第20話 俺達の世界、君の世界

そもそも俺の過去なんてそんな大そうなもんじゃないとは自分で思う。

だけど一言だけは言いたい。

俺は昔から呪われている気がするのだ。

佳奈も失ったし。

そして周りも失ったから。


そんな周りがもう何も見えない時に手を差し伸べたのが萌と花苗だ。

小学校時代と中学校時代に.....。

この話はその前の話になる。


俺は幼稚園時代に本当に自慢じゃないが天才と言われた。

天才ってのは本当の天才。

例えばピアノの楽譜を読ませたら読んでそのまま弾けるレベル。


テレビでまあそれなりに知恵と実力で活躍しまくって.....教育番組のレギュラーを務めれるぐらいの天才らしかった。

IQも当時から相当高かった事もあるから。


まあでも本気の正直な話をする。

俺にとって有名とか天才とかそんなものは本気でどうでも良かった。

周りから蹴落とされる事を願っているぐらいに。

何故なら俺は頭が良い事でちやほやされてしまい。

例えば当時の社長とかカメラマンとか役員とかからちやほやされた。


周りからも絶大な信頼を得ていたが。

ここで初めて俺は、しまったな、と思った。

俺はそんなものじゃなくて平穏が欲しかったのだ。

4歳ながらそう思っていた。

ただ単に本気で分かち合える友達が.....欲しかったのだ。


芸能界に入りませんかと相当な手紙が来たが全部断った。

それも幼い頃の鳥山をダシにして俺を誘おうとした手紙まで.....あった気がする。

そんな時に出会ったのが.....佳奈だった。

佳奈は俺に真っ新な慈愛の心を注いでくれたのだ。

それも全然全てにお構い無しに、だ。


俺を天才だとかそういうのを全く気にも止めず。

こんな俺を大切な友達だと大人びた佳奈は言ってくれた。

だけど当時.....俺はマジなクソガキだった気がする。


佳奈の恋心も知らなかったから。

だから俺は.....そこら辺は馬鹿で気付いた時に死にたくなった。

真面目に全てを放棄したくなったのだ。


そもそも芸能界に入った所で全く良くないよ、と佳奈は言っていた。

実の所、佳奈も芸能界の一員だった時があったらしい。

それはどう言うものか、と言うと。

所謂ベビーファッションのモデルだ。


だから芸能界を知っているらしかったが。

1歳で引退したらしい。

で、これ以後はずっと芸能界の事を聞かされていたらしい。

6歳ながらも相当な理解力だったと思う。

今思えば、だ。


『たっくん。まあだからそもそも芸能界はクソって事だよ』


『お、おう極端だね』


『絶対に入っちゃ駄目だからね。芸能界』


『極端な時があるね』


『そんなもんだから』


佳奈は時折暴言もあった。

だけどそれは全て的を得ている気がしたのだ。

だから俺は何も言わずにずっと佳奈を見ていた日々だった。

佳奈の言葉を聞きながら成長した、と言っても過言じゃ無いかもしれない。

俺は今考えながらクスッと笑う。


『なあ。佳奈』


『何?たっくん』


『佳奈はモデルさんだったんだろ?どんな感じだったんだ?』


『うーん。つまらなかったんじゃない?』


『.....え!?』


だって有名人の人に会えるって言っても。

私は普通の事がしたかったし。

そもそも人間って有名になったから何なのだろう?、と真剣に悩んで言っていた。


俺は今思い出しながらそれも笑える事だ。

佳奈はそれから半年近く俺と一緒だったが。

半年後に持病の喘息とかが悪化した。

それによるマイコプラズマ肺炎で亡くなってしまい。


俺は心底.....全てに絶望した。

それから俺は恋をしない事にしたのだ。

この想いはいつか佳奈の様に人を殺す事になるだろう。

そういう事になるだろうと。

だから俺は恋をしない事にしたのだ。



それから小学校時代に入ってから。

俺はとある少女に出会う。

それは.....桃井萌という少女と、だ。


萌とは小学校時代の付き合いと言ったが.....まさにこの小学校だった。

だが俺は当時.....佳奈も失って荒れていた気がする。

悪ガキだった。


だけど萌はそんな俺に笑みを浮かべてからお説教してくれたのだ。

真面目に向き合ってから、だ。

大人達が諦めている中で唯一であるが。

だから俺は落ち着いていった。

萌に出会ってから。


それから中学時代に入ると。

今度は花苗という明るい少女に出会う。

俺達が会話している中に必ずやって来る少女だった。

褐色の肌をした.....笑顔が眩しい。


『ねえ!私も混ぜて!』


『も、元森さん?』


『混ぜて?アハハ』


俺はその姿に呆れを抱いていたが。

いつしか仲良くなっていった。

俺達は3人で1つになっていったのだ。

そして今に至る。

萌も花苗も俺を好きだと言っている。


「貴方にそんな過去があったなんてね」


「.....そうだな。俺も衝撃だけどな。話してみて忘れていた何かがあった」


「.....私なんかとは比べ物にならないわね」


「そんな事は無いと思う。悩んでいるのは同じぐらいだろ」


「.....それにしても御免なさいね。私で悩ませていた事もあったのね」


「大丈夫だ。気にするなよ」


そんな会話をしながら俺達はベンチに腰掛けていると。

おーい!!!!!、と声がした。

遠くを見ると花苗と萌が立っている。

俺はその姿に?を浮かべていたが。

背中を叩かれた。


「.....行ってあげなさい。私の事は気にしなくて良いから」


「.....鳥山.....」


「.....私は貴方の過去が知れた。だから応援するわ。萌を。だけど花苗さんも応援するわ。.....どっちもどっちね」


「.....そうか。.....その点はお前に任せるけどな」


「どっちも応援したくなっちゃったわ。全くね」


「.....そうか」


それから俺は駆け出して萌と花苗の元に向かう。

誰かと一緒じゃなかった?、と萌が聞いてくるがその言葉に俺は首を振る。

そして、気のせいだ、と答えた。

その言葉に花苗は、そうなの?、と言ってくる。


「ああ。自分自身だけだったぞ」


「.....そっか。なら良いや。えっとね。花火大会の事について話し忘れていた気がするから!詳しい日程は.....えっとね」


「早いわお前。まだ赤点クリアした訳じゃ無いだろ」


「いや。もう行く前提だしね」


「おい!?」


全くコイツらは。

思いながら背後の公園を見るが。

そこのベンチから鳥山は居なくなっていた。

俺は溜息を吐きながら萌と花苗を見る。

ついでに何処か行くか?、と提案してみる。


「え!?良いの!?じゃあゲーセン!」


「プリクラでも撮ってみるか」


「いや。私は太鼓がしたい!」


「あ、そうですか.....」


プリクラじゃねーのかよ。

俺は思いながら空を見上げる。

でも私はプリクラ撮りたいな、と言う萌の言葉を聞きながら。

真っ青の空に笑みを浮かべてから。

じゃあお前らの言っている事を徐々に全てすっか、と言う。


「そうだね。全部は無理だろうしね。今日は」


「だねぇ」


「.....ああ」


そして俺達は向かい始める。

ゲームセンターに、だ。

とは言っても学生が入れるのは後1時間ぐらいだわ。

急がないとな.....。

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