第9話 花苗と隆とおせちと
もう分かるかもしれないが花苗は料理が非常に得意だ。
だけどそれ以外はポンコツに近い。
反対に萌は部屋の片付けが出来るが料理とかは一切駄目だ。
ポンコツである。
正反対と言えるかもな。
それでも憎めないのはコイツらが大切な人だから、であろう。
それは、恋人、とかじゃ無い。
絆である。
考えながら俺は授業を受ける。
授業は期末考査の事ばかりだった。
俺は頭が良いからなんでも良いが.....。
そういえば俺の事はクラスメイトはほぼ知らないというか興味を持たれてない。
そんな俺もだが学年1位でも軽々取れるとは思うが。
だけど因縁をつけられても困るので控えめにしている。
そんな中で.....アイツだけは。
鳥居だけは俺をニコニコして見ながら笑顔を浮かべていた。
何というか鳥居との絆は学校では結構深いものがある。
それに鳥居を見ていると.....過去を思い出す。
佳奈の事を、だ。
俺はその事もあって鳥居と仲良く?している。
うざったいが.....でもそれでも。
相手が俺に笑顔で接してくれるから。
だから俺も手を振っている。
そして昼になった。
俺は教室でのんびりしていて、そうだ。購買に行こう、と思って立ち上がる。
鳥居とかは友人と遊んでいる。
留守になっている。
俺はその事を考えながら廊下に出ると。
「はいさーい!!!!!」
「ぐわ!ビックリした!何すんだ花苗!!!!!」
背中をいきなりぶっ叩かれた。
俺は目を丸くして背後の花苗を見る。
花苗は笑顔をニコニコ浮かべながら俺を見ている。
手に何か持っているが.....何だ?
と思っていると花苗は頬を膨らませた。
「もー。約束したよね。一緒にお昼って」
「ああそうか.....ってマジな話だったのか!?」
「当たり前だよ〜。私はマジな事が好きだからねぇ」
「そのお重みたいなのが昼飯か!?」
「そうだよぉ。めっちゃいっぱい作ったさー」
作ったさー、じゃねぇよ!
俺は愕然としながら包まれたお重を見る。
まるでおせちの様なのだが。
マジかコイツは、と思い花苗を見る。
よく見るとクマが出来ていた。
寝不足らしい。
「お前はアホか全く」
「張り切ったさー」
「.....」
俺は花苗の額をデコピンした。
あう、と声を出して><な目をする。
花苗を睨む。
それから、お前な。お前の体力が削がれる真似をするな、と言った。
花苗は、!、と俺を見てくる。
「お前の事が心配になる」
「.....え.....あ、う.....うん.....ゴメン.....」
「やり過ぎるなよ。頼むから」
「.....はいさーい.....」
そんな返事を聞きながら俺は、じゃあ何処で食う?、と見ると。
花苗は真っ赤になっていた。
そして俺を見て目に渦を巻いてワタワタする。
何だ一体、と思いながらその様子を見る。
な、何でも無いさー、と言いながら花苗は歩き出す。
「.....???」
意味不明。
俺は首を傾げるが。
花苗はさっさと言ってしまう。
その際に呟く様な声で、だから好きなんだよ、と聞こえた気がしたが。
人混みに声はかき消された。
.....気のせいか?
☆
「なんくるないさー的な感じだね」
「ああ。青空が広がっているな」
「良い感じだねぇ」
「そうだな」
屋上。
鍵を勝手に借りて秘密裏に鍵を開けた。
屋上は普段入れないのだ。
誰も居ない青い宇宙の様な空。
俺はその光景に柔和になりながら.....花苗を見る。
花苗は笑顔を浮かべていた。
エヘヘ悪者だね私達、と言いながら。
俺は、だな、と答える。
「.....でもナイスな提案だね。屋上とか」
「誰にも見られんしな。鍵を掛ければな」
「ほほーう。ワルジエ」
「ははっ。お前も共犯だけどな」
「うん。こうして一緒に居られる事だけ.....」
「ん?」
花苗はそう言うなりハッとした。
それから恥ずかしさ故か真っ赤に染まる。
俺はその姿を見ながら、?、を浮かべてみる。
すると花苗は、な、何でもない!、と言ってくる。
「何でも無いさー」
「っていうか何故に沖縄?」
「い、良いでしょ別に」
「.....?」
俺は、まあお前が使いたいなら、と答えながら苦笑する。
それから俺達はパイプの部分に腰掛けてから弁当箱.....ならぬお重を広げる。
栗きんとんとか入っているし.....。
マジなお重だ.....。
「お前本当にアホだな。朝からこんなもん作ったのかよ」
「はいさーい」
「.....そういう意味じゃないと思う」
「死ぬさーい」
「.....そういう意味でもない」
私は死ぬよ?隆っちに無視されたら、と言ってくる花苗。
俺はその姿に、あ、そう、という感じで顔を引き攣らせて返事をせざるを得ない。
それから俺達は、いただきます、と言って食べ始める。
すると栗きんとんを摘んだ花苗。
それから手で支えながら俺を見てくる。
モジモジしている。
「何やってんだ」
「は、はい。.....アーン」
「お、お前!?」
「隆っち。私はこれをしたいが為に朝から頑張ったで候」
「.....!!!!!」
く、くそう。
頑張りを人質に取られた。
絶対にこれやらないと、悲しむ、って法則だ。
俺は顔を歪めながら溜息を吐く。
それから赤くなる。
「.....分かったよ。アーン」
「ほいほーい」
「.....美味いな。栗きんとん」
「じゃあ今度は隆っちの番ね♪」
「.....お前冗談だろ?」
良いじゃん。人が見てないんだから、と笑顔を浮かべてくる花苗。
それから、それとも嫌?泣いちゃうから、と顔を向けてくる。
俺は首を振った。
箸が無いぞその為の、と言うが。
「間接キスぐらい気にしないさー」
「俺が気になるんだが!?」
八重歯を見せながら、にしし、と言ってくる花苗。
俺は顔を再度引き攣らせていたが。
諦めてそのまま小さな口に栗きんとんを食わせる。
すると小動物の様にもぐもぐと食べながら。
舌を出した。
「おいちい」
「.....お前絶対に殺す。後で」
「やってみんしゃい」
「博多弁になっても許さん!」
全くこの野郎。
俺は顔を赤くしながら文句を垂れる。
すると箸をコトッと紙皿に置きながら花苗が真剣な顔をした。
それから俺を見てくる。
「ねえ。隆っち」
「.....何だ」
「.....こ、恋はしないの」
「.....恋.....?」
「.....う、うん」
隆っちってそういうの話さないから、と指をツンツンしながら俺をチラチラと俯いて見上げる感じで見てくる花苗。
俺は少しだけ悲しげな顔をした。
それから空を見上げる。
意を決して、すまない。恋はしない、と答えた。
「.....この先.....誰に告白されてもそうだと思う」
「.....そうなんだ。.....じゃあまだワンチャンあるかな.....」
「.....?」
「.....な、何でもない。こっちの話さー」
何だコイツは。
挙動不審だな、と思う。
今日は良く目を回すな、と思いながらも。
そして花苗は、さ、さあ食べるさー!、と拳を掲げて。
それから食べ始めた。
結局だが花苗が何でそんな事を聞いたのか。
全くわからなかった。
俺は少しだけ、?、を浮かべながら。
お重を平らげた。
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