第5話 隆の思いと桃華の思い
一応、IQが180ある。
それがこの俺であるのだが。
これが嫌で仕方が無い。
昔からテレビ取材とかもやって来るぐらいだった。
天才だから嫌だ。
そんな事を言う奴はクソッタレじゃないのか?、と思う奴らも居るかもしれない。
だけど俺は天才故に全てが嫌になった。
そんな手を最初に握ったのが佳奈だ。
愛しい気持ちは.....本当に。
本当に大きかった。
だが神様はその全てを奪ってしまい。
天才も疎ましくなった。
そんな時に最初に出会ったのが萌だった。
萌は塞ぎ込んでいる俺に対して有情の愛を注いでくれたのだ。
『大丈夫?』
と、だ。
それも天才だから避けられていた時にクラスで唯一、であるが。
俺は萌に出会って。
そして花苗に出会って良かったと思っている。
確かに世間から見ればコイツらと俺の存在は天地に差があるぐらいかもしれない。
だけど俺は萌と花苗を馬鹿にする様な連中が現れた場合。
ブチ殺したくなる。
萌と花苗は必死に頑張っているから、だ。
「お待たせぇ。待ってた?お姉ちゃん」
「.....待ってないっての。全く」
「.....そっか。.....じゃあ先ずは膝枕から」
「.....待ってない人に膝枕?頭おかしい?」
「良いから。ほら。膝枕。お姉ちゃんの太ももにダイブしなさい」
滅茶苦茶だな。
何を言い出すかと思えば。
俺は考えながら風呂上がりの姉の膝枕をそのまま受ける。
そして耳の中を耳かきでコリコリし始めた。
いきなりどうしたんだ。
「.....私ね。前も言ったけどアンタが天才故の悩みは分からない。だけどね。気楽で良いんだよ。.....佳奈ちゃんも天国でアンタを見て涙を浮かべているよ?そんな気持ちだったら」
「.....天国なんて所詮は迷信だ。煙が登った大気圏だろ」
「.....ほらほら。そんな屁理屈を言わない。.....全くアンタは」
「もし天国が本当にあるぐらいなら神様だって居る筈だろ。俺は信じてない」
それはそうだね、と言いながら悲しげな顔をする姉ちゃん。
俺はその姿を見ながら、ゴメン、と切り出す。
姉ちゃんは、ううん、と言いながら写真立てを見る。
それは.....交通事故死した犬の写真。
姉ちゃんが中学生の時に拾ってきた交通事故で動物病院に運んだ犬の写真だ。
俺は幼かったのでよく分からないが姉ちゃんはかなり悲しかったらしい。
その為に写真立てが置かれている。
「.....そうだね。天国なんて無いのかもね。もしかしたらね」
「転生っていうから。.....死んだ時点で生まれ変わりだ。きっと佳奈も姉ちゃんの犬も.....もう天国を介さずに生まれ変わっているんだよ。だから神様なんて居ない。元から信じない」
「.....そうだね。.....でも隆。これだけは言わせて。きっと生まれ変わって幸せだよ。佳奈ちゃんは」
「.....」
涙が浮かんできた。
その涙を姉ちゃんは優しく拭う。
それから抱き締めてくる。
俺はその姿を見ながらグスグスと鼻を鳴らす。
弱いよな俺、と呟きながら。
「.....何処が弱いの?」
「こういうのとかさ。弱すぎるよな」
「.....アンタの強さよ。そういうの。.....弱いんじゃないよ。アンタは優しいのよ」
「.....そうかな。そんな感じはしないけどな」
「萌ちゃんと花苗ちゃんにあんな感じでも必死に接しているよね。.....それだけでもアンタは十分優しい。.....良い弟に育ったわ」
「母親みたいな感じだな」
実質母親みたいな感じじゃん、と言いながら姉ちゃんは笑みを浮かべる。
俺はその姿に、まあそうか、と答えながら耳をカリカリしてもらう。
そして俺の頬に手を添えてくる姉ちゃん。
それから、天才がどうしたのよ、と言ってくる。
「前もテレビの取材とか来たけど鬱陶しくて仕方が無かったわ。.....天才が何だっていうの?こうやって普通を望んでいる人も居るのにね。取材して何になるのか分からない」
「姉ちゃんがそういう考えだから俺はこうして居られるよ。有難うな」
「だって心底からウザいよね。ああいうの。.....全く。五年前の入学の時の無理矢理のテレビ取材は本当に腹立ったわ」
「姉ちゃん。落ち着いて。.....もう気にして無いから」
姉ちゃんは理解者だ。
俺のずっとの、だ。
姉ちゃんがこういう考えだから生きていける。
この様な姉ちゃんを持って本当に幸せだ。
そして周りもそうだが。
俺のお腹に手を当てる姉ちゃん。
「.....私はアンタが一番に幸せになる事を願っているからね」
「.....相変わらず有難うな」
「うん。.....じゃあ一緒にアニメ観ようか」
「嫌だ」
近親◯姦ものばかりじゃねぇか!!!!!
姉ちゃんと一緒にアニメなんか観れるか!!!!!
俺は考えながらそのまま逃げる。
追い掛け回されながらだが。
笑みが溢れた。
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