第11話 等身大の愛情
鳥居は以前.....こんな事を話していた。
入学当時、仲良くなった時だ。
『私ね。実は大切な人を失ったんだ』
と、だ。
俺はその言葉に特に返事はしなかったが.....それでも。
今となってはそれが繋がった気がする。
リンクした。
「鳥居。俺は.....お前の事.....冷たく接していたよな。まるで馬鹿だよな。気持ちにも気が付かずに.....」
「当たり前じゃん。だって君は.....大切な人を失ったんだから。そうなるに決まっているよ」
「.....そういう所がお前だよな。本当に。優しくて」
「何それ口説いてる?」
「そんな訳あるか。全くな.....」
そんな会話をしながら屋上からの階段から降りていると。
目の前に花苗と萌が居た。
ジト目で立っている。
何してたの、的な感じで、だ。
俺達は顔を見合わせる。
その言葉に一番に答えたのが鳥居だった。
「何でもないよ〜!アハハ!何というか私の恋愛相談だよ!ね!隆くん!」
「え?あ、うん。まあそうだな.....」
俺は驚きながら鳥居を見る。
鳥居はニコニコしながら俺の手を引いてから。
そのまま階段を一気に降りて行く。
それからジャンプして地面に降り立った。
「そんないかがわしい話じゃないよ。大丈夫だよ」
「そうなの?」
「怪しい.....隆っち」
「本当に大丈夫だって」
それから俺達は階段を後にしてからそのまま教室に戻る。
そして疑り深い花苗と別れてから椅子に腰掛けた。
そうしてから次の時間の授業を受ける。
何だろうな。
心が軽くなった気がする。
まるで綿菓子の様にフワフワな。
そんな感じだ。
俺は窓から外を見た。
「.....頑張るからな。お前の命の分も」
そう呟いてから。
俺は前を見てから授業を受ける。
それから放課後になった。
俺は鳥居に宿題を教えてほしいと図書室に来た。
そして何故か萌と花苗も一緒に。
☆
「此処はこうだ。それでこっちの数式に当て嵌めて」
「おお!成程!」
そんな感じでニコニコ笑顔の鳥居に教えていると。
目の前でジト目をしている萌と花苗の目が入る。
怪しい、、、的な感じの目をしている。
俺は苦笑しながら、大丈夫だっての、という視線を送っていると。
鳥居が笑顔で立ち上がる。
「ねえ。花苗ちゃん。萌ちゃん。ちょっと席を外して良い?一緒に来て」
「.....え?ど、どうしたの?」
「私も?」
それから図書室の奥に行ってしまった3人。
俺は、何だ?、と思いながら見送りつつ。
そのままドリンクを飲む。
そして、ふと佳奈の事を思い出した。
乳酸菌飲料が好きだったな、と。
それから先程の色褪せた手紙を見る。
「.....必死に書いてくれてな。全く。アイツも大変だったろうに」
大変というか。
体力が無かったと思う。
それなのに.....こんなにいっぱいに書いてくれて.....。
俺は涙が浮かぶ。
それから顔を上げると。
目の前に花苗が立っていた。
俺は慌てて手紙を仕舞いながら、どうした?、と聞くと。
赤くなって口をモニュモニュさせていた。
「た、隆っち。わ、私と.....」
「.....?」
「.....デートしない.....?」
「ブハァ!!!!!」
いきなり何を言い出すんだ!!!!!
俺は涙も全てが吹っ飛びながら唖然とする。
それはつまりどういう意味だ!?、と聞き返すと。
花苗はモジモジしながら俺に向いてくる。
それからまたモジモジして赤面する。
「私.....は。えっと。隆っちと一緒に居て楽しから」
「.....!?」
「だから隆っち。私はデートしたい」
「.....わ、分かったよ。デートするよ」
「.....もし良かったらだけど萌ちゃんも誘ってあげて」
え!?何でアイツまで!?
と思ったのだが。
じゃ無いと死にます、と花苗に言われたので無理矢理ながら納得して。
それから萌達が戻って来るのを待つ。
花苗を見た。
「何で俺とデートなんか。楽しくないぞ俺とデートしても」
「楽しいよ。だって隆っちだからねぇ」
「意味が全く分からない。俺と付き合っても楽しく無いだろうに」
「隆っち」
俺がそう言うなり怒った様に俺に向いてくる花苗。
それから不愉快そうな目をした。
そんな事無いもん、と言いながら。
私は少なくとも楽しいんだからそんな事を言わない、と言ってくる。
そんなもんかね。
「.....俺は哲学的な事しか言わないんだぞ。良いのか」
「それが貴方だから。私は気にしない」
「.....お前.....」
「昔の事.....覚えてる?君が私を。そして萌ちゃんを救ったの」
「.....確かに覚えているが。.....テストで悪い点を取ったから救っただけだろ。お前ら」
「それがどれだけ女の子の心に救われたか。それは分かる?」
ただそれだけで?
そんな馬鹿な、と思いながら花苗を見る。
花苗は潤んだ目をこっちに向けていた。
そして笑顔を見せる。
八重歯を見せながら、だ。
「.....馬鹿な私だけど嬉しかったんだよ?」
「.....」
俺は赤くなって顎に手を添える。
そして考えていると萌と鳥居が戻って来た。
鳥居はニコニコしながら俺を見ている。
俺は???を浮かべながら鳥居に、どないした、と聞くが。
「内緒です」
「.....お前.....」
「内緒ったら内緒。君には教える訳にはいかない。アハハ」
「内緒ってなおま.....」
鳥居は無邪気な笑顔を浮かべる。
何をコソコソしていたんだお前らは。
俺は考えながら萌を見る。
萌は真っ赤に赤面して慌てた感じで目を俺から逸らす。
何が起こっているのだこれは.....?
花苗といい。
考えたが答えが出ずだが。
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