僕が勇者を続ける理由 ~見えないあなたへの想いは報われない~
第10話 誤解は解いておい方がよいかもしれませんね。火の精霊ファライアと水の精霊ミューリアスの存在は、きっとウルクにとって大きな助けとなりますよ
第10話 誤解は解いておい方がよいかもしれませんね。火の精霊ファライアと水の精霊ミューリアスの存在は、きっとウルクにとって大きな助けとなりますよ
「でも、水で戦うってイメージがあまりないんだけど、例えばどんな風に攻撃できるのかな?」
ファイの火の玉は分かりやすかったが、ミューリの水の精霊魔法はどんなものなのか。
「そうですね、例えば、こんなことも出来ますよ」
ミューリの周囲に無数の水が集まり、その水が尖った氷へと変化した。
「はっ!」
先ほどの可愛い表情からは想像出来ないほどの気合を込めたようなミューリの声に合わせて、周囲に集まった無数の氷が放たれる。
ズドドドドド!
ファイが燃やした大木の奥にある木々に、無数の氷が突き刺さった。
痛そうだな……
もし、あの氷が自分に刺さったらと、想像してしまった。
よし、ミューリは怒らせないようにしよう。
『というか、これで下位精霊って、万が一僕が勇者を決意したとしてもすぐにやられちゃう気がするんだけど』
アリーセスに、思ったことをそのままぶつける。
『それに関しては心配いりません。精霊を召喚している間は、精霊を通して自然界の
『さっきの攻撃を受けても、ほとんどダメージにならないの!?』
致命傷レベルの攻撃だったと思うのだが……
『はい。更に申し上げますと、自身が使っている精霊の属性と同じ魔法に関しては、ウルクに届く前に中和されていきますので、ダメージは更に軽減されます』
こればかりはアリーセスの言葉とはいえ、疑ってしまう。
さっきのような攻撃を受けたら、普通は大ダメージ。
確認もしていないのに、そんな冒険はできない。
『それでしたら、一度、体験してみますか?』
またしても心を読まれたようだが、だんだん気にならなくなってきていた。
アリーセスとの会話は、そもそも心でしているのだから、心を読まれたとしても大した違いはない。
『はい、お願いします』
僕は気になることがあると、確認しておかないと気が済まない性格だ。
どうなるか分からない恐怖感はあるが、しっかりと確認しておきたい。
「ミューリ、さっきの氷を尖らせずに、勢いを弱めて、僕の左手を狙って欲しいんだけど」
僕は右利きだ。
万が一中和されなかったとしても、これから森を出るのに、それほど支障のない箇所を指定した。
しかし、ミューリはやや当惑したような表情で言った。
「構いませんが、まさかウルク様に、そのような指向があるとは……」
「え?」
「あ、いえ、何でもありません」
……何か、誤解されたような気もするが。
まあ、いいか。
深くは考えないようにしよう。
「それじゃあ、よろしく頼むよ」
「では、いきます」
ミューリによって作られた氷の塊が、勢いよく、僕の左手に向かって飛んで来た。
左手にぶつかって――
「いたっ、……くない!?」
視覚的には氷の塊が僕にぶつかったように見えたが、まったく痛みはなかった。
無事に中和されたのだろう。
「これは、凄いな」
攻撃が中和されない場合の強さは、どれくらいなのか。
また、違う属性の攻撃は、どれくらい防ぐことが出来るのか。
まだまだ
「ミューリ、ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
『そういえば、精霊を呼び出している間、何か身体に
アリーセスに話を戻した。
『いえ、特に負荷はありません』
あっさりとアリーセスは答えた。
『え、そうなの?』
さっきから話に出ている、
『精霊は自然界の
『なるほど』
精霊は僕が生み出した存在ではないし、
『ただし、精霊が魔法を使う時は、精霊自身の
精霊自身にも
『因みに、常に精霊を出しておいた方がよいのではと思われるかもしれませんが、精霊使いは魔族からすると天敵のため、ウルクが狙われやすくなる恐れがあります。そのため、日常的に精霊を呼び出しておくことはお勧めしません』
アリーセスが忠告する。
攻撃から身を護ることは出来るが、敵の的にもなりやすいということか……
精霊は戦闘直前に呼び出す方がよさそうだ。
これで、この世界の魔法に関して、大まかには理解出来たのかな。
特に精霊を呼び出している間、
生身の肉体では魔族どころか、お腹を空かせた肉食動物に
実戦でどれくらいの有効性があるのかは、まだ分からないが、自身を護る手段が増えたことは確かだ。
しかし、この
そんな精霊を二人も授かっていることに、僕は
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