第26話 忘れてはならないその想い

俺は花苗が好きなんだと思った。

彼女が.....俺の悲しみの側に最も居てくれたから。

萌もそうだが。

それ以上に彼女がもっと見えていたのかもしれない。

だから俺は花苗が好きになったのかもしれないが。


「.....萌に申し訳ない気持ちになるのはどうしたものかな.....」


俺はその悩みを打ち明けながら。

そのまま昼飯に料理を作る。

とは言っても簡単なものばかりで申し訳無い。

今日は何だか.....手が動かない.....。

思いながら居ると背後から花苗が手を取った。


「もー。死ぬよ?そんな調子だったら私.....」


「こんな時にメンヘラを使うなよ.....」


「.....エヘヘ。久々にね。だって最近使ってないから.....いや」


そんなものを使う必要も無くなったのかもね、と笑顔を浮かべる花苗。

私達はそんなものを使う必要が無くなったんだと思う、とも。

俺はその言葉を聞きながら衝撃を受ける。

それから花苗を見る。

花苗はニコニコしながら俺を見ていた。


「.....でも私は1番と思わなくて良い」


「.....それはどういう意味だ?」


「私を1番に願って無理するぐらいなら.....考えなくて良いさー。私は.....常に側に居るから」


「.....お前は変わらずだな。そこら辺は。そんな事を考えて余裕ぶっていたら他の子に取られるぞ俺が」


「そんな事は無いよ。君は.....永遠に私を愛するよ。.....だって君はそういう性格だから。信じなくても分かるしね」


「.....」


俺は苦笑しながら花苗を見る。

そんな花苗は笑顔を浮かべながら横に立つ。

そしてピーラーを持つ。


それから、何をしたら良いかなぁ?、と聞いてくる。

俺はその姿に赤くなりながら顎に手を添える。

そうしてから、そうだな、と答える。


「.....お前は不器用だからな」


「そ、そんな事あるけど.....確かにそうだけど.....」


「.....でもお前に出来る事はあるぞ。今から簡単オムライス作るから。取り敢えずケチャップとか用意してほしい。どれぐらい入れるとかは指示するから」


「.....た、隆っちが言うなら!」


そして笑顔になりながら花苗は聞いた事をする。

俺はその姿を見ながら笑みを浮かべつつ。

それから作業を始めた。

そうしてからそのまま用意された品物を組み合わせて炒めていく。

花苗のお陰で.....上手く出来そうだな。


「ねえ。隆っち」


「.....何だ。花苗」


「私を好きになって良かった?」


「.....それは当たり前だと思う。俺はお前が好きだから。.....でも佳奈の事は忘れたく無いけどな」


「.....うん。それを聞いて安心した」


「.....?」


佳奈という言葉を言いて安心する花苗。

俺は?を浮かべながら、私ね。佳奈さんが一番のままが良い、と言い出す。

目を丸くしながら俺は花苗を見る。

そして苦笑した。


「隆っちの1番は佳奈さん。その次で良い。私は.....だから愛して下さい」


「.....お前な.....恥ずかしいんだが」


「エヘヘ。だから私は笑顔を浮かべれる。.....君の側に寄れる」


「.....」


そして俺の手を握ってくる花苗。

八重歯を見せながら俺の手を握ってくる。

握っているその手は小さく。

俺の手を見ながら、ゴツゴツしてて大きい。男の子の手だ、と嬉しそうにする。


「本当に.....お前可愛いな」


「.....可愛いって。そんな事無いよ。私は当たり前の事を精一杯やっているだけだから」


「.....お前は可愛い。.....やっぱり好きになると違うんだな。色々と見方が」


「.....もー。可愛い可愛いって.....は、恥ずかしい.....」


「.....」


その姿を見つつ。

そして簡易オムライスを完成させた。

それから、花苗。運んで食べよう、と言い出す。

そうして俺達は簡易オムライスを運ぶ。

机に並べた。


「ねえ。隆っち」


「.....今度はどうした?」


「.....過去は忘れないでね」


「.....?」


「.....過去を忘れないでね。.....絶対に嫌だからね。それは」


佳奈さんを忘れようとはしないでね、と言ってくる花苗。

俺はその姿を見ながら複雑な顔をする。

見抜かれている感覚だな.....。

思いつつ俺はそれなりの思いを抱えながら花苗の頭に手を乗せる。


「有難う。花苗。俺は.....忘れないから。.....な?」


「.....うん。それが.....私の最大の望みだから。お願い」


優しい素直な女の子に恵まれて。

俺は幸せなのかもしれない。

佳奈の事も忘れないで、と言われて.....俺は本当に笑みを浮かべるしかない。

ただ本当に幸せだと思う。


「.....な、何をする。花苗」


「.....」


俺の手を自分の頬に添えてから。

そのまま笑みを浮かべる花苗。

そして俺を見てくる。

うっとりしながら、だ。

こ、この野郎め.....。

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