第11話 初戦でいきなり酷い目に合わせてしまいました……。魔の霧の大きさは分かっても数までは分からないのが難点ですね。それはそれとして、初めての魔獣との戦闘の勝利、おめでとうございます!!

『今日中には、森を抜けられるのかな?』


 リゼラミアに召喚されて三日目。

 アリーセスが言っていたことが本当なら、今日で森を抜けられる予定だ。


『はい、今日の夕刻には抜けられる予定です』


『それなら、よかった』


 森生活に慣れてきたけど、そろそろ人にも会いたい。

 アリーセスとはいつでも話ができるが、代わりに実体がないので、誰かと一緒にいるという実感が湧きにくい。

 

 その分、精霊達がいてくれたのはありがたかった。

 因みに、今日は魔獣と遭遇する可能性が高いらしいので、常に精霊を召喚している状態にしている。



『ウルク、魔の霧が近づいて来ています!』


 昼食を終えて再び森の中を歩いていると突然、アリーセスが話しかけてきた。


『魔の霧が近づいて来ているということは、魔獣がこちらに向かって来ているってことだよね』


『はい、その通りです。精霊に魔法を使う準備をさせておいて下さい』


『了解』


「ファイ、ミューリ、魔獣が近づいているみたい。いつでも魔法が使える準備を」


「了解しました」

「分かりました」


 ファイとミューリが構え、戦闘モードに入る。


 ガサガサガサガサ!


 草むらをかき分けながら、向かって来る獣の足音。

 徐々に地下次いでくるのが分かる。


 ガサッ!


 茂みからイノシシが巨大化したような生き物が姿を現した。

 全身に黒いもやがかかっている。


 あれが魔獣なのか……

 

 ん?!


「三体!?」 


 思わず叫ぶ。


『あ、すみません、数までは分かりませんでした』


 僕の叫びにアリーセスは申し訳なさそうに答えた。

 現れた魔獣の数は三体。


 何故か、一体だと思い込んでいた。


「って、冷静に分析にしている場合じゃ……」


 ドーン!


 ザザザッ!

 

 僕が指示を出す間もなくファイの火炎魔法とミューリの氷魔法が繰り出され、あっという間に二匹の魔獣を撃破する。


 が。


「あ、死んだ」

 

 残り一体の魔獣と衝突し、大きく跳ね飛ばされた。

 さすがに死を覚悟する。


 ドカッ!


 背後にあった岩壁に衝突した。

 

「痛い!」


 と、声に出したけど。


 あれ?

  

 そんなに痛くない。


「これが神力マナか」


 神力マナがなかったら、正直即死だっただろう……


 衝突してきた魔獣が、なおも僕を狙って突進しようとしてくる。


「ファイ!」


 ファイはうなずくと、火炎魔法を放った。


 ドーーン!


 爆音と共に目前に火柱が上がり、こちらに向かってきていた魔獣が見えなくなる。

 

 どうやら残り一体の魔獣も倒せたようだ。


「「大丈夫ですか?」」


 戦いが終わると分かるやいなや、精霊達が岩の前に座り込んだままの僕のもとへ駆け寄り、心配そうに声をかけてくれた。


「ファイとミューリの神力マナのお陰で、大丈夫そうだよ」


「良かったです」


「ご無事で何より」


 二人とも安堵あんどした様子。


 僕もそろそろ立ち上がろうとした時、背中に痛みとまではいかないが違和感が走った。

 多少のダメージは残っているようだ。

 

 ミューリはそれを察したのか、


「念のため、治療しておきますね。癒しの水!」

 

 と水の塊を一つ出した。


 その水の塊が僕の全身をおおう。

 息苦しさは全くない。

 

「自己治癒能力を高める水です。しばらくつかっていると、打ち身した箇所が楽になると思います」


 背中の違和感がじんわりとやわらいでいくのが分かる。


「確かに、打ったところが楽になっていく気がするよ。ありがとう、ミューリ」


「いえいえ、これくらいのことはお安い御用です」


 とミューリは照れながら笑顔で答えた。

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