第24話 久しぶりに美味しい料理を食べられて良かったね、ラミーニアちゃん。今後も大切な仲間が増えていくといいですね、ウルク

『宿ですが、ロワイアントナーガには獣人族を泊めてくれない宿が多々あります』


 宿街やどがいにたどり着くなり、アリーセスが声をかけてきた。


『そうなの?』


 宿屋の入り口を見ると、確かに、“獣人族お断り”と書かれた貼り紙が貼ってある。

 というか、ほとんどの宿屋の入り口に貼ってある。

 

 想像以上に獣人族は嫌われているみたいだな……


 一瞬、ラミーニアを連れて行くと決めたのは早計だったかも。

 という考えが頭をぎった。


 いやいや、一度、覚悟を決めたことを、こんなに早くくつがえすとか、人としてどうなの。


 ラミーニアをチラッと見ると、嬉しそうな表情で僕について来ている。

 

 まあ、知らない人に嫌われるくらい、別にいっか。


 アリーセスが事前に情報を教えてくれたのも、ラミーニアをこれ以上傷つけないたくないと思ったからだろうし……


『はい、その通りです』


 アリーセスが返答した。


『因みに、獣人族が泊まれる宿はあるのかな?』


『少ないですが、三つあります』


 よかった。


 あるだけでも有難い。


『じゃあ、アリーセスのお勧めの宿屋を教えてもらえる?』


『了解です』


 

 アリーセスお勧めの宿屋に着いた。

 規模は大きくなさそうなので、民宿に近い宿屋のようだ。


「こんばんは、空き部屋はありますか?」


 空き部屋があることは知っていたが、一応、形式的に確認する。


「あるよ、獣人族の子も一緒なんだね」


 割腹かっぷくのよい、人の良さそうな女将さんが出迎えてくれた。


「はい、二部屋空いていますか?」


「部屋は別々にするんだね」


 女将さんが答えると、僕のすぐ後ろにいたラミーニアが無言で首を横に振った。


「一緒の部屋がいいのかい?」


 ラミーニアが首を縦に振る。


「みたいだけど?」


「まあ、ラミーニアがその方がいいと言うのであれば、僕はどちらでも……」

 

 ラミーニアがうんうんと頷いている。


 女の子だし部屋は分けた方がいいと思ったんだけど……

 

 色々と怖い経験もしてきているみたいだし、一人で過ごすのが怖いのかもしれない。

 

 そういえば、ラミーニアって、何歳なんだろう?


 十代前半くらいに見えるが、獣人族の年齢は見た目とは違う可能性もあるので、よく分からない。

 

「決まったみたいだね」


 宿代は一泊銀貨二枚だったが、しばらく、泊めさせてほしいとお願いをしたところ、食事付きで、一ヶ月金貨五枚で滞在させてもらえることになった。



「おいしい……」


 ラミーニアがクリームスープをすすった後、そう声をもらした。


 今は女将さんが出してくれた夕食をラミーニアと一緒に食べている。

 主食はご飯でメインのおかずは鶏肉の入ったクリームスープ、それにサラダもついていた。

 

 アウトドアのような食事も美味しかったが、女将さんの手料理に温かみを感じて余計においしく感じた。


 今回は知っている料理だったけど、いつかリゼラミア特有の料理も食べてみたい。


「思わず声をもらすほどおいしいんだね」

 

「はい、とても……」


 味を噛み締めるように食べている。

 想像するにろくなものを食べさせてもらえていなかったのだろう。


 ラミーニアがおいしそうに食べている様子を見ながら、僕も嬉しい気持ちになった。


 よくよく考えると、女神であるアリーセスと精霊であるファイとミューリを除くと、ラミーニアは初めての仲間である。


 喜びを共感できる仲間が増えるというのは、いいもんだなぁ。


 僕は心の中でしみじみとそう呟いた。

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僕が勇者を続ける理由 ~見えないあなたへの想いは報われない~ 夜炎 伯空 @YaenHaku

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