第11話 等身大の愛情

鳥居は以前.....こんな事を話していた。

入学当時、仲良くなった時だ。


『私ね。実は大切な人を失ったんだ』


と、だ。

俺はその言葉に特に返事はしなかったが.....それでも。

今となってはそれが繋がった気がする。

リンクした。


「鳥居。俺は.....お前の事.....冷たく接していたよな。まるで馬鹿だよな。気持ちにも気が付かずに.....」


「当たり前じゃん。だって君は.....大切な人を失ったんだから。そうなるに決まっているよ」


「.....そういう所がお前だよな。本当に。優しくて」


「何それ口説いてる?」


「そんな訳あるか。全くな.....」


そんな会話をしながら屋上からの階段から降りていると。

目の前に花苗と萌が居た。

ジト目で立っている。


何してたの、的な感じで、だ。

俺達は顔を見合わせる。

その言葉に一番に答えたのが鳥居だった。


「何でもないよ〜!アハハ!何というか私の恋愛相談だよ!ね!隆くん!」


「え?あ、うん。まあそうだな.....」


俺は驚きながら鳥居を見る。

鳥居はニコニコしながら俺の手を引いてから。

そのまま階段を一気に降りて行く。

それからジャンプして地面に降り立った。


「そんないかがわしい話じゃないよ。大丈夫だよ」


「そうなの?」


「怪しい.....隆っち」


「本当に大丈夫だって」


それから俺達は階段を後にしてからそのまま教室に戻る。

そして疑り深い花苗と別れてから椅子に腰掛けた。

そうしてから次の時間の授業を受ける。


何だろうな。

心が軽くなった気がする。

まるで綿菓子の様にフワフワな。

そんな感じだ。

俺は窓から外を見た。


「.....頑張るからな。お前の命の分も」


そう呟いてから。

俺は前を見てから授業を受ける。

それから放課後になった。

俺は鳥居に宿題を教えてほしいと図書室に来た。

そして何故か萌と花苗も一緒に。



「此処はこうだ。それでこっちの数式に当て嵌めて」


「おお!成程!」


そんな感じでニコニコ笑顔の鳥居に教えていると。

目の前でジト目をしている萌と花苗の目が入る。

怪しい、、、的な感じの目をしている。

俺は苦笑しながら、大丈夫だっての、という視線を送っていると。

鳥居が笑顔で立ち上がる。


「ねえ。花苗ちゃん。萌ちゃん。ちょっと席を外して良い?一緒に来て」


「.....え?ど、どうしたの?」


「私も?」


それから図書室の奥に行ってしまった3人。

俺は、何だ?、と思いながら見送りつつ。

そのままドリンクを飲む。


そして、ふと佳奈の事を思い出した。

乳酸菌飲料が好きだったな、と。

それから先程の色褪せた手紙を見る。


「.....必死に書いてくれてな。全く。アイツも大変だったろうに」


大変というか。

体力が無かったと思う。

それなのに.....こんなにいっぱいに書いてくれて.....。


俺は涙が浮かぶ。

それから顔を上げると。

目の前に花苗が立っていた。

俺は慌てて手紙を仕舞いながら、どうした?、と聞くと。

赤くなって口をモニュモニュさせていた。


「た、隆っち。わ、私と.....」


「.....?」


「.....デートしない.....?」


「ブハァ!!!!!」


いきなり何を言い出すんだ!!!!!

俺は涙も全てが吹っ飛びながら唖然とする。

それはつまりどういう意味だ!?、と聞き返すと。

花苗はモジモジしながら俺に向いてくる。

それからまたモジモジして赤面する。


「私.....は。えっと。隆っちと一緒に居て楽しから」


「.....!?」


「だから隆っち。私はデートしたい」


「.....わ、分かったよ。デートするよ」


「.....もし良かったらだけど萌ちゃんも誘ってあげて」


え!?何でアイツまで!?

と思ったのだが。

じゃ無いと死にます、と花苗に言われたので無理矢理ながら納得して。

それから萌達が戻って来るのを待つ。

花苗を見た。


「何で俺とデートなんか。楽しくないぞ俺とデートしても」


「楽しいよ。だって隆っちだからねぇ」


「意味が全く分からない。俺と付き合っても楽しく無いだろうに」


「隆っち」


俺がそう言うなり怒った様に俺に向いてくる花苗。

それから不愉快そうな目をした。

そんな事無いもん、と言いながら。

私は少なくとも楽しいんだからそんな事を言わない、と言ってくる。

そんなもんかね。


「.....俺は哲学的な事しか言わないんだぞ。良いのか」


「それが貴方だから。私は気にしない」


「.....お前.....」


「昔の事.....覚えてる?君が私を。そして萌ちゃんを救ったの」


「.....確かに覚えているが。.....テストで悪い点を取ったから救っただけだろ。お前ら」


「それがどれだけ女の子の心に救われたか。それは分かる?」


ただそれだけで?

そんな馬鹿な、と思いながら花苗を見る。

花苗は潤んだ目をこっちに向けていた。

そして笑顔を見せる。

八重歯を見せながら、だ。


「.....馬鹿な私だけど嬉しかったんだよ?」


「.....」


俺は赤くなって顎に手を添える。

そして考えていると萌と鳥居が戻って来た。

鳥居はニコニコしながら俺を見ている。

俺は???を浮かべながら鳥居に、どないした、と聞くが。


「内緒です」


「.....お前.....」


「内緒ったら内緒。君には教える訳にはいかない。アハハ」


「内緒ってなおま.....」


鳥居は無邪気な笑顔を浮かべる。

何をコソコソしていたんだお前らは。

俺は考えながら萌を見る。

萌は真っ赤に赤面して慌てた感じで目を俺から逸らす。


何が起こっているのだこれは.....?

花苗といい。

考えたが答えが出ずだが。

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