第12話 花苗ちゃんに幸せになってほしいから

勉強が終わってから。

花苗と萌と別れて家に帰る為に歩いていると自宅の前に誰か居た。

鞄を前にして立っている。

よく見ると女子生徒の様だが.....?

誰だコイツは、と思いながら見ていると。


「.....もしかして田中隆さんですか」


「.....え?あ、はい」


栗毛色の髪の毛が肩まである様な少女。

かなりの美少女である。

俺は?を浮かべながらその姿を見る。

八頭身と言わないが相当に身体とかも整っている。


「私は新居島酉子と言います。花苗ちゃんの友人です」


「.....あ.....ああそうなのか。すまない。初めまして」


「.....早速ですいません。.....もし良かったら花苗ちゃんと付き合ってくれませんか」


「.....え?.....それはどういう意味だ?」


「花苗ちゃんと付き合って下さい、と言いました」


数秒考えて俺は真っ赤になる。

それはどういう!?、と思って、だ。

すると新居島は、私は花苗ちゃんが幸せになって欲しいですから、と言葉を言いながら、その代わり萌という女は嫌いです、と切り出す。

俺は少しだけ眉を顰める。


「その言い方は無いだろ。萌も大切な俺の幼馴染なんだから」


「私は花苗ちゃんだけ幸せになればそれで良いんです」


「.....?」


「萌という女が鬱陶しいです」


「鬱陶しい.....か。お前がそう言うなら確かに鬱陶しいなのかもしれない。だけどその言い方はない。お前とは付き合えないな」


「.....」


すると涙を浮かべた新居島。

それから唇を噛んで睨んでくる。

何だよコイツ、と思いながら新居島を見る。

新居島は、貴方は花苗ちゃんを何とも思ってないんですか、と言ってくる。


俺はその言葉に、お前がどういう考えかは知らないが何でそんなに花苗に拘るんだ、と聞いてみる。

すると新居島は電柱に背中を預けながら、私は花苗ちゃんの無邪気さに救われた。だから貴方と一緒に幸せになって欲しいんです、と答える。


「.....花苗がお前を救ったのか?」


「はい。乱暴な犬から救ってくれました。.....だからそんな花苗ちゃんだから。貴方と幸せになって欲しいんです」


「すまないが俺は誰とも付き合う気はないぞ。花苗の事も萌の事も好きだが。.....だけどそんな言い方はよしてくれ」


他にどうしろと、と言ってくる新居島。

俺はその言葉に溜息を吐いてから、取り敢えずは人を恨むの止めろ、と言ってみる。

すると新居島は、貴方には分からないでしょうけど、と言ってくる。

電柱から勢いよく離れながら、だ。

そして睨んでくる。


「.....私はどれだけ花苗ちゃんが大切か知っていますか」


「.....分からない。だけど.....」


「私は花苗ちゃんと貴方が幸せになるのだけが理想です。それ以外は無いんです」


「.....」


「お願いですから」


頭を下げる新居島。

そんな言葉に俺は、駄目だ。そんな事では選べない、とキャンセルする。

すると新居島は怒り混じりに、こんなに必死にやっているのに。貴方は最低ですね、と言葉を発した。


そして踵を返してから怒り混じりにそのまま去って行く。

俺は盛大に溜息を吐きながら家のドアを開けた。

何だってんだ、と思いながら。



(ああ。そうなんだね。酉子が)


(お前の友人さんはお前が大切って言った。だけど断った。お前マジに愛されているんだな)


(まあちょっと行きすぎな面もあるけどね。でも良い子だよ。あの子)


(申し訳無いが俺はそうは思えなかった。ゴメンな。萌を悪く言ってたから)


(え!?それは許せない!)


事の全てを説明する。

すると花苗は、何それ許せない!、と怒る。

それから怒った様な.....スタンプを送ってくる。

俺は、すまんな、とだけ送った。

それから返事を待つ。


(萌ちゃんとは色々あるけど悪く言うなんて許せない。私、明日言うよ。酉子に)


(ああ。言ってくれると助かる。俺からは何も言えなかったから)


(何でそんな事言うのかな。私の幼馴染なのに)


(よく分からん。敵対している様に見える)


(多分あの事だね)


あの事って何だ、と送るが。

花苗は、教えない、と返事をくれなかった。

俺は???を浮かべていたが。

まあ嫌ならしょうがないと思いながら聞かない事にした。


(鳥居さんには話したけど恥ずかしいから駄目)


(よく分からんな。でも分かった。そう言うなら黙っておくよ)


(そうしてくれると助かるさー)


(また沖縄になっているぞ)


(ハハハ)


そんなメッセージをやり取りしていると。

あ。酉子からメッセージだ、と言葉を発した。

俺は、じゃあ一旦別行動すっか、と切り出すと。

うん。そうだね、と花苗は笑顔のスタンプと一緒に送ってきた。


(でもゴメンね。悪い事をしたね)


(気にする事はないが。でも少しだけ言っておいてくれ)


(うん。絶対に言うもん。許せない)


(喧嘩はすんなよ)


(うん)


それからそのまま花苗は、一旦切るね、と送って来た。

俺はその文章を見てからそのまま、ああ、と返事を書いてから切る。

そして天井を見上げる。


しかしまあ.....色んな奴が居るもんだな、と思いながら。

すると玄関が開く音がした。

鍵が開いて、だ。

姉ちゃんが帰って来た様だった。

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