第6話 新鮮な焼き魚美味しそう……、あ、ついよだれが。精霊達とも仲良くなって何よりです

「よし、こんなもんだろう」


 食べられるキノコや山菜をまとめて岩の上に置いた。

 ざっと三、四種類ずつあるだろう。

 

 鍋を持っていれば最高だな……


 魚とキノコと山菜で美味しい鍋ができそうだ。

 まあ、こんな森の山奥でぜいたくは言ってられないか。

 焼いてもきっと十分に美味しいだろう。

 

 それじゃあ、魚とキノコに枝を刺して。

 これで準備はできた。


「ファライアさん、出て来てもらえますか?」


 名前を呼ぶと、火の塊が目の前に現れ、小人に近い姿へと変化した。


「ウルク殿。ミューリアスをミューリと呼んでいるように、私もファイとお呼び下さい」


 ファライアも、愛称で呼ばれたいのか。


 ちょっと意外だった。

 精霊って皆そんな気質なのだろうか。


 会ったばかりで馴れ馴れしいような気もするが、まあ、本人がそれを望んでいるのなら。

 

「じゃあ、今後は、ファイと呼ぶよ」


「ありがとうございます」


 精霊に性別があるのかは分からないが、ファイは男性に近いように見えた。


「ファイ、魚とキノコを火であぶってもらえるかな?」


「承知しました」


 適度な火加減で魚とキノコを炙っている。

 鍋があればなんて贅沢ぜいたくなことを言ってしまったが……


 普通に美味しそうだな。


 だけどこれを一人で全部食べる……のか?

 

「ちなみに、精霊は食事をしなくても生きていけるの?」


「はい。私達は、自然界から直接力を得ていますので、食事をしなくとも生きていけます」


 ファイは食材を炙り続けながら、そう答えた。


「食事をしなくても、ということは、逆に食事をすることも出来るのかな?」


「はい、精霊にも五感はありますので、食事を楽しむことが出来ます」


 そうなんだ。


 それなら……


「じゃあ、一緒に食事する?」


「え、よろしいのですか!?」


 ファイが驚いた表情でこちらを見た。

 それでも火加減を失敗している様子がないのは、さすがである。


「もちろん、一緒に食べた方が楽しいし」


「感謝いたします」


 嬉々ききとした表情で、ファイが深々と頭を下げる。


 大したこと言ったつもりはないのに、ここまで感謝されると何か気恥ずかしいな。


「ミューリも一緒にどうかな?」


 健気にも魚の焼き加減をじっと見ていたミューリに僕は声をかけた。


「ご迷惑でなければ……」


「迷惑なんて、皆で食べた方が美味しいよ」


「ありがとうございます」


 ミューリの表情が明るくなり、笑顔を見せた。


 何か、謙遜けんそんする精霊が多くない?

 

 アリーセス直属の精霊だからかな……


 アリーセスが召喚した人間には、忠誠を誓うようにと言われているとか?


 程なくして、美味しそうな魚やきのこの焼けた匂いが辺りを包んだ。


「焼きあがりました」


 ファイはそう言って火を一瞬で消した。


「ファイ、ありがとう」


 焼きたてのいい香りがする。


 匂いに刺激されて唾液だえきが溢れるように出てくる。

 僕はごくりと大きくその唾液を飲みこんだ。


「それじゃあ、さっそく食べようか」


「「はい」」


 まずは焼き魚を一口。


「うまい!」


 思わず声に出してしまった。


美味びみ!」

「おいしいです」


 ファイとミューリも食事を喜んでくれているようだ。


 そうして、僕はしばらく精霊達との食事を楽しんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る