第7話 急に勇者なんてお願いされても困るよね。でも、ウルク以外に私の声が聞こえる人はいないんです
『あそこに
アリーセスが、急に話しかけてきた。
食事をした後、日が沈むまで休まず歩き続けたので、確かに少し疲れてきてはいる。
『そうだね』
周辺で夕食を確保し、焚き火用の木々や布団代わりの葉っぱを集める。
この流れにもだいぶ慣れてきた。
ファイに焚き火用の木に火をつけてもらい、昼と同じようにみんなで夕食を食べた後、葉っぱの上に横になった。
『そういえば、アリーセスは、どうして僕を召喚したの?』
まだ、森の中から抜け出せてはいないが、死なずにすみそうだという安心感が芽生え始めていた。
それと同時に、何故アリーセスが自分をこの世界に召喚したのかが気になった。
『はい、詳しく話をすると長くなりますので、出来る限り簡潔にまとめたいと思いますが。この世界リゼラミアでは、二千年以上に
いきなり壮大な話が出てきた。
二千年以上の争いって……
何かとんでもないことに巻き込まれようとしているのは気のせいだろうか。
『人類は魔王軍に徐々に領土を追われ、百年前には、魔王軍の支配下にない国は一国のみとなってしまいました』
それは、かなり絶望的だ。
言い方からすると今は違うのかな?
『その時にウルクのいる世界でとある事件が起きたのですが、その際に勇者をこの世界に四十人召喚することとなりました』
一気に四十人も勇者を召喚出来たんだ……
『勇者達の活躍によって、人類は希望と領地を取り戻しつつありました。しかし、最後の勇者が寿命により、二十年前に亡くなりました。そして、勇者の意思を継いだ聖騎士団と魔王軍の戦いは、今も続いています』
『その流れから考えると、僕が新たな勇者になって、魔王を倒すってことだよね……』
『はい、その通りです』
アリーセスはいつも通りの
いやいや、二千年以上続いてきた戦いを、僕が終わらせるとか普通に考えて無理だよね。
それどころか、今はアリーセスの力を借りないと、森すら抜けることが難しいのに……
とてもじゃないけど任せてくれとは言えない。
アリーセスには申し訳ないけど。
『まだ、この世界に来たばかりなので、森を抜けてから考えても大丈夫ですか?』
今の僕には、こう答えるのが精一杯だった。
アリーセスも、僕の気持ちを察したのか、
『はい、大変な使命ですので、じっくりと考えてもらえればと思います』
とだけ話した。
僕が勇者か……
正直、自分だけの特別な使命を期待されて嬉しくないわけではない。
せめて、勇者として何か特別なスキルでもあればなぁ。
あ、でも、女神のアリーセスと対話出来ることが、この世界では特別なことなのかな?
過去に召喚された四十人の勇者達も、アリーセスと対話出来たことが大きな力となったはず。
人間に対して制限があるとはいえ、女神であるアリーセスが味方なのは、もしかすると凄いことなのかもしれないが……
まだ、その実感はなかった。
アリーセスと一緒に冒険を続けて行く中で、「勇者としての使命を
四十人の勇者達も最初から決意出来たわけではなく、きっと時間をかけて決意していったのだろう。
僕はそう思うことにした。
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