気がする。
思いながら俺は缶を見る。
それから少しだけになった中身を転がしてみる。
チャプンと音が鳴りながらスポドレの水音が聞こえる。
「まあ花苗ちゃんも同じ様な事をするんじゃ無いかな。今この場所に居たら」
「.....マジか」
「そうだねぇ。似た者同士だし私達って。アハハ」
それから手を伸ばして伸びをする萌。
そして立ち上がった。
そうしてから手を伸ばしてくる。
帰ろう隆、と言ってきた。
「.....お前な。今の今でキスしたんだぞ俺達。恥ずかしく無いのか」
「恥ずかしいに決まっているよ」
「.....!」
じゃあ何?私が平常心を保っている様に見える?
赤くなっているしね、と言いながらそのまま俺を見てくる萌。
萌は真っ赤になっていた。
俺はボウッと火が点いた様に横を見る。
全く、と思ってしまう。
可愛いんだよお前、と、だ。
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